15−03−16 モノづくり
日本は資源がなく国土も狭くい。そこで日本は原材料を外国から輸入し、それを加工して製品化して輸出、これによって国が成り立っている、という事を私が子どもの頃は学校で習いました。

ところがその輸出が凄い勢いで伸びて貿易不均衡が問題になり、通貨安定化の名の下に極端な円高と輸出規制などの影響で日本は日本で物づくりができなくなってしまい、工場はどんどん海外に出て行く事になりました。ました。
製造業の日本から海外へのシフトは結局日本の国を大きく変えてしまい、私は今の日本がアメリカのような2極化した社会の国になりつつあるのもこの影響だと思っています。

それはともかく製造業の海外へのシフトはまず大企業から始まり、そしてその下に繋がる中小企業へと進んで今や日本の工場は世界中に散らばっています。

製造業の中でも車はその裾野の広さはけた違いで、完成車メーカーは1社でも部品メーカーは1次メーカーだけでも数百社、2次・3次メーカーを含めると1000社とかそういう数字になります。

私はオハイオでの14年間で部品メーカー各社とお付き合いをしましたが、大半は一部・二部上場企業で、いわゆる中小・零細企業というのは極希でした。

そんな中、退職してからお付き合いのあるNRさんの誘いで先日、「中小企業海外展開セミナー」というのに参加する機会を得ました。

場所は四日市都ホテル、主催は四日市・商工農水部。四日市市は大きな港、大規模な石油・科学コンビナート、それに多くの中小企業の集まる産業都市です。
市の主催という事なので期待はしていなかったのですが、結構面白い話しを聞くことができました。

会場には70名くらいの人が集まりましたが終わった後の懇親会に来ていたのはその3分の2以下でしたから来なかった人たちは市の職員とかのサクラだったかも、、、。。
まず最初は基調講演という事である大学の先生によるお話しです。
やたらと"グローバル"とか"モノづくり産業"とかいう言葉が出てきて、中小の会社もどんどん海外に出て行かなくてはなりません、みたいな話しをします。

あまりピンときません。それにPPTで作った資料の日本語がおかしい。
"モノづくり中小企業が輸出を促進する事が日本の生きる道"とか意味不明な事を言ったと思ったら"海外に進出しなければ生きていけない"、とか言うものですから何のことやらちんぷんかんぷん。

最後には、「忘れてならないのは日本の現場、同じ土俵に乗れば絶対に勝てる」、とかで締めくくっていました。
私が現役の時に誰かがこんなプレゼンしたら途中で打ち切り、というレベルですね。

その次はジェトロによる"ASEAN全般の経済概況"という事で各国の状況、特に日系企業の実態調査結果のプレゼンは興味がありました。
でもこれってジェトロのWEBで見れる内容じゃなかったっけ?

最後は先程の先生、ジェトロの社員、それに四日市の地元中小企業で海外進出をしている社長さん3人を含む計5人によるパネルディスカッションが1時間ほどあってオシマイ。

最後の15分は質問の時間でしたので、真っ先に私が2つほど質問。(結局質問は私以外はひとりだけでした)

答えはこの5人の中で一番のキーパーソンと聞いていたIT製作所のIT社長に答えを求めました。

IT製作所はフィリピン、インドネシアに進出している金型メーカーで、IT社長はある大学の客員教授でもあり、そして本も出しており、新聞・雑誌にもちょくちょく顔が出ている70才を少し越えた方です。

後の懇親会でこのIT社長に挨拶をして、「著書はまだ読んでいませんが、是非読みたい」、と言ったところ、その場で持っていた本をくれ、後でそれを読むと私の質問の答はこの本の中に全部書いてあったのがわかりました。
IT社長はパネルディスカッションの最後の方でこう言っていました。

「私は中国には進出しませんでした。その理由を多くの人に聞かれます。

皆さん、反日教育を徹底的に受けている社員を自分の仲間として雇えますか。我が社の命とも言える大事な"技術"盗んでくる事を命じられた人を社員として雇えますか。

私は経営者として自分の会社の大切な社員をそのような国に駐在社員として送り込むのは忍びない。私は自分が住んでみたいと思う国に進出したかった、、、」


今中国では撤退したいのだが撤退できず、会社を捨てて日本に裸一貫で帰るしかない中小企業が山のようにあるそうです。
そんな訳で5時半にセミナーは終わりました。その後の懇親会ではいろいろな人と会って話しをする事ができました。
中小企業というのは多くが最終製品を作っているところよりも製品の部品を作ったり、更には伊藤製作所のようにその部品を作るための金型を作る、という会社が多いのが特徴です

大企業の2次、3次下請け、場合によっては4次下請けの会社もあります。
マスコミとか野党は"大企業"というだけで悪者扱いですが、こういう会社は大企業の勢いの下でビジネスをやっているのです。大企業が潰れたらこういう会社も同じ運命です。理屈は単純です。

これらの中小企業の多くは世界一の技術を持ち今までは日本国内で生きてきた、でも製品メーカである大企業が日本を出て行った、、、だから自分たちも出て行くしかない、、、。
オハイオにいた時にある部品メーカの社長さんと会食をした時に、

「Nさん、私の気持ちがわかりますか? 私達の会社は日本の工場を閉鎖・縮小して、こうやって海外に出てきました。

つまり日本人社員の首を切って、その代わりにこのアメリカでアメリカ人を雇って会社は生き延びてる。これっておかしいと思いませんか?」


懇親会では従業員50名で創業200年、会社設立50年という四日市の肥料会社の社長さんとも話しをしました。
「アジアの国々での農業はまだあまり有機肥料を使っていません。有機肥料を使えば生産性は格段に上がります。
我々もそういう市場を求めたいのですが、日本からの輸出はできません。有機肥料は1トンが1万円です。輸送費がかかりすぎて話しになりません。
日本の農業が飛躍的に拡大するという事はないでしょう。現地生産をやればいいのでしょうが、、、」


最後に少し顔を赤くしたIT社長が過去にあったある話しをしてくれました。

Nさん、私の会社に中学校から生徒が見学にきました。後で知ったのですが、引率の先生が生徒に"君ら勉強をしないとこういう工場で働く事になるんだぞ"、と言っていたそうです。
これって貴方ならどう思いますか?」

懇親会が終わってこのセミナーに誘ってくれたNRさんと駅前で一杯やりながら反省会。
中小企業の海外進出に対するキーワードは何か?5つに集約される事で意見が一致しました。

今日会った方々、従業員を守り、そして日本を真面目に支えている人達でした。
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