敢えて発言、差別そして被差別
デパートのチラシ

人種差別に関しては、余り誰も触れたがりません。
しかし、これはアメリカだけではなく、世界中どこへ行っても存在する問題で日本にもあります。
ここでは深く掘り下げた意見とかではなく、日常の生活の中で垣間みる事のできる範囲での「現象」について書いてみます。

日本と同じように、ここでもデパートとかスーパーのチラシが特に金曜日に配られます。アメリカの新聞は購読していないので、いわゆる折り込み広告というのがあるのかどうかわかりませんが、通常ビニールの袋に入って郵便受けに下げて行くか、ちょっとした広告ですと郵便で配達されます。

何を幾らで売っているとか、60%OFFのセールを開始したとかいう内容は私はあまり興味はありませんが、こちらの広告をよく見ると興味深い(?)事に気が付きます。

それは広告に人を載せている時の事です。服とかの広告はモデルがそれを着て写真に写っております。このモデルは大体が「白、黒、黄」、叉は「白、黒」の組み合わせになっております。

これは商業的な理由、例えば黒人とかの有色人種も大事なお客さんだから黒人のモデルも入れているという意味以外に、白人だけのモデルで広告を作るのはタブーという意味からもきております。

この組み合わせを間違うと、即抗議の電話なりがその会社に掛かってきて、最悪の場合は「訴訟」になりかねないとも聞いております。
私の感じでは「白、黒」の組み合わせは必ず守っておりますが、「白、黒、黄」の組み合わせはそんなに多くないような気がします。

「黄」は無視しても、あまり表だって文句を言わないからだという事を何度も聞きました。
黒人だけしか出演しないテレビ番組

ケーブルテレビのチャンネルの中にはいろいろと面白いチャンネルがあって、その一つが黒人だけしか登場しない、番組がいくつかあります。出演する俳優、女優、それにコマーシャルも黒人だけしか出てこないという徹底したものです。
大体がNYのハーレムのような感じの街が舞台になっており、言葉も私には殆ど理解できません。

このチャンネルは私のケーブルテレビの基本契約チャンネルの中に入っております。家庭ドラマ風の番組が多く、言葉もわからないので私がこのチャンネルを見る事はありません。

それと少し前ですが昨年の映画とかテレビドラマとかで、黒人が主人公叉はそれに準じる扱いを受けた番組の比率が、全米で異常に少ない、これは差別だ、おかしいという問題提起だったか、訴訟を起こしたのかどっちだったか忘れましたが話題になっておりました。

世の中のあらゆる出来事、事柄を肌の色で「差別しない、していない」という状態を先ず保っておくという事でしょうが、毎日の生活の中でちょっと気を付けるとその戦い(はっきり言って戦いに近い)があちこちにある事に驚かされます。

もちろん、ここアメリカでは日本人は100%差別される側の民族です。勘違いしてはいけません。
あるバイリンガルの奥さんのケース

いつだったが、友人の家で誰かの送別会をやった時、ある奥さんでスゴイ英語のうまい人がいて、英語がわかる故の悩みを散々に語ってくれました。
この奥さんは子供の時にイギリスかどこかで生まれたバイリンガルの方で、容姿、外観は典型的な日本人(東洋人)でした。

例えば、日本からアメリカに入国をする時に通る、あの入国審査での話。
飛行機を降りて手続きのためにずらっと並ばされて、1人ずつ審査を受けるのですが、その奥さんの番になった時、普段では絶対に口にしてはいけない言葉を隣り合わせの審査官同士が交わしたというのです。
私はどんな内容だったのですか、という事を聞こうとしましたが大体の想像がつくので止めておきました。
その言葉を聞き取り、それが何を意味するのかは外国人には絶対にわからない、と言っておりました。

その奥さんは聞けて、しかも意味も判ったので、もう腹が立つのを通り越して顔が真っ赤になり、怒りがカラダ全体に吹き上がってきたと言っておりました。

つまり、審査官は典型的な東洋人の姿をしたその奥さんを見て、アメリカ人しかわからない、スゴイ差別用語を平気で浴びせて楽しんだところが、
「この東洋女、オレの言った事判ったみたい。」
という事でプイと横を向いてはんこをポーンと押したそうです。

奥さんの言うには、このような出来事はよくあって「ほんとに悲しくなる。」と言っておりました。
これと同じ事は、実は私、私の家族の周りでそれこそ頻繁に起きているのですが、「判らない」だけのようです。

この審査官のように顔色を変えず、口だけでぐさっと半端じゃない言葉を浴びせるケースより、やはり態度に出して、相手(つまり、私達)が反応しているか、どうかを楽しんでいるケースが圧倒的に多いと思います。
ちょっと、意地悪な目つきになって平気でこの言葉のお遊びを始め、ギリギリの表現であれこれ始めるアメリカ人を、私の会社の中で少なくとも2人は知っております。
ワタシはこりゃ何かおかしいな、と思った時はすかさす、「君の言っている事は理解できない。もう一度別な言い方で言ってくれ。」というのですが、相手はヘラヘラと笑ってごまかす事が多々あります。
警察官と人種差別

ある日の会社への出勤時、ひょいと後ろを見るとパトカーが赤と青のライトを点滅させながら私の後ろをぴったりと付いてくるではありませんか。スピードメーターを見ると80マイル。ありゃ、このパトカーオレに止まれと言ってるのかー。ヤレヤレ。(制限速度は65マイルのところでした。)

車を脇に止め、両手をハンドルの上に乗せて、警官が近付くのを待つ。この時にダッシュボードに手なんか伸ばしたら、命の保証はありません。警官にズドンと一発やられても文句は言えないのがアメリカです。

窓を開けると警官は「GOOD MORNING,SIR!」と言いながら免許証を見せろという。免許証と私の顔を見て、
「ここは何マイルの制限なのか知ってるか。」
と尋ねてきた。黙っていると
「ところで、会社は何時から始まるの?」
と全然違う事をしゃべり出した。

「7時30分から。」
「もう、7時20分じゃないか。これでは会社に遅れるね。貴方は遅刻は好きじゃないよね。」
「然り。好きではない。」
「では遅れないように仕事に行って下さい。」
「バイバイ。」

警官は軽く会釈をすると叉パトカーに乗って次の獲物をハンティングに行ってしまいました。会社に行くとアメリカ人が
「SHIN、きょう朝何かあったんだって?」
もう知っているのです。
「イヤー、今朝はちょっとお巡りさんとおしゃべりを楽しんだのサ。」

この話を後で、アメリカに長いこと住んでいる日本人の人にしたところ、すかさず
「その警官はどんな色でした?」
でした。
その警官はいわゆるインディアン系の、薄い褐色の肌をしたずんぐりした体格の人でした。その事を言うと、
「あなたが白人だったら、容赦しなかったでしょうネ。多分散々油を絞って違反切符は間違いなし。」
「もしその警官が白人だったら、相手は日本人だから検挙間違いなしだったでしょうね。」

「黒人の警官に白人のドライバー、叉はこの逆。こりゃすざましいヨ。」
つまり、私は有色人種の警官に捕まった日本人で、まあ大事(?)に至らなかったという訳なのです。

この話は何人かの他の人にもしてみましたが、私が大幅なスピード違反にもかかわらず検挙されなかった理由の一つは、肌の色だという点について反対をする人は今のところ誰もおりません。
inserted by FC2 system