07−04−14 アメリカを知る
昨日の午前中はR&Dで会議。ところがこの会議、題目はわかるけど、具体的な中身がよくわからないという私にとってはイヤな会議。
このような会議は駐在勤務をやっていると年に何回かあります。というのは海外駐在勤務というのは仕事のスパンが広く、ちょっとボーっとしているとその仕事の中身をきっちり把握する前に、その仕事にワーッと巻き込まれる事があるからです。

会議が始まって10分くらい経ったところで、何が問題点で何が論点になっているのか解りました。R&DからはKさん他が出席しており、工場側とある件に関して方針がカミ合わないという事で、その整合をするために会議が開かれたのでした。
それぞれの主張はあるのですが、困ったのは工場側からの出席者の中の一人のJMさん、この人は議論が殆どできないという致命的な欠陥を持っている女性です。
議論ができないとはつまり、キャッチボールができないのです。相手の話を聞かないで自分の主張のみをまくしたてるというタイプです。正確には相手の話を聞く能力がない、と言った方が正しいかも知れません。

いろいろな会議をやっているとアメリカ人って、やっぱり日本人と違うなー、という論理の展開をします。
それぞれの文化の特色というのでしょうか。例えば、○国人は相手の揚げ足とるのが非常にうまいとか、自分の失敗を他人のせいにするのがうまいとか、と同じです。(日本人でも揚げ足を取るのがうまい輩を見ると、コイツ、○国人か〜?と思いたくなる時があります。)

それはともかく、JMさんの殆ど喧嘩腰状態の展開に、さすがの温厚なR&DのKさんもむっとした顔に変わってしまいました。何でこんなヤツ出席させたんだよ、という顔をしておりました。
Kさん気にしてはいけません、JMさんはかなり、イエ殆ど特殊であります。これはオハイオ人もはっきりと認めております。彼等もウンザリしているのです。無視して下さい。あとはうまくやりますから。

会議が終わり、帰りはオハイオ人のTMさんの車で一緒に帰ったのですが、「TMさん、自分の意見だけを一方的にまくし立て、相手の意見を聞く姿勢を見せないJMさんは、こういう仕事には少し?だと思うが。」、と言ったところTMさんは黙って返事なし。

JMさんは女性、アメリカでは女性とか有色人種の人事管理は細心の注意を払うべき事項の一つです。TMさんはこれを誰よりもよく知っていますから、心の中で考えている事、本当はこうやりたいという事、これらをどこまで口に出していいのか、これが極めてよくコントロールできています。

このコントロールが平均より十分にできる人がアメリカではマネージャーになれる資質の一つなのです。TMさん、この点は非常に優秀なマネージャーです。
私の住んでいる住宅地の入り口の家は先日まで黒人の家族が住んでいました。この黒人は2年ほど前に引っ越してきたのですが、お父さんは陸軍の兵隊さんでした。私の住んでいるほんの近くには通信隊の基地とか、少し北に行くと軍の補給部隊とか軍事施設がたくさんあります。

この黒人の兵隊さんが来たのと同時くらいに、コロンバスにある日本食スーパー2軒のうち1軒の横に軍の "Recrute Center" ができたのです。リクルートセンターとは兵士の募集事務所の事です。
このリクルートセンターは日本食スーパーの横にあって、大きな看板も上がっているので、何人かの日本人駐在員にこれを聞いてみましたが、「それ何ですか?」、という返事で全員が知りませんでした。

アメリカは今、イラク、アフガニスタンで戦争をしていますが軍は徴兵制ではなく、志願制で成り立っています。
アメリカ4軍は約200万人いるそうで、この中の100万人くらいは下級兵士と思われますから、それを志願者で埋めるのは非常に骨の折れる事だと思います。
私の家の近くに住む黒人の兵隊家族も募集強化で派遣されたリクルーターのようでした。

アメリカ軍は15万人をイラクに派遣しており、引き上げの時期は未定で泥沼化しています。既に3000人以上の戦死者が出ており、戦傷者は10000人を越えています。どんどんフレッシュな兵士が必要なのです。
でも兵士になりたいという若者はそんなに多くはいません。そこでここ3年間で兵士の募集を担当するリクルーターをアメリカ軍は30%増員し、募集事務所を1.5倍にしたのです。

私の会社ではイラク戦争が始まった時に、イラク戦争の話題がアメリカ人社員の中で出たときは、静かにその場を離れて話題に入らない事、という通達が出ました。戦争は政治的な事で、日本人はビジネスの為にアメリカに来ているのだからこの話には係わるな、という事のようでした。

