13−07−15 読書室”こだま”

ここのところ出張続きで1週間の半分以上が外に出ているという日が続いています。
行き先は栃木と東京で栃木へは近鉄、東海道新幹線、東北新幹線の乗り継ぎ、東京は近鉄、東海道新幹線、地下鉄を使います。
東海道新幹線の”のぞみ”はいつも満席状態です。あれだけの本数の”のぞみ”が満席になる程の乗客がいるという事で驚きます。

私は往きは”のぞみ”を使いますが、帰りは時間の余裕があるときは”こだま”に乗ります。”のぞみ”と”こだま”の東京・名古屋間の時間の違いは約1時間です。
他の人に言わせると何で時間のかかる”こだま”なんかに乗るの?と言われますが”こだま”は席が空いており、隣に誰かが座るという事がまずないからです。
乗っているのは4人だけです!!
乗客は出発した時が一番多いのですが、それでも乗車率は70%くらいを超えることはありません。
そして熱海を越えた頃から極端に減って、ガラガラ状態になり、名古屋到着前は1両の列車に6〜7人なんていう状態はザラです。

2人席をゆったり使って外の風景を眺めながらお茶を飲む、、、。
それだけでも十分なのですが退屈するので本を読みます。
東京から2時間45分、ゆったりとした席でゆったりと本を読みます。

この1ヶ月半で宇都宮/東京・名古屋を8往復していますので、東京・名古屋間の新幹線乗車時間だけで合計44時間(2時間45分X2X8)になります。

そんな訳で出張の新幹線の中で読んだ本の一部について感想を書いてみます。

今回は以前から気になっていた日高義樹という人が書いた本を目白のブックオフで見つけたので、これを2冊買って読んでみました。
日高義樹という人はNHKのアメリカの特派員生活が長く、NHKを退職後もアメリカに住み、アメリカ政府・アメリカ軍、シンクタンク、大学、ビジネス界等との群れを抜いた人脈を持っているジャーナリストです。

1. 今アメリカで起きている本当のこと 日高義樹(PHP) ★★★★☆

2011年4月出版の本である。アメリカはオバマ政権になって3年目、2010年の中間選挙で民主党が大敗をした後の状況について詳しく書かれているとともに、この時点から先数年の様々な予測が多く含まれており、それがかなり高い確率で当たっている事に驚かされる。
過去に未来を予測して、その未来が今になったとき、過去の予測を読み返すというのは興味深いものがある。

アメリカ経済、政治、アフガニスタン問題、中国問題を中心に日米関係について詳しく書かれている。
興味深いのは日本の民主党政権の政策(と呼ばべるものはあまりなかったが)がアメリカに何をもたらしたのか、アメリカが日本をどう見るようになったかである。
そしてそれが結果的に日本にどのように跳ね返ったか、読むと背筋が寒くなる内容である。

当時の岡田(克也)外相の言動に至っては国家反逆罪に相当するものであったのがわかる。アメリカ政府の要人の中には日本を北朝鮮以上に信用のできない国と断定した人もいたそうである。
日本の民主党政権はマスコミが作ったようなものだから、こういう報道は日本ではなかった。

またオバマ政権というのが如何に外交に疎く、アメリカは言うに及ばず日本も危険に陥ろうとしている状況にあると筆者は記す。オバマ大統領という人は知事の経験もなく、政治そのものに対して未熟な人であるのが原因と断定する。

中国がアフリカに巨額の援助を行いながら何十万人単位の中国人をアフリカに送り込んでいる事にもふれ、中国経済を鋭く分析している。
勤勉でモノづくりに優れ、しかも貯蓄をするという世界に類のない日本人の特徴が失われつつある今、日本と日本人はどうすればいいのか、その答えを導くために必要な知識を与えてくれる本である。

2. 米中軍事同盟が始まる 日高義樹(PHP) ★★★☆☆

この本を買って驚いた。日高義樹氏の直筆のサインが中表紙にあったからである。それに"Printed in USA" のマリリンモンローの古い絵葉書も挟まれていた。
本を手放した人はこの本をどこで買ったのだろうか。

先ずこの人の軍事知識には脱帽する。
軍事とはその下にある自分の国と相手の国の政治・経済・社会・歴史について広く深い知識がないと語れない。

そしてこれらに加え、軍の編成・兵器体系・装備性能・先端科学技術、更に将来の計画などの正しく、深い知識があって初めてその戦略、戦術が理解できる。
この人はそれらを兼ね備えた数少ない(というか唯一と言ってもいいかも知れない)日本人のジャーナリストである。
軍の戦略とはその国そのものの戦略である。これを忘れてはならない。

日本人が認識できていない事の一つに今世界は核兵器を持とうとしている国がどんどん増えており、しかもこれらの国はそれを実際に使うことを前提にしている点である。抑止力としての核ではない。

イランが間もなく核武装すると断言しており、イランが核武装すればアルカイダに核が渡り、あっという間に世界中に拡散するとしている。具体的には20カ国以上を予測している。
核兵器の製造は幾つかの乗り越えなくてはならない技術はあるが、それほど難しい事ではないそうだ。

また日本人が絶対に間違ってはいけない事の一つである、「日本が戦後70年間平和で経済発展に専念できたのは平和憲法があったからではなく、アメリカの核の傘の下にあったからである」、という当たり前の事が、詳しく分かり易く書かれている。

これから日本が独立と平和を維持していくために何をすべきか考える材料を提供してくれる一冊である。
私の会社では"3現主義"による行動が強く求められます。
3現主義とは”現場・現実・現物”でものをみて(把握して)これに基づき計画を立てて行動をする、というやりかた・考え方を言います。

3現主義は多くの日本企業、特に製造業では常識と言っていいくらいポピュラーなものです。
この考え方、やり方はオハイオでアメリカ人と仕事やる上で、非常に有効であった事を私は断言します。
3現主義とは机上の空論を戒める考え方でもあります。

日高義樹氏の本を2冊読んでみた感想は、この人の書き方は3現主義を貫く書き方になっており、とても共感できる点です。3現主義の実践を心掛けてきた私には、そのココロのようなものが伝わってくるのです。

日本の新聞社、雑誌社のアメリカ特派員はオフィスでアメリカの新聞・雑誌を他の人に翻訳させ、それを元に記事を日本に送っているような時代が長く続きました。
ですから今でも日本の特派員には実際の取材のための”人脈”というものが殆どないと言われています。
そのような中、日高義樹氏の広い人脈を使っての広範囲で深い取材に基づく分析は、一読の価値があると思います。

今回読んだこの2冊はブックオフで買ったので1冊500円。
イヤ〜、生ビールジョッキ一杯の費用でこんなに楽しめるなんて、読書ってホントウにいいですね〜。

今回、日記は読書感想文になってしまいました。悪しからず。
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