12−03−28 内向き日本人
オハイオから帰ってきてこれで2回目の春です。
でもカレンダーでは3月なったものの実際の気温は真冬と同じ日が続いていましたが、ここ数日日中はようやく春らしさを感じるようになりました。

春になると悩まされるのが花粉症、私は今まで花粉症には縁がなく、みんながマスクをして必死で花粉対策をしているのを横目で見ていました。
ところがとうとうきました。目がショボショボして鼻水が出るのです。花粉症です。鼻水はそれほど酷くはありませんが、目がショボつくのは正直かなり不快です。

話はガラッと変わります。私は会社まで自分の車で行きます。会社まで距離は8kmです。でも7時5分に車に乗って、会社の駐車場で車から出るのは7時30分、きっかりと25分かかります。雨が降ると更に+5分です。

つまり平均時速16km/h、オハイオ流で言うと10mphという、日本を知らないオハイオ人が聞いたら絶対に信じられないスピードで会社に行きます。
人間1人を30分かけて8kmの距離を運ぶのに必要な車は200万円、それに1リッター150円のガソリンを入れて、高額の税金も払わなくてはならないのが日本なんですね。

それはともかく、私はテレビを「聞きながら」運転をやります。聞くテレビはNHK総合です。NHKは好きではないのですが、コマーシャルがないので仕方なく聞いています。

昔は朝の番組はニュースを丁寧に放送していましたが、最近はニュースではなくどうでもいい街の風物詩等をクドクド放送したり、どうでもいい食い物のレポートを放送したり、ニュースではなくほとんどバラエティー番組化しています。
中身の質はオハイオで言うと、局員30人くらいのローカルTV局の番組に近い感じです。

そんな中で今日はちょっと興味をそそったレポートを放送していました。NHKもたまには耳をそば立てたくなる番組をやります。
それは大阪の小さな貿易会社のインド進出についてのレポートでした。
この貿易会社は従業員が100人弱の会社で、これからは商売相手としては中国と共にインドであるという社長の判断で、インド駐在希望者を社内で募りました。

ところが希望者はなし。そこで困った社長さんはインド駐在社員を社外公募をしたのでした。
そして59才のシニアを採用してインド駐在として送り込んだ、という内容でした。
この駐在者は到着1週間で1000万円以上の商談を既にまとめかけている、ともレポートされていました。

社内ではインド駐在希望者がいなかった。多分やらせでしょうが、こんなやりとりも放送されていました。

社長: 「インドへ行ってほしいのやけど君はどや?」
若い社員: 「いやです。行きたくありません。」
社長: 「何でや?」
若い社員: 「私は日本が好きなんです!日本で仕事がしたいんです!」


社長さんの問いかけに若い社員は急に熱烈愛国者になって、「日本が好きなんです。」、などと言っていました。
日本の何が好きなのかは特に説明はがありませんでしたが、要するに今の快適な生活を犠牲にしてまで知らないところで仕事なんかしたくない、というのが本音であるのは間違いありません。

確かにインドでの生活は非常に大変なようで、食べ物への順応の難しさ、そしてその衛生環境からなのか著しく体調を崩したり、病気になったりする日本人が多いと聞いています。
私の会社にもインド駐在経験者、出張経験者があちこちにおり、話を聞くと独特の苦労があるのがよくわかります。

社長さんは今の若い世代にはチャレンジ精神がない、未知の世界で頑張ってみるという冒険心もない、苦しいかも知れないが、力一杯やってみるという気概もない、と嘆いていました。
更に続くレポートではこの会社の今年の新入社員3人についてでした。何と3人のうち2人は中国人で、社長さん自らが特訓教育をやっている姿も報道されていました。
これはどういう事かと言うと、社長の目に適ったのは日本人ではなく、中国人だったという事です。

今年も大学生は就職難だそうです。でもその中身をよく探ると実は多くの学生は大企業ばかり行きたがって、中小企業は募集をかけても来てくれないというアンマッチな世界になっており、結果的に「自分の行きたいところに行けない」学生が巷に溢れている、というケースが多いようです。

このレポートの最後のコメントは、「このように若い世代が海外に行きたがらない中、中高年の経験者の活躍の場はまだたくさんあるのです。若者の内向き志向と中高年の活用、これが実態であります。」

私はこのコメントを聞いて、アホか!と思いました。やっぱりNHKはこういコメントを出すのですね。
2〜3週間くらい前だったと思います。新卒の就職事情についての報道がありました。
これは新聞にも出ていた事なのですが、最近の傾向として入社して2年で数十%の者が会社を辞めていくという内容でした。

これに関して大学の関係者は、「企業は辞めていく学生を引き止めようとしない、企業というのは効率を求めているので、どんどん辞めさせようとしている!」とか言っていました。
このコメントを聞いてやっぱり、アホか!と思いました。会社は幼稚園(学校)ではない、という基本が理解できていないのです。

ちょっと注意しただけで会社に出てこない、質問をすると堂々とわかりませんと答える、わからない事があっても先輩社員に聞かないで放置して取引先から大目玉を食らう、こんな学生を大量生産しているのは誰だ?
日本の大学はこれから大量の留学生を受け入れる方向にあります。という事はこれらの留学生の就職先の多くは日本の会社になるはずです。

これからの日本の若者は学校で外国人と競合し、就職の競争相手も外国人、就職してからは外国へ、日本にいても外国相手です。外国(日本以外)と仕事をやるには何が必要か、ズバリ、”理論的で合理的で単刀直入”、の3つの能力が身についていないと苦しいでしょう。

そしてその前に、インターナショナルになるには、先ずナショナルでなければならない、つまり言語、習慣、文化を越えて仕事をするにはその前に、自分の国のきちんとした国民でなくてはならない、という基本があります。
でも今の若い世代はそういう教育を全く受けていないので、外国人との競争には最初から大きなハンディキャップをしょっていると考えていいと思います。

ところで、私がいる同じフロアーでこの6月にパキスタンに駐在に行く人がいます。彼は1年8ヶ月前に5年間の単身中国駐在から帰ってきたばかりの53才、今度のパキスタンも単身赴任です。

「パキスタンってどんなところなのかな〜、、、あれ、禁酒の国だっけ?イヤ外国人はよかったのだっけ?悩んだって仕方ないよね〜、行って力一杯やるしかないよね〜、、、アハハ、、、。」

彼は元気です。きっと大丈夫です。
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