08−05−13 オハイオの病院

3月の上旬の定期健康診断で、手術が必要な事がわかったカミさん。さーあ、大変。4月上旬から日本に2月ほど行く予定にしていたので、日本で手術をするという事も考えたのですが、やはりオハイオが生活のベースでもあり、こちらでやる事にしました。

異国では普通の通院・診察でも何かと大変で、手術となるともっと大変。いろいろと不安でもありますが考えても仕方がない、という事で腹をくくりました。
そんな訳で貴重な経験をしたので、どんな状況だったか簡単にまとめてみます。

1.入院の短さについて

アメリカでは一般に病気・手術などでの入院日数は日本に比べると驚くほど短い期間です。盲腸手術は1泊、手術の翌日に退院、お産は48時間つまり2泊、これらは保険会社が制限をしているからです。
保険会社がこの病気の場合は1泊とか、この手術の場合は3泊とか、治療方法まで指定しており、これを超えると保険が出ません。
保険は条件が個人によって大きく異なるため、日本とは違いみんなが同じような治療を受けられるとは言えません。

日本では手術の場合、入院してからいろいろな検査を開始し、手術は入院数日後というのが普通ですが、ここではこれらを全部通院、又は自宅で自分でやりました。
カミさんはいろいろな検査に2回通院、手術24時間前から指定された食事制限とか薬の服用などを自分で行い、手術当日は開始1時間30分前に病院に行きました。
これらは説明をしっかりとされますが、詳しく記述したドキュメントも渡されます。(読むのに一苦労です。)

2.手術1時間30分前

待合室で待っていると名前を呼ばれますので手術準備室に行きます。ここで全部着替えてベッドに横になります。
入院に当たって寝巻きとか歯ブラシとか着替えとか、靴下とか一切持っていく必要がなく、全部病院が準備してくれました。

ここで最終的な簡単な検査を行います。しばらくするとまず麻酔医が現れました。
それも主と副の2名です。どういう麻酔をするとか、手術後の痛み止めはどうするとか、しっかりと方針と説明をしてくれます。
日本では麻酔医が不足しており、1人の手術に2名がアサインされるということはないそうです。

次に主治医である執刀医が助手の医師を連れて、どういう手術をするか説明をしてくれました。執刀医はカミさんが通院をして手術を勧めたドクターLCという人でした。

麻酔医も主治医も大変信頼のおけそうな感じで、非常に好感が持てました。
そして手術30分前に手術室の方に運ばれていきまました。これから先は誰も入れません。

3.手術中

病院には立派な家族の待合室というのがありました。ここにも担当の案内の女性が3人いて、いろいろと面倒をみてくれます。待合室はソファーがあって個室に区切られており、大きな液晶ディスプレーが何台も据え付けられています。

このディスプレーには手術のステータスが逐次表示されるのです。
準備室を出た、手術室に入った、手術が開始された、手術が終了した、回復室に入った、、、というのが患者ごとに時間とともに表示されるのです。

カミさんの場合手術開始予定は8時半、実際は8時25分開始でした。(病院に来て受付をしたのは6時45分でした。この時点で何人もの人がいましたからもっと早くからやっている事になります。)
この待合室で時々ディスプレーを見ながら手術がどのように進んでいるか確認をしながらコーヒーを飲みながら待つことになります。

4.手術終了

手術が終了すると待合室担当の女性から呼ばれます。カウンターに行くと主治医で執刀をしたドクターLCが既に私服に着替えてニコニコして立っていました。
待合室にいた家族(私と2人の娘)は隣の個室に入って、そこで主治医から手術の結果を聞かされました。私と娘は椅子に座って、ドクターLCはコーヒー片手に立って詳しく説明をしてくれました。

ドクターLCは40〜45才くらいの人で、蝶ネクタイをした本当に感じのいい人でした。ドクターは何かあったらここに連絡下さい、と言って自分の自宅の電話番号と携帯電話番号を教えてくれました。
日本では担当のドクターが患者に自分の電話番号を教えるなんてあり得ないので、少々びっくりしました。

手術が終わったカミさんは回復室で麻酔が醒めるまで寝かされます。ここでは看護婦さんとか医師に囲まれて、手術の経過も観察されます。回復室に行く事が許可された私たちは、麻酔が残って少し意識朦朧としてベッドに横たわっているカミさんと会いました。
会話はできましたが、あとで聞くとこの時の事はほとんど覚えていないとの事でした。

5.入院病棟移動

回復室で10分くらいの面会の後、再度家族待合室に戻り、入院病棟に送られるまでここで待ちました。
ドクターから手術は何の問題もなく終了、経過も良好と聞かされていましたし、回復室でカミさんの顔も見たので、一安心して次の連絡を待ちます。

丁度昼食時になったので、カフェテリアで娘2人と昼食を摂りました。カフェテリアは外来患者、入院患者への面会人、病院の医師、看護婦などで一杯でした。
食事の後はロビーのソファーに座ってピアノを聞きながら一服、その後再び家族待合室に戻りました。病院のロビーはちょっとしたホテルのような感じでした。

