99−10−18 陪審員休暇
アメリカの裁判制度は陪審員裁判で、裁判官が判決をするのではありません。陪審員がその訴訟なりの裁判に参加して票決を行い、これによってその判決を行うのです。詳しい中身は良く知りません。が、ではその陪審員とは誰がなるのでしょうか。

実は陪審員は普通の市民が、無作為に選ばれてある一定の期間なるのです。ですから学生もいれば主婦もいるし、今失業中の人もどこかの社長さんもいるし、とにかくある一定以上の資格(主として年齢)を持っていればアメリカ人は誰でも陪審員に選ばれる可能性があります。

これに選ばれると、基本的に「国民の義務」として裁判所に最低2週間とかそれ以上カンズメになります。これがかなり長い期間断続的に続く事もあるそうです。そして義務ですから、行かなくてはいけません。どうしても行けない人、例えば病気とかその他の理由がある人はきちんとその旨を届け出る必要があるそうです。
私の会社のアメリカ人の社員も当然、この陪審員の呼び出しが掛かってきます。最近誰々の顔を見ないけど、どうしたのと聞くと「JURY DUTY(陪審員としての召集に応じる事)」だ、という事をたまに聞きます。先月も職場の主だったメンバーの月間スケジュールを見ていたら、1名が「JURY DUTY」で2週間職場に来ないというようになっておりました。

ありゃー、彼しかできない仕事があり、しかも緊急で片付けなくてはならないのに。参ったナーと思っていたところ今日は会社にひょっこり顔を出しているではありませんか。
「陪審員で裁判所にいなくてはならないのじゃ?」
「イヤー、今日の午後は家に帰ってもいいと言われたので。仕事が一杯溜まっているので会社に来ました。」
こんなケースは珍しいようですが、とにかくこれ幸いにミーティングを開始、仕事の段取りを済ませました。

「何かあったら夜電話を下さい。先週もずっとカルフォルニアと夜コンタクトして家で仕事をしておりました。」
彼は自分の仕事を家でやっていたのです。こようなタイプの人はアメリカでは例外のような気がします。

陪審員として参加した裁判の印象を聞いてみました。彼が参加した裁判所はコロンバスのダウンタウンの裁判所で、殺人傷害事件の裁判に2件参加し、その内の1件は20歳の男が、親を射殺したものだと言っておりました。今度彼が出社してきたら詳しく聞いてみましょう。

この事件はあった事自体私は知りませんでしたので、新聞か何かに記事になったかどうか聞いたところ、地元の新聞に小さく出ただけだと言っておりました。普通の(?)殺人事件はもうアメリカではニュースバリューはないのです。日本もそのような傾向があるような気がしますが。
アメリカでは弁護士も検事も、これら一般の人々である陪審員に対して、いかにわかりやすく説明主張をするかがその人の腕であり、その時の陪審員の考え方で判決が大きく変わるそうです。
ですから、例えば大きな企業が個人から訴えられた時、その企業に責任があまりなくても、この個人はとにかく被害があったようだし企業は支払い能力がありそうだから、まあ賠償金を払ってやったら、みたいな考え方で判決が決まるケースが多いそうです。

私の職場には約70名がおり、過去3年間で丁度3名が陪審員の召集に応じております。多いのか少ないのか、よくわかりません。

世の中の事件を「お上」とか「専門家」が裁くのではなく、一般の市民が裁く、つまりオレが裁くというのがアメリカです。

これはどんな大事件、国がひっくり返るような大訴訟も同じです。日本でこれをやったらどうなるでしょうか。興味深いところです
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