14−10−10 2日目
2日目の朝、少し早かったのですが外に出てみると既に運転手のロブはバスのエンジンをかけて点検をしているところでした。

生まれはケンタッキー、その後デトロイトで市バスの運転手をやっていたがそれを辞めてラスベガスに来て観光バスの運転手になった事、1962年から65年まで陸軍の兵隊でドイツに駐留していた事などを話してくれました。
延々と120kmくらいで走ります
堀ちえみ嬢の話しによると彼とはもう10年近くの付き合いになると言っていました。
でっかい体の黒人で愛想はありませんが誠実そうな男でした。

堀ちえみ嬢はアメリカ生活が25年を超したとか。短大を出て直ぐにNYに来たそうなので、もうすぐ50才か〜、、、。

まあそれはいいとしてNYの大学を卒業してNYで観光ガイドをやって、その後彼女曰く男を追ってミシガンに来たそうです。

でもがうまくいかず、今はソルト・レイク・シティー(SLC)に住んでいると言っていました。

冬の3〜4ヶ月は仕事をやっていないので実家の広島で過ごしているという生活、逞しい女性です。

バスは予定通り07:45に出発です。
先ず最初の目的地はキャピタルリーフです。ここまで2.5時間かかります。
このツアー、5日間で大体2000km以上走るので平均1日400km以上走る計算になります。
アスペンの黄葉が車掌から楽しめました
つまり毎日4時間以上5時間近くバスに乗っている事になります。
実に大西部のツアーらしい走り方です。

さて私の方もアメリカに来て3週間以上が過ぎました。

アメリカに帰ってきたな〜、と思うのはどういう時か?と日本からメールで聞かれたので次の事を書いておきました。

■ 日本に比べてあらゆるサービスの質がガクッと下がる
■ 見掛ける人の殆どが肥満に近い、又は肥満
■ 車でどこでも行ける、というか全くの車社会
■ ファーストフードの選択肢が限られる
■ 町中に看板がない、あってもうんと小さい、よって町にゴミゴミ感がない

さてキャピタルリーフまではブライスキャニオンを出て12号線から24号線に入ります。
24号線は3000mの山越えですがここで見たアスペンの黄葉は見事でした。バスの中からではうまく写真が撮れないので残念でしたが仕方ありません。
キャピタルリーフ国立公園
今回の旅は天気予報によると5日間すべて快晴だそうで、天気の心配はいらない、と盛んに堀ちえみ嬢は言っておりました。

確かにグランドサークル(GS)の旅に来て天気が悪かったら来ない方がまし、という程になっちゃいますからね。

キャピタルリーフも国立公園で広さは1000平方とこじんまりしています。ここもアメリカ大陸先住民、そしてモルモン教徒厳しい歴史があります。

つまりこのような荒野で生きていくためには水が必要であり、そして耕地を確保する事が必要になります。

ここで"生きる"というのがどんなに厳しかったか、緑と水に囲まれた日本に住む我々にとって1時間も歩けば肌で感じる事ができます。
それでもモルモン教徒が残した果樹園があり、今でも実が採れるそうです。

ツアーは先住民が1000年以上前に書いたと言われる岩壁にも行きました。言われないとなかなかわからないのですが動物、人などがあちこちに書かれていました。
再び24号線に乗って北上します。
人工物は道路以外何もありません。行き交う車も殆どありません。小さな町に入ります。でもあっという間に通り過ぎてしまいました。

町の外れに飛行場があってオンボロ飛行機が1機、町に入って町を出るまでとうとう人を一人も見ませんでした。

向かっているのはデッドホースポイント州立公園です。
バスはI−70に入ります。おお、I−70か〜。

これを東に2〜3000km走ればコロンバスか〜。
何だ1週間前にコロンバスからデイトン、そしてシンシナティーに行くのに走ったじゃないか〜、等と妙に身近に感じたりします。

グリーンリバーというところで昨日と同じくスーパーでランチを買い込んでバスの中で食べます。

実は、、、昨日このグループのメンバーの中で大変な事があって、2日目にして参加できなくなった方が2名見えました。

その方はCAのトランスから来た夫婦で夜中に奥さんの調子が悪くなり、救急車で病院に担ぎ込まれ、ドクターの判断でツアーはストップ、応急処置をするからトランスに帰るように言われたのでした。

