テレビとオハイオ駐在員
テレビ漬でした、私も!

日本にいるとき、私はよくテレビを見ていました。
朝起きてニュース、帰宅して再びニュース、ドキュメンタリー、ドラマ、それにお笑い番組。(私は吉本新喜劇のファンでもありまして、吉本新喜劇がNY公演をやると聞いたときは、真剣に行ってみようかと思ったくらいです。)

それはともかく、今では思い出せませんが、いったい1週間に何時間テレビを見ていたでしょうか。チャンネルのコントローラーは私の独占物で、私以外は触れない、神聖なものでありました。(いつものように誇大表現です!)

ところがオハイオに来た私は、テレビを全く見ない生活になりました。
というよりもテレビ受信機がなかった。
正確に言うと家族が来るまでの1年間ですが、家族が来たら日本のテレビを持って来るのだし、こちらで新しく買っても2台は必要ないだろう、まあ仕方ないか、というのも理由でした。

ここはアメリカ、放送は英語でしかやられませんから、どうせ見ても言葉がよくわからないから面白くないだろうというのも大きな理由でした。
会社で英語漬け、家に帰ってからも英語のテレビじゃリラックスできない、そういう考えもありました。
インターナショナルチャンネル

ではオハイオでは日本語のテレビは見ることができないか?というとそんな事はありません。
アメリカはケーブルテレビのが主体で、電波による放送もあるにはあるのですが、これもケーブルによって家庭に供給されることが多いのです。
ですからケーブルが供給されていない
、畑のど真ん中の家とかに行かないとテレビのアンテナを家の横に建てているのは見かけません。

このケーブルテレビの中にインターナショナルチャンネルというのがあって、ここではイタリー語の番組、スペイン語の番組、中国語の番組、ギリシャ語の番組等をやっており、その中に日本語の番組もあるのです。
日本語の放送は1日1時間、フジテレビのニュースだけです。

家族が来てテレビ受信機を持ってきた当初は、室内アンテナでコロンバスのローカル放送を見れるようにしておりました。見るのは天気予報と、たまにCNNのニュース。
天気予報は生活に密着しており、特に冬は雪が何インチ積もるとか、温度は何度になるとかを知っておかないと毎日の生活に支障をきたすこともあるからです。

でもこれだけでは面白くない。
日本語放送は1日1時間だけど、ケーブルテレビを契約して日本語の放送を見れるようにしました。放送は昼間に行われるので、私は見ることができないため、録画をしてもらって夜遅く帰宅してから、これを見ると言うテレビ生活です。

これがオハイオに来て3年目くらいの時です。
テレビを見るのが面倒くさい?!

家に帰って、録画したニュースを一杯やりながら見る。
録画ですからコマーシャルが出ると、早送り。興味のない部分は早送り。結局1時間の放送で、実際に見るのは20分か、多くて30分くらい。

ケーブルテレビは実にいろいろな番組をやっており、更に番組ごとにお金を払えば最新の映画とか、いろいろな特殊なジャンルの番組を見ることができます。費用は基本的な契約と、映画とかの専用チャンネルをいくつか入れて、月50ドル。

結局私はここ3年間、この録画してもらったニュース以外はテレビをあまり見なくなりました。
1ヶ月に1回くらい何かの拍子に、アメリカの番組、映画を見ることがありますが、これも最後まで見た事はあまりありません。
途中で飽きてしまうし、テレビの前に座っているのが苦痛なのです。

1.言葉。
会社では英語でストレス溜まって、家に帰ってまで英語のテレビではストレスが解消できない。
やはり英語は聞き流すというのは私にはできないのです。
つい、じーっと聞いて、「何を言っているのだろう?ン、今の言い方は?」、とか神経を使ってしまうのです。時には辞書なんかを引いてしまう事さえありました。

2.宣伝。(コマーシャルとも言います。)
アメリカのテレビの宣伝は非常に長い。日本は1つの宣伝が確か15秒か20秒だったと思いますが、こちらは1分、中には2分というのもザラ。
これを5分とか7分連続でやられるとたまったものではありません。そんなウマくもないピザの宣伝1分もやるな、オレはちゃんと味知ってるぞ。

3.時間。
駐在社員というのは、どうしても日本にいた時よりも長時間勤務になり、毎日の生活に時間的な余裕がありません。
どかっとテレビの前に座って、画面を長時間見ると言う時間そのものが少ないのです。

