07−12−14 四泊五日一人旅

一人旅、何と気分をそそられる言葉でしょうか。私の人生も50代後半にさしかかりました。振り返ると当然の事ながら今までいろいろな事がありました。家族のこと、仕事のこと、友人のこと、自分自身のこと、子どもの頃から成人するまでのこと、その後職業について結婚をして、、、、数え切れない出来事を経験してきました。

中には嫌なこと、思い出したくない事もたくさんありますが大半は懐かしい思い出となって記憶されています。

私は今も家族のために働いて、そして様々な出来事の中で生活しています。これは誰もみんな同じだと思います。つまり現実の中で生きています。

しかしこの現実の世界からちょっとだけ離れて一人でボーっと過ごしてみたい、誰にもあまり干渉されず気の向くまま過ごしてみたい、数年前からそのような考えが時々頭の中をよぎるようになりました。

かつてサラリーマンが現実逃避をするために家庭・職場からある日突然姿を消す、「蒸発」、という言葉が流行った事があります。

私の場合はこのような現実逃避とは違うのですが、でもいろいろなしがらみを忘れて少しだけ自分一人になりたい、という気持ちが湧くようになっていました。それの具体的手段の一つが「一人旅」です。

今回の日本滞在で本屋に行って気が付いた事に、男の一人旅を勧める本が結構出ている事でした。「一人旅はちょっとした時間と、お金と、そして思い切りの3つがあればいつでもできる、、、、」、なんて書いてありました。

一人旅を実行する上で、現役のサラリーマンにとってのネックはやはり時間だと思います。サラリーマンにとって何日かまとまった休みをとるというのは、普通は簡単ではありません。

私は今海外勤務をしており、私の会社では海外勤務をしている者に対して1年〜2年に1回、一時帰国休暇というまとまった休みを取る権利を与えてくれます。これは絶好の機会です。

もし私が日本国内で勤務をしているのであれば、このようなまとまった休みというのはなかなか取りにくいと思います。

そんな訳で今回の一時帰国休暇を利用し、一人旅を実行に移すことにしました。
ラフな格好に着替え、必要な身の回りの物を小型のスーツケースに詰めます。

今回の行き先は全くの知らない土地ではなく、かつて何十年も前に過ごした思い出の地にしました。日程は4泊5日、本当は1週間くらいにしたかったのですが、今の私にはこれが精一杯の日程でした。

行く前にやる事は概略の日程を決めてホテルを予約する事、あとは電車に飛び乗るだけです。電車(新幹線)に乗っても乗客の殆どはスーツを着たビジネスマン、私のような格好をしたのはあまり見掛けません。

アーそうか、みんなは仕事をするために電車に乗っているのだ、でも今日の自分は違う。これだけで現実を離れた世界に自分はいるのだ、という気分に浸れます。

目的地に着きます。でも何時までに何かをしなければいけないとか、何時までに誰かに連絡しなくてはいけいけないとか、そういう制約はありません。

あくまでブラリです。お腹が空けば目に入ったレストランで好きなものを食べて、好きなだけそこにいます。気に入った風景があればしばし立ち止まり、そしてカメラで撮影をします。

道に迷えば誰かに聞きます。聞くとみんな親切に教えてくれます。歩き疲れると適当な場所を見つけて腰をかけます。

とにかく自由に行動します。ひょっとしたら他の人の目には、服装から見ても私は失業した哀れなサラリーマンと映っているかも知れません。でもどう思われようが構いません。

あちこち行っても、バス停とか、駅とかデパートとかでラフな格好でブラブラしている人は、私よりもう少し上の年代の人が多い事に気が付きます。
つまり退職をして現役を退いた人達です。こんな時はオレは現役だけど、休みをとって一人ブラリ旅をしているのだなー
、と改めて思ったりします。

夕方になると同年代くらいのサラリーマンが忙しそうな足取りで歩くのが目に入ります。
自分も普段はこんな感じなのかなーと思ったりします。他の人は働いている、でも自分は休んでいる、何だか優越感のようなものが湧き上がってきます。

夕食はこざっぱりした小さめの居酒屋に入り、カウンターの隅っこに座ります。
雰囲気が合わないと思った時は、ためらうことなく直ぐに店を変えます。

そして何品かの料理を注文して先ずビールを飲んで、それから日本酒又は焼酎をチビリ、チビリ飲みます。

私が一人なので、お店の人とか他の客が話しかけてくる時があります。私が地元の話題に入っていけないのが分かると、どこからか来たのか?と尋ねられます。

そんな時私は自分の故郷の地名を言い、ここには仕事があって来ています、そして仕事は終わったのですがあと1〜2日くらいブラブラする予定です、と答えます。そしていろいろと地元の話しを聞きます。

夕食の居酒屋は夜の7時以降に行きます。居酒屋だけで飲み足りない場合はお店の人に、どこか安くてくつろげるスナックはないか紹介をしてもらいます。聞けば必ず教えてくれます。

場合によってはそこの店まで案内してくれたりして、びっくりする事があります。私は決してお金を持っている人に見えない格好をしていますから、確実に安いところを紹介してくれます。

そして10時過ぎにはホテルに帰って風呂に入ります。せっかくブラリ旅で来たところですから、居酒屋とかで仕入れた話しと、ホテルでもらった観光案内パンフレットを眺めながら翌日の行動をぼんやりと決めます。

いくらブラリ旅だからと言って、全部いきあたりばったりでは効率が悪すぎるし、やはり楽しくありませんから。

風呂上がりにコンビニで買ってきたビールを飲みながら、観光パンフレット見るのも悪くありません。
そうして1日を終えます。

ホテルは便利なところに位置していればビジネスホテルで構いません。でもなるべく広い眺めのいい部屋を頼みます。
いくら寝るだけと言っても狭い部屋ではせっかくの開放感が制約されたような気になってしまいます。最近のビジネスホテルは、ツインかダブルの部屋を一人で使っても値段はそれ程変わりません。

今回の私のブラリ一人旅の行き先は、かつて何十年も前に自分が青春時代を過ごした場所が中心でした。ですから「思い出の地・一人旅」、と言った方がいいかも知れません。

懐かしい人に会う事もできました。初対面なのに親切にしてくれた人もおりました。
町並みが昔とあまりにも違うため驚き、その過ぎ去った年月の長さを実感したりもしました。
でも当時のままの所を見つけ、感激もしました。

生まれて初めての4泊5日の一人旅。交通手段は電車、バス、一部タクシー、そして二本の足でした。一人旅に車は似合わないと思いました。
何故かというと移動が早すぎて、じっくりとその町、人、風景を味わう事ができないからです。

それに日本は一部の地方を除いて公共交通機関が非常に整っており、あまり不自由を感じないのです。どうしても待ち時間等が大きく出てしまう時はタクシーを利用すればいいと思います。

カミさん、娘達には私は少し身勝手に写ったかも知れませんが、私は何もかも忘れて非日常的な5日間を過ごす事ができました。

私は今外国にいるのでこのような日本国内の旅は、余計に非日常的な感覚が強くなったのかも知れません。自由気ままに日常を離れて旅をする、なかなかいいものです。

思い出の地・一人旅、実はあと2つ程行きたい所があります。さて、いつ行くかナー。早くも次の計画を練っております。

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