オハイオの冬 : 寒いけれど快適、そして危険
10月から雪が降ります

私は日本の中部地方で生まれ、東京より北で住んだことがありません。もちろんうんと北に「行った事はありますが、そこに根を生やして住んだ経験はないのです。

オハイオの緯度は青森県のちょっと南、北緯40度付近です。冬のオハイオは結構厳しく、マイナス20度近くまで気温が下がる事は珍しくなく、1ー2月はむしろ0度以上になる事の方が希です。

今までのオハイオ生活の中で一番早く雪が降ったのは10月の25日前後というのがあります。

何とか暖かくなったなー、と感じるのが4月になってからですから、1年の丸半分は寒い季節です。

冬の間は緑もなく、5月になって一斉に全ての木に緑の葉っぱがつき、花が咲き、春を迎える、北国の人が心から春を待ち望む、気持ちがこちらに来て初めてわかりました。
家の中の生活

オハイオはマイナス20度以下になり冬は寒いよ、というと「大変ですね」という返事が返ってきますが、建物の中は快適でむしろ東京より南の日本の生活より快適なのです。
これで全室の暖房をします
普通の住宅は全室、トイレ、地下室に至るまで暖房を入れます。ですから家の中での服装は夏と全く変わりません。私は家の中では夏も冬も半袖のシャツ1枚で過ごします。

しかし外がマイナス20度以下になると、私の家のような安普請のポンコツ住宅では部屋によっては、プラス20度を切る部屋があるので、そこに行くときはもう1枚何かを着なくてはいけませんが、普通の家ではそんな事はありません。

暖房はガスで行うのが多いようです。暖房設備は地下室にあり、部屋の中の温度センサーでセットされた温度に一定に保つようにコントロールされております。
真冬にこの設備が壊れたり、ガスが来なかったりすると寒いというよりも、危険です。

このような事態になって直ぐに修理が出来ない場合は、石油ストーブを燃やして一杯着込んで一部屋で修理屋が来るのを待つか、近くのホテルにでも逃げ込むしか手はありません。

暖房設備が順調に働いているうちはいいのですが、故障すると家の中もたちまち外と同じような気温になってしまうのですから凍死する可能性も出てくるのです。

この暖房は冬の間、24時間入れっぱなしです。
水道と下水

私はオハイオに転勤になって最初の1年は単身赴任で、アパートに入っておりました。アパートも暖房は完璧で、部屋の中の快適さに最初は感激しておりました。2月のある日、とうとうマイナス20度を切る日がやってきました。

この時何が起きたかといいますと、下水が流れなくなってしまったのです。具体的に言うと、台所のシンクの水が流れなくなって、溜まる一方、食器を洗う事ができなくなったのです。
つまり部屋から外に出ている下水の配管が、ほんの少し露出しており低温でこれが凍ってしまい流れなくなったのです。

直ぐに管理事務所に連絡をして流れるようにしてもらったのですが、また気温が下がると流れなくなり、大変困った経験があります。
私の部屋は一番隅にあったので、配管工事のまずさからこうなったのでしょうが、今でもあの部屋に入っている住人は困っているかも知れません。

これがトイレになると深刻です。トイレが流れなくなるというのは、その家で住むことができないという事を意味します。
何年か前にマイナス30度近くまで下がった冬の時、トイレの下水が凍ってしまい、友人の家に一時退避したという日本人駐在員がいたそうです。

下水が凍ってしまう家は比較的新しい家に多いそうで、て新しい家は下水の配管の深さが浅いのが原因のようです。つまり新しい家は一種の手抜き工事がやられているという事のようです。

私の家は新しく、しかも安普請ですから間違いなく凍ってしまうと思います。トイレが流れなくなったら、退避して逃げ込み先を考えておく必要がありそうです。

幸いにもまだマイナス30度を以下になる冬は経験しておりません。
学校も会社も休み

冬の朝雪が降っていて気温が低い時、どこの家の子供もテレビの前にかじりつきます。別に朝からマンガの番組を見ているのではありません。
学校が休校になる通知がテレビとラジオで放送されるからです。