奥さんは心臓に問題があって、昨日のブライスキャニオンの標高2500mのところを少し歩いたのが原因ではないかという話しでした。

旦那さんは79才、アメリカに50年住んでいる方でした。今日の朝レンタカーを借りて自分の車の置いてあるラスベガスのホテルに向かったという事でした。
今日の朝、堀ちえみ嬢からこの話しを聞いて、一同はシュンとなったのでした。
グランドキャニオンに負けず劣らずです
この件で堀ちえみ嬢も昨夜は3時間くらいしか寝ていないと言っていました。
救急車はサイレンを鳴らさないで来たので、誰も気がつかなかったのでした。

さてバスはグリーンリバーから更にI−70を50kmくらい東に走って、191号線に入ってデッドホースポイント州立公園に到着です。

ここはこの後行くアーチーズ国立公園の近くにあります。標高は1800m、600m下をコロラド川が蛇行して流れています。

ほぼ360度の大パノラマはウーンと唸ったまま声も出ません。遠くの山というか平地がコロラド川によって削られているのがよくわかります。中々の絶景です。

グランドキャニオンは谷底まで1マイル(1600m)あり、これより深いのですが、景色はグランドキャニオンに負けないくらい素晴らしいものがあると思いました。

崖っぷちの平らなところでアメリカ人のグループがお弁当か何かを食べていました。

私もこういうところでゴザを敷いて、そこにデンとあぐらをかき右手に握り飯、左手にたくあんを持って昼飯でも食ったらうまかろうと一瞬思ったりしました。でも

グループツアーの悲しさ、「あっ、もう集合時間だ、急がなくっちゃ」、とそういう情緒尾は消し飛ばされ、バスの方に向かうのでした。

バスは走り出し、アーチーズ国立公園に入ります。
ここはあの世にも不思議な砂岩でできたアーチが千以上あるところで、その中でも最も有名というかアーチーズ国立公園のシンボル的存在のデリケートアーチを見に行きます。

実はこのデリケートアーチは駐車場から歩いて往復で5kmあり、しかも行きはずっと坂なのです。

7年前に来たときは夏の7月、照りつける太陽の下で汗みどろになったのを覚えています。
アーチの手前、人の列の右は奈落の底です、落ちたら助かりません
今度は10月、でも気温は23℃ほどあってやはり楽なハイキングではありません。

デリケートアーチは夕日に照らされる時が最も美しいという事で、今の時間斜面を上がっておく人が結構います。

アーチの付近はそれほど広いスペースはないし、第一その左右は一旦滑り落ちたらそれでおしまいの何百メートルもの谷底になっているのです。

そんな事は考えても仕方ないので、坂道を上り始めます。岩の間を歩いたり砂地の道を歩いたり結構大変です。

やっぱり1時間近くかかってやっとたどり着きました。頂上には結構な人がいて撮影ベストポジションには既に三脚を」セットしたアメリカ人のオヤジどもが陣取っています。

日本人的感覚からすると、日没の写真を撮影するために限られたスペースの中に大きな三脚をセットしてジーッと構えているのは、気が引けます。
多くの人のじゃまになるから、ま、こういうところでは遠慮しておこうか、となるのが普通ですが彼らは違います。
写真を撮ろうと場所取りしている連中、ここからが見るのも一番きれい、でもスゴく邪魔
「オレは2時間前からここでポジショニングしているんだ、何だこの東洋人達は最低だな、どっかへ行けよ!」

はっきり一人のジジイが隣の同じようにカメラを構えているオッサンに言っていました。

今回の旅の中で、私の耳に入った我々に対する唯一の雑言を、ここで聞くことができました。

写真を何枚か撮って、この何とも言えない不思議な岩を目に焼き付けて私達はここを離れました。

堀ちえみ嬢によると、日が暮れるとここは真っ暗になり、非常に危険で再び2.5kmの道を戻ってくるのも至難の業になるそうです。

我々が下っていく坂道を懐中電灯も持たない連中がまだ続々と上がっていきました。
帰りはどうするのだろう、、、。

あっ、そうか〜、、、青目は闇夜に強いんだよな、きっと星明かりでも十分に足下が見えるんだよな、大丈夫、大丈夫、無事下りてくるよ、きっと。

ホテルに着いたのは19:00を過ぎていました。本日も約12時間弱の旅でした。

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