01−10−10 出征する兵士達
今週は月曜から歯医者通い。
医院の待合室は日本と同じで雑誌や新聞が置いてあります。私は普段はこのような場所では雑誌、新聞を見ない方なのですが、今アメリカは非常事態。今日はコロンバスディスパッチという新聞を手にとって読んでみました。

私の家から車で20分くらいのところにデラウエアーという市があり、そこで行われた州兵の召集の模様が写真入りで書かれているのが目に入ったからです。
州兵の召集は州知事の権限で行われ、オハイオにもたくさんの主として陸空軍の施設があります。組織はアメリカ合衆国の軍の一部、というよりもそのもので、2線部隊という位置づけでしょうか。たとえば州空軍の戦闘機などはF4ファントムとかを使っており、一線機ではないようです。

戦闘服を着た兵士達は、実は昨日までは銀行員だったり、工場の従業員だったりの普通の市民なのです。
子どもを抱いて傍では奥さんが泣いて見送っている写真。彼らは一旦ケンタッキーの陸軍の訓練隊に送られ、そこで訓練をするのです。

道路にはトラックが何十台も列んでおり、それに乗って行くのです。沿道には家族の他に小学生、中学生が星条旗を手に持ち、見送っている写真もありました。

「これらの小学生達は今何が起きて、我々アメリカ人が何をしようとしているのかわからないだろう。何故手に星条旗を持って、これらの兵士を見送らなくてはならないか、わかっていないだろう。」

「しかし、今は小学生であるこの子達は大きくなってその理由を知ったとき、自分の親や兄弟がアメリカ合衆国のために戦ったという事に対し、涙を流して感激をするだろう。」


新聞には記者がこのように書いておりました。
日本は昔、召集を受けた兵士を町の人が総出でバンザイ三唱で見送ったと親から聞いたり、また映画で見たことがあります。どこの国でも出征兵士を送る姿は同じなのでしょうか。

デラウエアーの州兵の出征の記事と写真を見て、改めてアメリカは今「戦争」をしているという事を強く感じました。
昨日の出勤途中。いつものようにラジオを聴きながらの30分のドライブですが、そこでも州兵の召集に関してのニュースをやっておりました。
ラジオは新聞とかと違い私の場合、内容の理解はかなり制限を受ける、つまりアナウンサーの言葉を十分に理解できるまでのヒアリングの能力はないのですが、興味深い事を報道しておりました。

それはシンシナティーの空港警備に当たっている、ある州兵のインタビューなのですが、次のような事を言っておりました。
「私は現役の軍務の後、志願をして州兵の予備役になった。今回のテロ事件に対し、私は召集を受けたので自分のベストを尽くして任務を遂行する。」

「しかし家族の事が心配。軍の任務についている間の給料は1300ドル。子どもは3人おり、家内は働いていない。」
「1300ドルでは家にいる家族が、安心して生活をするには全く足りない。今の任務がいつまで続くのかわからないし、任務から戻ったとき、元の職場に戻れるか保証はない。」


えっ、アメリカの予備役の兵隊さんは召集を受けて職場を離れたら、それまでの職場をクビになるの?
以外でした。アメリカ人にこの事を聞いたところ、クビにするか、再び働く事ができるかはその会社とか組織によって様々なのだそうです。

今日歯医者で読んだ新聞にも、XX銀行は出征兵士に対しては再就職を保証する、XXカンパニーはそれまでの給与と軍から支給される給与の差額を支払う、とかの各会社のコメントが載っておりました。
つまり記事になるという事は例外だと言えるのでしょうか。

国のために軍務に就くという事はやはりこういう事なのか。ラジオを聴いたときは「?」という程度で聞き流しておりましたが、アメリカ国民にとっては戦争をするというのは自分の家族の生活までもすぐに影響を与える事なのです。
その前に、国家が国民に対して「命をよこせ」というのが戦争で、そのような人が私の住んでいる隣にもいる可能性があるのです。
実は私の会社からも、やはり予備役の召集を受けた従業員が7人おります。
私の会社はこれらの従業員に対しては、それまでの給料を全額払う、そして職場への復帰を保証するという方針になっている事を知りました。

日本は国際貢献のために「人を出す」という事を考えているようですが、アメリカの「人を出す」というのは即、一般市民の生活そのものに大きな影響を与える事なのです。
テロ撲滅のための戦争は、政治家と軍隊がやっているどこかでの出来事ではなく、アメリカでは「自分の出来事」です。
ちなみにアメリカ合衆国の陸・海・空・海兵隊の4軍170万人、そして州兵の全ては志願兵で成り立っております。

アメリカですからいろいろな考えを持つ人が日本より多いのも事実。でも本気になると政治家も、国民も、マスコミも一丸となるアメリカ。怖いという人もおります。

大いに考えさせられます。
inserted by FC2 system