やがて名前を呼ばれ、どこの病棟のどの部屋に移されたのかカードを渡されたので、そちらに行く事にしました。私達が4階の入院病棟に着いた時と、カミさんが回復室から移されたのと同時で、そのまま2人の看護人の後に付いて行きました。

6.病室
病室は個室で広さは日本流で言うと14畳以上ある広い部屋で、トイレ・洗面所もついており、テーブルとか椅子が3脚、それにテレビ・冷蔵庫などが備え付けられていていました。
看護婦さんに聞くと夕方には付添い人用のベッドを入れるとの事で、それでも十分余裕のある部屋でした。

カミさんの当番は看護婦さんとPSAと呼ばれるアシスタントの2名でそれぞれ部屋に来て挨拶をしてカミさんの脈とか血圧それに酸素吸入とかの点検をやっていきました。
そして2人は部屋の中にある小さなホワイトボードに自分達の名前を書いて出ていきました。
部屋の中のロッカーにはタオルとか寝巻き、枕の予備とか毛布とかいろいろな物が一杯入れてあり、PSA連絡ボタンで呼べばいつでも交換してくれました。

病室には看護婦さん、PSA、病棟担当のドクター、食事の配膳のおねえさん、掃除のおばさん、その他いろいろな人が入ってきてカミさんの世話をしてくれました。
みんな驚くほど親切で非常に安心してカミさんを預ける事ができました。主治医のドクターLCは入院後数回診察に来ましたが、日曜なんか朝の6時半に来たそうで、朝方のアメリカ社会を象徴してました。

7.食事
入院して2日間は流動食でしたが、普通の食事がしたいと巡回に来た当直ドクターに言ったところ、配膳のおねえさんがやってきて、食事のメニューを置いていきました。
メニューにはカミさんの患者NOと名前が印刷されており、食事の管理もきちんとされている事がうかがえました。

昼食と夕食は数種類のメニューの中から食事を選ぶことができ、サラダにドレッシング、デザートも何種類もある中から食べたいものに○を付けて持ってきてもらうという方式でした。
気になる味は、私も少し横取りして食べてみましたが、何の変哲もない極く普通のアメリカ食の味でした。

病室を出たところに製氷機とか電子レンジ、それに大きな冷蔵庫がありました。
冷蔵庫の中にはジュースが一杯入っており、下の娘はこれを持ってきて飲んでいました。このジュース、誰のために入っていたのだろう?

8.退院


入院は事前に3日〜5日と言われていましたが、手術後4日目に退院と決定されました。
退院は昼食を済ませた午後で、主治医のドクターLCが来て退院後の注意事項についていろいろと指示をくれました。
私も聞いておきたい内容についてメモを作ってあったので、それに基づいて質問をしました。

入院後の注意事項は詳しく書かれたドキュメントを事前に渡されていましたので、これを読めば大体の事はわかります。
でもやはり直接話を聞いたほうが安心できるという訳で随分勝手にいろいろと聞いちゃいました。最後に手術後の抜糸は1週間後の10:00から行いますのでオフィスに来るように言って部屋を出て行きました。

これで退院準備完了です。看護婦さんが車椅子でロビーまで送ります、と言って車椅子の係りの女の子を呼んでくれましたので、カミさんは車椅子に乗って玄関まで。私は車を駐車場から玄関まで持ってきて、これにカミさんと娘2人を乗せてめでたく退院したのでした。

入院で特に問題になるのはやはり言葉ですが、ここの病院は外国人用の通訳サポート体制が整っており、手術当日は手術前から手術が終わって病室に入るまで、入院2日目の回診時(30分)、それに退院時(30分)は通訳サポートをお願いしました。

これ以外は全て自分達でやりましたが、何とかなりました。
でも夜中に点滴の液がなくなってきてブザーが鳴り、ナースコールをしたまではよかったのですがインターホンで、「どうしましたか?」、という質問に、さて点滴って何ていうのかなー、、、とかそのような簡単な事でもとっさには出てこなかったりで、焦る事がありました。

入院2日目に来てくれたKさんという通訳の方は、お父さんが私と同じ会社の元駐在社員の息子さんで、お父さんは既に帰国・退職されているのですが、本人はオハイオ州立大を卒業して救命士をやっており、こちらに永住を決意している方でした。
話をしていると私の前任者の下の息子さんと同級生である事もわかり、2度びっくりした次第でした。

カミさんは4泊5日で退院したわけですが、アメリカは医療先進国でとはいうものの、やはり不安があったのですが、入院前の検査段階から非常に手厚く、かつシステマティックに進められるのを見て、そのような不安はすっ飛んでしまいました。
いろいろと経験をしましたが、いずれにせよ入院・手術なんて事は経験せずに済む事が一番なのは当然ですよね。
とにかく全部が終わってほっとしました。

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