休校にするかどうかは市の教育委員会、又は校長先生の判断で決められます。ですから5ー6kmしか離れていない学校でも、片一方は休校、もう一つの学校は普通通り、というケースがあります。
テレビに自分の学校が休校であるというテロップが流れると、私の娘も
「やったー!!」
と大喜びでした。

休校の理由はスクールバスが運行できない事が最大の理由のようです。雪が降っても道路には塩を散布するので、普段のように車はガンガン走れるのですが、これもマイナス15ー17度くらいまで。
これ以下になると塩の効き目がなくなり、道路という道路全てがアイススケート場になってしまいます。
これは会社も同じで、私の会社でも、一定の基準があり、1ー800(トールフリーダイヤル)で会社が休みになるかどうか、確認をする事ができます。
車の運転

何と言っても冬の車の運転は本当に注意を要します。
あっと言う間に10cm、15cmの雪が積もる事があるのですが、主要道路は直ぐに除雪がされ塩が撒かれるので、普通と同じように運転はできます。

一番やっかいなのは、雪の降り始めです。雪の降り始めは除雪も塩の散布も直ぐには間に合いませんから、道路上は雪でガチガチになっており、もうつるつるです。
車はスパイクタイヤは禁止、チェーンなんてのは誰も巻きません。

こんな時でも70kmとか80kmで走るのですから、もうスリル満点、1台ガチャンとやったら何台玉突になるのか想像もできません。
私もフリーウエーで、前を走っている車がそのまま、ポーンととうもろこし畑に突っ込んで行ったのを見たことがあります。1時間走っても車の氷柱は張り付いたまま

夕方にパラパラと雪が降って、それが少し溶け、夜になって気温が下がり道路ご氷で覆われる、これがアイスバーンになる時の典型的なパターンですが、もうこうなると本当にお手上げです。

前後に車のいないのを確かめて、フリーウー上で60kmくらいで走りながらブレーキを踏んでみると、それはもう、気持ちよく車は滑って行きます。

とうもろこし畑に突っ込んで行ったのは、多分こんな事をやってハンドルでも切ったのでしょう。

このような状態ですから、もう冬は事故だらけです。でも車以外の移動手段がない、オハイオ。とにかく
人も荷物も全てが車。

ですから除雪車、塩の散布車による道路の維持体制は強力です。とにかくこれだけ広い地域の無数に走る道路をどうやって維持しているのか不思議なくらいですが、何十cmもの雪が降っても、一旦これが止み、10時間もすると大体の幹線道路は普段と同じように走れるのですから驚きです。
外出禁止令

気温がマイナス20度を切ると普通「外出禁止令」が出ます。これは外で何か事故があっても、警察も誰も助けに行けないからです。道路は塩が効かない、つまりもう移動手段がなくなるのです。

冬になるとアメリカ人は実に良く天気予報を知っております。明日の夕方からは雪になる、とか明日の朝はマイナス何度になる、とか私達に教えてくれます。丁度、日本人が台風シーズンの時に台風の進路に極めて敏感なように。

こちらに来た時の最初の冬に、駐在者の先輩から「携帯電話を持っているか?」と聞かれました。理由は車を運転中に何かの事故を起こした時に助けを呼ぶために必要だというのです。
冬の寒いときはアメリカ人はあまり外出をしません。ピクニックの準備ではありません

会社からの帰宅が遅くなった時の冬、マイナス10度とか20度の中でのフリーウエーの運転は不安を感じる時があります。車は殆ど走っていないし、あるのは回りに広がる凍てつく大地だけなのです。

スリップを起こして道路からとうもろこし畑に突っ込んでしまったら、もう翌朝まで誰にも見つけられないかも知れません。

そんな時は車の中で朝が来るのを只待つしかないのです。そんな時、ガソリンがなくなってエンジンが止まったら、非常に危険な状態になってしまいます。

凍死の可能性大なのです。
ですから冬はこまめにガソリンを補給しておき、何かがあってもエンジンだけは回転させる事のできるようにしておきます。

これ以外に私は11月からは車の中に、毛布、超厚手のジャンパー、それに水とお菓子を入れておくようにしております。大げさに聞こえるかも知れませんが、冬を越せば越すほど、そしてオハイオの広さを知れば知るほど、準備の必要性を感じるのです。
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