01−10−31 コロンバスの110番対応 |
市民の普段の治安を守るのは警察の役割です。 かつては日本の警察の優秀さは世界一と言われ、よくアメリカの警察と事件の検挙率の比較なんかがされておりました。アメリカの警察はそんなにだらしないのかな? いつだったか、世の中で信頼できる人(組織)は何ですか?というアメリカ人のアンケート結果を見た記憶がありますが、1位が牧師さん、確か2位が警察、3位だったか4位が軍となっていたのを記憶しています。 あれ、日本の警察に言わせるとアメリカの警察はあんまりアテにならない事になっていますが、実際のアメリカ人の印象は違うようです。 この日の夜ベッドに入ったのが11時40分頃、うとうと始めた時でした。玄関のチャイムがピンポーン! エー、誰だこんな時間に家に来るのは? ここはアメリカです。こんな夜中に他人の家に来て、家の中から拳銃で射殺されても文句の言えない国です。 |
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しばらくじっとしていると、今度はドアーを激しくノック。このたたき方は日本人ではありません。 日本人のノックとアメリカ人のノックは明らかに違うのです。アメリカ人は女性でも非常に激しく、ドンドンドンとかなりの力を入れてたたく事がこちらに来てわかりました。 玄関に出てドアーの覗き穴から外を見ると、人影は見えません。大きな車が1台家の前に止まっており、暗くてシルエットしかわかりません。 さあ、どうしよう。ライフルを持って来て弾をこめようか、一瞬頭の中をそんな考えがよぎりましたが、止めました。 こんな時間に家に来るのは不審者以外に考えられません。 が、思い切ってドアーを少しだけ開けてみる事にしました。誰もおりません。すると、更にもう1台車が来るではありませんか。2台目の車は街灯の光が少しだけ当たる位置に停車したので、パトカーである事がすぐにわかりました。 警官が腰に手を当ててこちらに近づいて来ます。 「今家のドアーをノックしましたか?」 自分でもびっくりするくらい大きな声で警官に向かって叫びました。 警官は何も答えずに玄関まで来て、 「911のコールがあったので来ました。911をコールしましたか?」 えー、911なんかコールしておりません。911とは日本で言うとところの110番なのです。するとバックヤードの方から懐中電灯を持った、大きな体の警官が現れました。この警官が1台目のパトカーの警官で、彼がドアーをノックしたようです。 「本当に911をコールしていませんか。何も異常はないのですか?」 警官はしつこく聞きますが、911なんか絶対にコールした覚えはないのです。 |
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「ラストネームは何と言いますか。」 「ナカニシです。本当に911のコールが私の家からあったのですか。」 「イエス。」 アメリカは911をコールすると、どこの家からコールしているのか直ちに逆探知できるようになっており、何もしゃべらなくても警察が行動を開始するのです。 「本当に大丈夫ですね。」 何回も念を押して2人の警官は首をひねりながら、パトカーに乗って家の前から去っていきました。 時間が時間なので再びベッドに横になりましたが、なかなか寝付けません。誰が911をコールしたのだろう。自分もカミさんも911なんてコールしておりません。警察の間違いなのかな。 と考えているうちに、あっと気が付きました。 そう言えば寝る前にカミさんのPCの横に置いてある電話機のコードがやけにからまっているのに気が付き、これを直すために手話機を持っていじくり回していたのです。 この電話機は受話器にボタンが付いているタイプで、私の机に置いてある電話機も同じなのです。 ![]() この時にボタンを押してしまった。しかも運悪く、「911」と触ってしまった。これしか考えられません。時間的にも一致します。 そうだ、これだ、これだ、これしかない。でもよくもまあ、「911」と知らず知らずのうちに、ボタンを押してしまったものだと感心をしているうちに寝入ってしまいました。 電話機をいじくってから警官がドアーをノックするまでの時間は恐らく、5−6分。つまり司令所で逆探知して、無線でパトカーに連絡して家に到着するまでの全部の時間がこれだけなのです。 もちろん、パトカーがどこにいたのかで時間は大きく違ってくると思いますが、それにしても何というスピード、びっくりするしかありません。 911をコールしたら、10分以内に絶対にパトカーが来る。アメリカ人の言っていた事は本当でした。 しかもアメリカではでは何もしゃべらなくてもいいのです。ダイヤルで「911」でけを回せばパトカーがすっ飛んで来るのです。 よく考えてみると、こんなに心強い事はありません。もし何かがあれば電話機のボタンを3つ押すだけで、でかい拳銃をぶら下げた、パトカーの中にはショットガンを持ったパトカーがすっ飛んでくるのです。 |
