04−06−19 取引先の日本人駐在社員
今週の月曜から水曜まである仕事の社内監査のために、日本の本社からの3人がオハイオに出張しておりました。
3人ともよく知っている人ばかりで、私が日本に行った時は必ず顔を合わす人達です。
彼等に対する説明は全部アメリカ人にやってもらいましたが、一応「監査」なのであまり馴れ馴れしくやっても失礼だし、私は一応神妙にしておりました。

水曜日はズバリ私の担当の業務の監査で、ちょっと指摘を受けてしまいました。
3名のうち1名は火曜日に帰ったので、監査の終わった水曜日、2名を連れて日本レストランへ食事に行きました。
監査をやっている連中は、いろいろな国・部門を回っているので、結構話題が豊富、結局かなりのアルコールが入り、10時半まで話が弾んでしまいました。
前日の火曜日はアラバマの取引先の日本人と、その取引先の日本の本社から出張の日本人、併せて6人と日本レストランで会食。
アラバマにいるUさんは私より2才下で、単身赴任で3年目。やはり子供の教育の関係で単身赴任をやっているのです。Uさんの住んでいるのは人口数千人の小さな村。もちろん日本食のレストランはなく、日本食を売っているスーパーもありません。
「ここでは刺身が食べられるのですね。」

Uさんはしみじみと言いました。Uさんは普段はこのような日本レストランで食事をするなんて事はないのです。
Uさんの話によると刺身を食べるのは、暇なときに魚釣りに行って、その魚を自分でさばいて食べる時だけだそうです。その時は、同じ村にいる他の数人の駐在員の家族にもお裾分けをすると言ってみえました。

「普段は何を食べているのですか?」
「車で2時間くらいの所に小さな日本食材店があるので、そこに買い出しに行って、醤油とか味噌を買ってきます。それ以外は村のスーパーで買ってきたものを自分で何とか日本風に料理をします。」

そんなUさんのために、ちょっとだけ上等の冷酒の一升瓶を注文。升酒でチビリ、チビリ。

アメリカ生活と言っても、本当に様々です。このように私の会社の取引先の多くは相当な田舎に工場を持っており、コロンバスで生活する我々とはほど遠い環境の中で日本人駐在社員は頑張っているのです。

Uさんは7月24日から2週間の予定で、日本への一時帰国休暇。1年振りに家族と会います。
でもUさん、日本では休暇をとれないのです。
Uさんの会社にはちょっと厄介な問題の対応を超緊急でお願いがしてあり、Uさんはこの仕事を日本でやらなくてはならなくなってしまったのです。
今日の午後、今度は別の日系企業の取引先の報告を約2時間受けました。いろいろと課題はあったのですが、内容はほぼ合格。
報告が終わってその取引先のHさんと休憩所でコーヒーを飲みながら雑談。

Hさんは私よりかなり若く、多分30代後半くらいだと思います。
普段はケンタッキー州に奥さんと子供3人で住んでおり、アメリカに来てまだ1年ちょっとしか経っていないと言っておりました。
「どんな町に住んでいるのですか?」
「人口は7−8000人だと思います。私の会社の駐在社員は私を含めて2名です。」
「じゃ、日本人はそれだけ?」
「イエ、もう一つDという会社がありまして、そこの会社の駐在社員は10名くらいお見えなようです。」

そうかー、この人もエライ田舎に住んでいるのだなー。
Hさんは今回の問題の対応のために、私の会社から20kmくらい北のBという町にある関連会社に数週間張り付いているのです。
「ところで今どこのホテルに泊まっているの?」
「Jというホテルです。」
「エーッ、そりゃ周りには何もないじゃないですか。食事なんかどうしているの?」
「えー、まあ、マクドナルドもあるし、、、、、1軒だけ中華レストランもありますから、、、、」

Hさんはまだ来て1年しか経っていない奥さんと小学生以下の子供3人を残して、小さな小さなオハイオの町の、ホテル住まいをして、仕事に頑張っているのです。
「アメリカに来る前は、愛知県におりまして、その時も家族おいて、あちこち飛び回っておりましたから。カミさんも慣れていると思います。」

そうかー、この会社に私はちょっと小型爆弾を落としたのですが(問題対応にちょっと時間が掛かっていたので)、その犠牲者にHさんがなってしまったのです。
Hさんは真面目そうな、屈託のない明るい方です。私はHさんが気に入っています。

Aという超大手の世界的にも有名な会社で働くHさん。でも今は家族をケンタッキーに置いて、オハイオの田舎町にのポツンと一軒だけあるホテルに一人で住んで頑張ってみえるのです。
マクドナルドをかじりながら。
私と付き合いのある取引先の日本人駐在社員は皆さん、本当によく仕事をしてくれます。
私は心の中ではいつも、無理を言って申し訳ないと思っております。

技術的な問題の場合、やはり最後にはアメリカ人ではなく、日本人がキーになります。
アメリカ人の技術者に4時間かけて説明をして答えの出ないケースでも、日本人技術者に同じ事を話したら1分で解決というケースもあります。
これは大げさではありません。技術の世界というのは、そういうものなのです。

日本人の観光客なんかは絶対に訪れる事のない田舎町にある、これらアメリカの日系企業支える、Uさん、Hさん。
このような人達がいる限り、日本企業は何とか生き残っていけるのではないか、最近そう思うようになりました。

Uさん、Hさん、今度コロンバスに来たら、ここの日本レストランで刺身で一杯やりましょう!!!
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