02−01−24 社内研修
社内研修。社内か社外から講師が来て、研修を受ける側は学校の生徒のように机の前に座って、講師の話を聞き、時々質問をされて、資料をどっともらって、時には宿題を出される、こんな形を想像します。
24日、25日は私の部門のマネージャー以上25名(!)がある場所に集合して、研修を受ける日です。

私の部門は全部で300名、私が担当している部分は約80名、ここからも私を含めて5名が参加です。
場所はコロンバスから東に50kmほど行ったNew Albanyという小さな町にあるリゾートロッジです。私は前日の仕事が深夜になったので、朝8時から開始のところを10時頃からの参加となりました。
ロッジは結構な規模で、早速会議室へ。会議室と言っても暖炉とシャンデリアのあるリビングルーム風のしゃれた部屋です。既に研修は始まっておりましたが、午前中は来期の部門としての方針説明。アメリカ人のTさんがでっかい声でしゃべりまくっておりました。

2時間ほどしてから食事。食事もこの会議室です。大きなワゴンで食べ物と食器が廊下に運ばれて来るので、これを自分の好きなものを皿に盛る、つまり日本で言うところの「バイキング」形式、こちらで言うところの「バッフェ」形式です。
午後からは研修の開始。
すばらしい環境のリゾートロッジです
研修は別の部屋で、何をやるかと言えば予め実施してあった性格判断のデータ−をもとに外部講師が行いました。
性格判断とはアンケートに基ずき、個人宛てに予め結果が配布されており、4つのタイプに分類されております。この個人宛ての結果はみんなに前で公表され、これもアメリカらしいオープンなところです。

性格判断の分類は
D(Dominance):支配的
I(Influencing):他への影響を与えるタイプ、リーダー的?
S(Steading):着実、堅実型
C(Compliance):追従型

の4つで、25人がそれぞれのグループになって、先ず自分のグループのタイプの特徴を書き、次に自分のタイプから見た他のタイプの特徴を書きそれぞれが発表。
アメリカ人らしく、ユーモアたっぷりの発表です。Iタイプのグループから、
「SってSlowのSかい?」なんてヤジが飛ぶと
「何言ってだい。SexyのSさ。」なんて調子です。

次は各タイプの人がパーティーの案内を書くとどうなるか?という内容で自分のグループ以外のタイプの書き方を想定して書きます。私はSだったので、みんなで考えてD、I、Cの連中はこういう書き方をする、というのを作って発表しました。

目的はわかるとおり、自分以外のタイプは何を重視するか、を知るところにある訳です。これに講師が極めて適切にアドバイスを与えながら、みんなを引っ張ていくのです。そして最後に絨毯の上に車座になって、一人ひとりの意見を出し合うという形式です。
何がイイ、何が悪いと言う事はないのです。

この日の夜は食事の後に更にもう一つ、時間内で工作をするという内容の研修がありました。これは限られた材料で決められた模型を時間内に作るというものでした。発送の多様性を再発見するための研修で、やはり祭儀は車座の意見交換で終わりました。
翌日も様々な研修。いずれも単純な内容ですが、非常に奥の深い内容です。たとえばコミニケーションの体験研修。
これは次の3人が1グループを作り、さらにそのグループ2つが共同作業をやるという研修です。

・目隠しをした人:この人だけが作業をやります。
・しゃべれない人:作業をしてはいけないが、目隠しをした人の身体に触れる事ができます。
・言葉だけを喋ることができる人:作業も、後の2人にも近づく事はできません。

どのようにすれば作業がうまくいくのか、3人のチームワークにかかってくるのですが、目隠しをした作業者に動きの指示だけではなく、目的を伝える事の重要さとか、互いの信頼関係をどのように築くのか、という大きなマネージメントとしての重要性を体験させるという意味があるのです。

難しい、日常の「仕事」とは全くかけ離れた、子供の遊びのような研修。
しかしその中で再確認、体得をすべき内容は非常に示唆に富んだものです。

研修のプロである、コンサルタントの会社の講師がこれらの「お遊び」を、お遊びではなく、上級管理職も含む連中を相手にリーディングしていく研修には感心をする以外ありませんでした。

研修の内容は、個人の持つ専門領域の知識、経験に全く依存しない内容で、これがミソではないかと思いました。

もし「この営業所にはこのようなタイプの人間がおり、、、、資金はこれだけで、、、、売上を2倍にするにはどうしたらいいか?」
なんて内容ですと、個人の持つ専門領域の「知識」の依存領域が大きく占めるようになり、たとえば本来の目的が「部下のモラル向上の重要性の認識。」というところにあったとしても、この狙いがぼやけてしまう恐れがあるのです。

こんな研修もありました。
まっすぐに立ってそのまま後ろに倒れる、それを別な人が支える。そしてこの距離を段々広くしていくのです。倒れる方は、ちゃんと受けてもらえるか、非常に不安です。つまり倒れる瞬間に何を考えるか?自分の体重とか、相手の受け止める体力とか色々とと考え、もし失敗したらオレは全身打撲になる、結局は「信頼」するしかないのですが、では信頼とは何か?という点をワイワイ議論するのです。
議論は必ず車座で、中には肘をついて寝転んでいる連中もおりましたが、議論と言うよりも自分の考えを言う、といった方が正しいかも知れません。

私は今まで「研修」と呼ばれるものには数多く参加してきましたが、アメリカ人といっしょの研修は初めてでした。
やる事は小学生がやると喜びそうな事ばっかり。そのお遊びの中から、それぞれの立場で本質をつきとめる、つまり「考えさせる」方法には感心。

多分、日本でこれをやったら、「模型を作って、何を騒いでるのだ!」、と間違いなく、一蹴されそうな方法。
それに車座になって寝転んで、ああでもない、こうでもない、と自分の意見の発表をする。一見、研修とは程遠い感じ。実は本質は極めて高度なところにある、これを感じざるを得ませんでした。

「富士山ろくでの地獄の研修」、「1週間であなたの会社の管理職を変えます」、とかいうキャッチフレーズの研修請負会社の宣伝を、日本にいた時にテレビで見たことがあります。
研修で駅前で大声でどなったり、講師に頭をコツかれ、叱られながら、目を吊り上げて研修を受ける人達。

また新入社員を自衛隊で教育させる日本企業。
アメリカで新入社員を、合衆国陸軍で研修させる会社があるかどうか、今度アメリカ人に聞いてみます。

日本人の参加は私を含めて4人。やはり障害は英語でした。これだけはどうしようもありませんでした。数字をつかうゲームだけは抜群の結果を出しますが、それに基づく発表。
日本人駐在者にとっては、大いにフラストレーションの溜まった研修でもありました。
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