4.吉本新喜劇がない。
これはリラックスできる番組がない、という意味です。
インターナショナルチャンネルの日本語はニュースだけ。アメリカ映画は深刻そうなもの、あるいは戦争映画ばっかり。
英語のニュースは早口でアナウンサーがまくし立てているだけ。

日本のようにフリップを使って、わかりやすく説明するなんてのは、絶対にありません。男も女もアナウンサーは目をひん剥いて、ただひたすらにしゃべるだけ。
お笑い番組はあるのですが、外国人には絶対にわかりません。吉本のギャグが、アメリカ人には絶対にわからないのと同じ。(日本人でもわからない人がいるくらいですから。)

私の場合アメリカでテレビを見ると言うのは、一種の苦痛に変わってしまい、もう全くと言っていいほどに見なくなってしまったのです。
JAPAN−TV

テレビがない生活。(全くないという訳ではありませんが。)これを続けて7年目。
時間があると本を読み、日本の友人などから来るメールに返事を出す、昼寝をする、オハイオの自然を満喫するために車でドライブに出かける、以前の日本での生活がウソのようになりました。

ある日、会社で駐在生活10年目のKさんと久し振り出会いました。
Kさんは幼稚園の時に連れてきた息子さんが高校生になっており、これから先どうするかいろいろと悩みを打ち明けてくれました。小学校からの教育を全てアメリカで受けているのですが、アメリカ人なっているかというと、そうでもない。完璧な日本人でもないのも明らか。
彼は、「どこにもいない、新人類だ。」、という表現をしておりました。

その彼が、やはり息子さんに日本の事を少しでも教えたい、日本の事を知ってもらいたいという理由で、「JAPAN−TV」、の契約をしたと言うのです。
「契約してよかった。私が息子に日本の事を教えるにはいろいろと限界がある。でも日本のテレビを見れるようになって、息子は日本に対する興味をうんと持ち、知識も広がったような気がする。」

学校ではアメリカの教育を受けていますが、両親から日本人としての家庭教育を受ける、顔は日本人。言葉は日本語より英語の方が格段に得意。毎年に日本に連れて行くそうですが、息子さんは非常に居心地が悪そうで、早くアメリカに帰りたいと言うそうです。

私の今のアメリカ生活では、日本のテレビからの情報がないと困るというわけではありません。
が、ナゼかこの話を聞いたあと日本語のテレビを自由に見てみたい、と思うようになってしまったのです。
それにもう一つ、家にいるカミさんが言葉もよくわからないのに、ずっとアメリカの映画とかを見ているのがかわいそうになっていたのです。

じゃ、オレも見たいことだし、日本のテレビを見れるようにするか。7年目にしてJAPANーTVという日本語の放送を見るための契約をする事にしました。
やっぱりそんなに見ないのです

コロンバスで日本語テレビを見るにはパラボラアンテナを設置する必要があります。
ところが基本的に私のところではパラボラアンテナの設置ができない規則になっています。家を買うときにはっきりと書いてありました。

でもパラボラアンテナと言っても直径70cmくらいの小さなアンテナ。近所の日本人の家が先ず前例を作ってくれました。
殆ど目立ちません。この方の家は賃貸で、アンテナの設置を不動産屋が許可したしたという事は、オレも問題ないんじゃないか、という解釈で勝手に契約をしました。

費用は何かのキャンペーンをやっていて、アンテナその他の設備、工事費コミで約80ドル。毎月の聴取料金は30ドル。
工事は1時間くらいで終わって帰って行ったそうです。

その日から日本のNHKを中心とする民放のミックスの日本語放送が24時間見れるようになりました。
確かに日本語放送はいいものです。
聞き流し(見流し?)ができる。100%中身が理解できます。

でも思ったより見ないのです。
というより私は以前と同じように、殆ど見ないのです。パラボラアンテナまで設置をして24時間自由に、「日本語テレビ」、が見れるのですが、見たいと思わないのです。不思議です。

どうしてなのでしょう。理由をちょっとだけ考えてみました。
恐らく私の生活パターンの中から、「テレビを見る」、という習慣が全くなくなっているのが一つの理由ではないかと思います。カミさんは見るかなー、と思っていたのにこれもあまり見ない。

テレビはファミリィールームに置いてあります。これはダイニングキッチンに続いていて、普段の生活と密着している場所です。スイッチは一応入れるのですが、見ない。

テレビのない生活、7年目。日本では考えられないですよね。テレビを見ないのは英語のせい、と思っておりました。
でも理由は英語なんかではなかったのです。
今ではテレビなんかなくても何の不自由も感じない、オハイオ駐在員になり切っております。
inserted by FC2 system