私の会社からは、今でも予備役招集で何十名(現在の正確な数は私は知りません)かが軍務に就いています。これらの社員は召集解除の時は現職復帰が保障され、招集中も給与は払われています。
アメリカは年間何十万人もの若者を軍に入隊させていますが、日本の感覚では分かり難い事がいろいろとあります。例えば軍と高校の関係です。
例えば学校は生徒の氏名、住所、電話番号を要求があった時は軍に教えなくてはいけないとか、軍は企業とか、大学と同じ条件で学校に入る権利を持っている、とかです。

生徒の進路相談に軍が企業とか大学と同じ条件で学校に入るというのは、アメリカらしいと思います。つまり若い人を必要とする側は大学も、企業も、軍も平等にその機会を持つという意味です。
私の下の娘がオハイオでWKHSという高校に行っていた時も12年生の時(高校3年生)、軍服姿の兵隊が教室に入ってきて生徒と話をして入隊を勧誘していたそうです。

それともう一つ、殆どの日本人が知らないことに、アメリカの高校には軍事教練の時間があり、これを選択した生徒は正規の高校の「単位」として認められるのです。つまり数学とか理科と同じように軍事訓練が授業にあるのです。これは確かJROTC(Junior Reserve Officer Training Corp)とかいうプログラムだったと思います。
このJROTCを採用している高校は全米でもかなりの比率のようで、先日のテレビでは確か30万人だか40万人の高校生がこの単位を取っていると報道していました。(アメリカの今年の高校卒業生は300万人。)

日本では学校での軍事教練は、昭和20年8月15日まで強制的に行われた、悪名高き軍国主義の象徴という、ある人達に言わせれば鳥肌がたつおぞましい歴史的事実、という事になっております。アメリカでは大学にもこれがあって、もちろん学校の履修単位に認められている、同じく正規の教科です。

アメリカ国内を飛行機で業務出張とかプライベートで旅をすると、空港で頻繁に若い兵士に出会います。休暇で帰省、又は休暇が終わって部隊に戻るのでしょう。陸軍の兵士は殆どが砂漠戦用の迷彩服とシューズを履いています。そして黒人、ヒスパニック等の有色人種が殆どです。
やはりこれは何を意味しているのか、想像するのは難しくはありません。

3年だか5年の兵役終了後に大学に行きたい場合は、学費が殆ど免除になるというのが、軍のリクルートの大きな目玉になっているそうです。つまり貧困層の高校生を狙って勧誘していると言うことです。
実は最近、「超・格差社会、アメリカの真実:日経BP社発行」、という本を読みました。この本は広島にいる社外の大先輩に勧められたので日本に注文、取り寄せて読みました。
著者は日本人でアメリカに何十年も住んでいる、経営コンサルタント/アナリスト/CPA(!)の方で、中身は非常に具体的で一部を除き、大いに同感をしました。歴史的な面からのアプローチも鋭いと思いました。

日本では最近格差社会という言葉が頻繁に使われていますが、何がどこまで格差が出てきたのか、その理由・原因は何か、政治的な意図を抜きに書いた本があれば読んでみたいと思いますが、まだ見つけておりません。

私は普段はオハイオの日本人駐在社員という狭い社会で過ごし、アメリカ人との付き合いは会社以外では殆どなく、英語のテレビは天気予報以外は殆ど見ず、まして英語の新聞・雑誌は面倒臭くって読む気がない、夜はひたすら液体燃料の注入に没頭し、たまに行くレストランは日本レストランが中心、これじゃ10年オハイオに居たって、アメリカの事はナーンもわかる訳がない!!
そんな中、何年か前に退職をしたオハイオ駐在社員の大先輩から先日メールを頂きました。

「どうも最近 『 5年、7年の駐在生活を楽しむ、エンジョイする 』 という言葉を使う人が増えたような気がする。これは良いことでもあるが、しかし同時にシリアスにアメリカとアメリカ人について知り、考える事も必要ではなかろうか?」

このメール、私の心にグサッときました。
という訳でオハイオ生活丸11年、間もなく12年目に突入の私ことSHINは、大先輩の警告に従い、アメリカの社会研究を改めて行う決意をしたのであります。

でもなー、、、、どこから手を付けていいのかなー、、、早くも入り口でもたついている私であります。
inserted by FC2 system