04−01−20 アメリカ人の日本語クラスにて
私は日本の本社から、アメリカの現地法人に転勤をした駐在社員です。当然の事ながら、社員の殆どはアメリカ人です。会話は英語、文書は英語、メールも英語、英語、英語、英語の世界です。
アメリカの会社ですから、日本人の我々は英語を使わなくてはなりません。

アメリカ人は日本語を使ってはくれません。
では一般的に、アメリカ人の外国語能力はと言うと、学校で外国語教育を受けてはいるものの、実用レベルで使える人は非常に少ないと感じています。
日本人が外国語(殆どの場合英語)をある程度理解できるのに比較すると、アメリカの外国語教育というのはやられていない、或いは成功していないに等しいと思っています。

もちろん、例外的な人がいるのは当然ですが。
日系企業ですから、日本との係わりは当然非常に強く、良い意味でも悪い意味でも日本とのコミニケーションなしには会社は成り立ちません。
そのような中で、アメリカ人社員にも日本語を理解してもらうため、会社として日本語のクラスを開き、アメリカ人に参加を呼びかけています。

今日は昨年の9月から日本語の勉強を開始し、1ステップを終えた私の職場のクラスの終了式(?)に呼ばれたので出席してきました。
教室に指定されている会議室に行くと、まだクラスをやっていたので少し見学をさせてもらいました。生徒のアメリカ人は5人。

先生は外部から雇ったAさんという女性。1ステップ終了とは、私なんかが中学1年生で習った英語のレベルを日本語でマスターするという感じでした。
更にひらがなとカタカナ、それに漢字を20文字覚えるというもので、これを60時間のクラスレッスンと自習でやったとは、みんな良く頑張ったと感じました。

クラスを聞いていると、生徒の一人が、日本に出張をした時に手に入れたファーストフードの宣伝パンフレットを持ってきており、その中に書いてある、「パリッとおいしい爽やかな味、、、。」、という部分の、「パリッ」がわからないという事を話題にしておりました。
先生は擬音語について日本語と英語の違いを、わかり易く説明をしておりました。日本語のパリッは英語では、「CRUNCH」と言うそうで、日本人には全くピンときません。犬の鳴き声の「BOW−WOW」は何となくわかりますが、、、。
クラスが終わった後、先生・生徒の6人とマネージメントの4人の10人で、日本語の勉強について、我々マネージメント層が期待する事についてフリーディスカッションを行いました。

アメリカ人サイドのマネージメントからは、早く実用レベルに達して、日本とのコミニケーションがアメリカ人でも自由にできるようになる事、そして日本語を勉強する事による効果を見える形で出せ、が強調されました。
またこれによって、日本人の駐在員を減らして、アメリカの会社としてもっと独立した存在とすべきである、という意見もありました。(いつも難題を持ちこむ日本人は、彼らにとってはうっとおしい存在です。)

ここに参加したマネージメントは私を入れて4人。アメリカ人3人は、学生時代も含めて全くと言っていい程、外国語というものを勉強したことがない連中。
ですからはっきり言って、外国語を勉強する大変さ、外国語をマスターする事によって何が得られるかを体験していない連中です。彼らに外国語を勉強している社員の気持ちがわかるとは思えませんでした。
私は次のように述べておきました。

「私は、何らかの形で学生時代を含めて15年くらい英語を勉強してきました。それでこのレベルですから、きっと外国語を覚える才能がないのだと思います。」

「外国語を勉強するという事は、単にコミニーケーションの道具として、これを勉強するだけではなりません。今ここには日本人の駐在員がXX名いますが、これの人件費で通訳をXX人雇うことができます。日本人の駐在員を通訳に置きかえれば、今と同じような仕事が皆さんでできると思いますか?」

「できないという人が多いですね。この理由をいくつか考えて下さい。仕事をうまくやるためには言葉の問題を解決するだけではありません。もちろん日本語ができればもっとスムーズに仕事ができるとは思いますが。それはほんの一つの理由です。」

「重要な事は、外国語の習得を通じてその国の文化を知ることです。外国の文化を知ったからと言って、それが直ぐに目に見える形で仕事の成果には現れてきません。
しかし、仕事は人と人の繋がりのなかでやるわけで、相手の文化を知るとその外国人との目に見えない距離が縮まります。これが仕事をうまくやる秘訣の一つです。
みなさんが日本語を覚えるという事は、皆さんの方から日本人に寄っていく事で、これは多くの日本人が歓迎をすると思います。」

「飛行機が空を飛ぶには、先ずエンジンを始動し、滑走路の端まで地上滑走をして、滑走路の上でエンジンを全開、そして離陸をします。皆さんは今、どの当たりですか?滑走路の端まで来たところかな?」

「とにかく、私は皆さんの日本語の勉強について大いに賛成です。私も日本語の先生の一人として、皆さんをサポートします。」

ちょっと格好つけ過ぎでしたが、こんなスピーチをたどたどしい英語でしておきました。久しぶりに、アメリカ人から大きな拍手をもらいました。英語でしゃべって、アメリカ人から拍手をもらうって、大変なんですよ。ちょっと嬉しかった。
この後、クラスの先生の外部講師のA女史と少し、話しをしました。彼女は主として大学で日本語を教えているそうで、企業で日本語を教えるのはあまりないと言っていました。

「学生に日本語を教えて、使い物になるレベルになれる人は何%くらいいますか?」
一番気になっている事を聞いてみました。「いません。」、これが彼女の答えでした。

「アメリカ人にとって日本語を習得するというのは容易ではないという事と、やはり言葉はその国に行って生活の中で毎日使わないとダメだというかも知れません。」

それと密かな私の持論である、「カラオケのうまい人は外国語会話の上達が早い。」というのを冗談に言ってみましたら、彼女「????」。
「イエ、耳から音を入れて、それを脳で感じて、次に声に出す。外国語の会話も脳の中の似たような回路を使っているのではないかと思いまして。」

Aさん、英語うまいから、きっとカラオケうまくなりますよ。イエ、A女史は既にカラオケの達人かも知れません。(うまい、ヘタは発声とかではなく、リズムに乗れているかどうかをここでは言っています。)。

ちなみに私のカラオケは、話しにならないレベルで、ヘタクソ、です。そんな訳で、私は英語もちっとも上達しません。
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