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日本に居た時の事。私はアメリカに来る前にはマンションの12階に住んでいました。 ある日の事、外で大きな車がものすごいブレーキをかける音がしたので、窓から下を見ると、何と車が自転車と人を轢いて、人が倒れております。 どこからかはわかりませんが、道路はみるみるうちに血に染まっていくのが見えました。 私は110番に連絡、窓の外から様子を見ておりました。5分、10分しても誰もきません。救急車も来ません。15分、私はもう一度110番をしました。 結局20分ほどして救急車がまず到着、その後お巡りさんが1人、自転車を漕いで到着しました。 住んでいた場所は決して田舎ではありません。歩いて5分の所には大きな病院、12分のところには大きな派出所。12階建てのマンションが、10棟以上、その他商店街とかが一杯ある、東京の池袋まで電車で25分の、大きな町です。 私はその時思いました。あー、これでは助かるものも助からないな。倒れていたのは若い主婦のようで、運転していた人も主婦のような感じの人でした。 |
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更にこのマンションに住んでいたとき、私の下の娘が交通事故に遭いました。 会社にカミさんから電話がかかってきて、もうびっくりした私はどこの病院に娘がかつぎ込まれたのか、それを確認する前に電話を切って、とにかく会社から飛び出しました。 会社のエレベーターの遅く感じたこと。 事故のあった駅で降り、どこで事故があって、どこの病院にかつぎ込まれたのか、確認をしようと警察に電話をしました。その時の警官の返事。 「何か事故があったらしのは聞いている。大したことはないらしい。とにかく今忙しいのでかまっていられない。今大事件が起きているのだから!」 もう私は怒りを越えて、何も答える事ができませんでした。 幸いに娘は5mもはねとばされ、自転車をぐちゃぐちゃにされる程の事故にもかかわらず、無傷でした・ それから4時間後、夜の9時頃警察から現場検証をするので、現場に来て欲しいという連絡がありました。 以下、警官の事情聴取の様子。 「ここを通ったのはどうして?」 「習字の塾に行く途中でした。」 「塾は何時から始まるの?」 「5時45分から。」 「事故のあったのは5時半だから急いでいたよね?」 「はい」 「信号もあまり見る暇なかったんじゃないかな?」 「、、、、、」 「外も暗いし、急いでいたし、それにここ坂道だよね、自転車のスピードでちゃうよね?」 「はい。」 小学6年生の娘は、警官の巧みな誘導尋問に見事にひっかかってしまいました。 結局は信号無視の疑いあり、交差点をかなりのスピードで通り過ごしたという事になりました。娘をはねた車は現場を逃走、目撃者もはっきりしませんでした。 最後にその警官は、 「はっきり言います。この事故は犯人は捕まらないと思って下さい。何かありましたらここに連絡を下さい。」 と言ってパトカーで帰っていきました。 事故には違いないが、娘が無傷だった事、娘にも過失があるとの証言を得たこと、それに多分、「忙しいから。」犯人探しはしません、という宣誓だったのです。 |
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市民を守る警察、これは日本もアメリカも同じはずです。私の今回の経験は「何か違う」ものを感じます。 確かにアメリカの警察は犯罪の検挙率は低いかも知れませんが、これだけ国土が広く戸籍、住民票の制度がない国ですから、もし日本の警察がアメリカと同じ土俵で勝負したらどうなるのでしょうか。 日常の生活の中で密着した警察活動、見える警察官、頼りになるという印象を与えてくれる警察という面では何かアメリカの方に軍配をあげたい感じがします。 もちろん、アメリカの警察にはものすごい人種差別があるのですが、これとて日本も同じです。 ちなみにアメリカの現場の警察官の給料は学校の先生と同じで、信じられないくらいに安いのです。27−28歳の巡査の年収は18000ドル、日本円で200万円ちょっと。あまりに安いので会社のアメリカ人に聞いたら、イエスの返事でした。 今回のハプニングでアメリカ人が世の中で信頼する人(組織)の2番目に警察をあげる理由が何となくわかったような気がしました。ちょっと単純ですか? |
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