05−10−06 秋の夜空

今から42−3年前の少年だった頃の話。
私は、「子供の科学」、という本を父親から買ってもらい、これを朝から晩まで読んで夢を膨らませておりました。何に興味を持ったかと言いますと、天体観察です。

空に輝く星と星が、ギリシャ神話等に出てくる動物や人の形にグループ化されている事とか、望遠鏡を使って星(特に惑星)を見ると、何とも言えない神秘的な形が見えるとか、本を読んで心を弾ませ夢を描いておりました。
天気の良い夜には星座の本を開いて空を見上げて、星と星を目で線を繋ぎ、これは何座だとか飽きもせずいつまでも見ていたのを思い出します。
ですから今でも、主要な星座と、星の名前・位置は全部覚えています。(子供の頃の記憶ってスゴイです。)

子供の科学という本には、天体観察用の望遠鏡の作り方も載っており、母親にお小遣いをねだってレンズを買ってもらい、ボール紙で望遠鏡の製作にも熱を上げました。いろいろと作りましたが、やはり一応それなりのものが出来上がったのは中学2年生になって作った望遠鏡でした。

私が中学生だった今から40年前の三重県の空は、本当にきれいでした。
冬の夕方に犬の散歩のために家を出て、近所の大きな神社に行って、犬を放して遊ばせていると夕闇が空を包んで星が見え出します。
空には明るい星から順番に現れて、家に着く頃には殆ど真っ暗になって、空には冬の星がきらめいていた情景を今でも鮮明に覚えています。

その後社会人になり、星の事は忘れた訳ではありませんでしたが空を見上げる事も少なくなり、星の見える夜はもっぱらネオンの星の方に傾注せざるを得ない生活になっておりました。

オハイオに来る前に住んでいた埼玉は、星を見る環境には最悪で、空気は汚れており、それに街灯の光が反射して空一面がボーっと広く霞んだようになっていました。まともに星が見える夜は非常に少なく、冬の限られた時だけだったと記憶しています。

上の娘が小学生の高学年の時に、星が見たい、というので天体望遠鏡を買った事がありました。でも月とか、惑星以外の観察はあまりできませんでした。空の汚れは最悪だったと記憶しています。

そんな私がオハイオに来て10年。夜になって空を見上げると、少年の頃に見たあの星空が頭の上にあるではありませんか。そうかー、やはりここは空がきれいなんだと思わずにいれませんでした。
オハイオの空気は非常に綺麗ですが、快晴の日が割と少なく、年間に100日以下、正確に言うと90日程度しかないという事を聞いたことがあります。

でもゴミの少ない空気と、ちょっと田舎に行けば人工の光が全くない世界が広がっているので、星を見るには絶好の土地には違いありません。

今年の7月、古い家を解体するというので日本に帰った時、保管してあった荷物の中で必要な物だけを持ち出すために懐かしい家を訪れました。家は18年間誰も住んでいませんが、当時のままの姿でした。
懐かしい品々の中で、これだけは残しておきたいという物を選んでいる最中に、私が中学生の時に作った天体望遠鏡が出てきたのです。

少し埃で汚れていましたが、殆ど元のままでした。この望遠鏡を見た瞬間、40年前が鮮明に蘇ってきました。
この望遠鏡で、月のアバタを見たり、木星の衛星を見たり、土星の輪も何とか見えました。

よし、もう一度夜の星を見てみよう!!

惑星を見たり、月のアバタを詳しく見たりするには口径の大きな天体望遠鏡がいいのはわかっています。
しかし星の美しさを見るには、実は口径の大きな双眼鏡が一番なのです。
口径の大きな双眼鏡で見る夜の星は、別世界です。

そこで私はニコンの50mmの7倍という双眼鏡を友人に頼んで、日本で中古品を手に入れてもらいました。
何だ、たった7倍の双眼鏡か、と思ってはいけません。倍率は10倍前後であれば全く問題はなく、重要なのは口径なのです。口径70mmというのがベストですが、これはあまりにも大きく、天体観察以外に使い道がなくなるため、止めました。

メーカーも本当はカールツアイスが欲しかったのですが、中古品の出物は少ないし、新品はあまりにも高価なのでこれも諦めざるを得ませんでした。
実はニコン、この双眼鏡自体も以前から欲しいと思っていたのです。

メーカが何でもいいなら50mmでも1万円以下で売っています。
でも一度ニコンの双眼鏡を覗いたら、他のものは使えません。
また同じニコンでもピンキリがあって50mmでも2万円くらいから15万円まであります。

今回は2世代くらい前の高級品が手に入りました。50mmの双眼鏡を手に入れたのは初めてです。

この前の日本への出張でこの双眼鏡を友人から受け取り、オハイオに帰ってから早速夜の星を覗いてみました。時差ボケで朝早く目が覚めた日です。

午前3時のオハイオの空は冬の星座でした。気温は10℃ちょっとです。
オハイオの空は澄んでおり、肉眼でも星はよく見えます。でも双眼鏡を通して見る星の美しさは、やはり期待を裏切りませんでした。
口径が大きい双眼鏡で低倍率・広角(視野が広い)で見る空には、こんなに星があるのか!と思うほど肉眼とは違った世界が広がっていました。

日本の首都圏に住んでいては味わえない、オハイオに来て再発見した自然観察の楽しみ、そして少年時代の感激を再現する事ができました。
でも少し首が痛くなる自然観察です、、、、、、、、、。

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