東京見物−3
外国に住んでいると、日本にいた時よりも日本に対して敏感になる人と、日本を忘れてしまう人と2種類の人がいるようです。
私は前者の方で、大変敏感になりました。

自分の国の歴史とか、文化とか、以前はあまり気にしなかった事がアメリカでの毎日の生活の中で意識をするようになったのです。つまり「違い」について、それを「何故?」と考えるようになったのです。

そんな訳で、アメリカに来てから日本に行く度に、日本の事を知りたいという変なクセがついてしまいました。
「東京江戸博物館」というのは両国にあり、国技館と隣接しております。
今回の日本への出張も非常に限られた時間しかなかったのですが、ここに行ってみる事にしました。どうも中学生か、ひょっとしたら小学生の修学旅行のコースに入っているようなイメージがありましたが、案の定、中学生の修学旅行にぶつかってしまいました。

確かに展示されているものは一見、中学生の社会科の勉強用という感じがしますが、それは見る側の見方でいくらでも変わり、私にとっては今まで自分の持っていた知識(大したものではないのですが)なりを整理するのに大変役に立ちました。

おそらく東京都が何百億円もかけて作った巨大な建物の中に、歴史研究の大先生達が考え抜いて陳列した多くの品物はやはり見応えがあると感じました。
ここは様々な考え、価値観を持ったどんな人が来ても何かを与えてくれる大変興味深い博物館です。

でも中のレストランの天ぷら定食2500円、コーヒー1杯500円はちょっと高いんじゃない?
東京江戸博物館

JR両国駅を降りて3分のところにある巨大な建物が博物館です。このちょうど左側が大相撲で有名な国技館。

建物は地上7階、地下1階でこの広場は2階にあたり、3階と併せて建物の面積は殆どありません。
常設展示場は5階、6階で4階は特別展示場で、期間限定のテーマに関する展示を行っております。

ここまで来て気がついたのが、写真に僅かに写っている中学生の大集団。
「こりゃ、ピーピーうるさいぞ、きょうは。」
エスカレーターで一気に6階へ

入場料は600円。更に600円払うと4階の特設会場に入る事ができますが、今回はパス。

切符売り場のところに立っているお姉さん、このエレベータの横に立っているお姉さん、みんなニコニコ、「いらっしゃいませ」。

アメリカでここまで愛想のいいのは歯医者くらいで、これは患者からがっぽり治療費をむしり取りたいから、その患者を逃がさないようにするため。

余談でした。
6階の入り口から5階を見たところ

私入り口は6階にあり、ここで入場。ボランティアーの通訳とか、案内人がおり、誰でも頼めます。

この写真は明治に銀座かどこかに建てられた新聞社の建物。材料は全部イギリスから運んだとの事。雨漏れ等がひどく、新聞社は2年で出ていったそうです。

ほぼ実物大の日本橋が6階には設置されており、この上から撮った写真です。
残念ながら日本橋の写真はうまく撮れておりませんでした。
寛永の大名屋敷

松平伊予守忠昌の屋敷。江戸城の大手門横にあったそうです。

博物館の中にはこのような素晴らしいミニチュアがたくさんあり、建物の中もカットされて見えるようになっております。

建物の中には襖で仕切られた12畳ー20畳くらいの広間がずらっと並んでおります。
町人長屋

これもミニチュアで本当に精巧に作られております。
このようなミニチュアも見ていてそれなりに楽しいのですが、これらの横には大変分かり易い興味深い統計資料が掲げられております。

興味深かったのは当時の奉行所の組織で、江戸全体で同心、与力を併せて200人程度だった事。もちろんその下には岡っ引きなんかがいた訳ですが、それにしても住民4000人に一人の警察官。

今の東京は確か300人に一人の警察官でしたっけ。
江戸時代の上水道

横になっている木の棒のようなものが水道管。
上は空いておりますので、いわゆる雨ざらし。誰か毒を入れたらおしまいです。

いろいろな当時の物をこうやって見ておりますと、非常に精密にできている事に驚かされます。
日本の物作りの原点は江戸時代に出来上がっていたのを感じざるを得ません。

この博物館で見かけた人は圧倒的に40才以上の人が多く、20代の人は殆ど見かけませんでした。どうして?
江戸時代の食器

今の和食器と殆ど変わりません。いえ同じです。

これ以外に爪切りとか、耳カキとか、はさみとか、日常の細々とした生活用品まで大量に陳列してありました。

ここの博物館で唯一の不満は食べ物に関しての陳列、説明が殆どない点です。
食べ物の観点から時代を見るともっと面白い事がわかると思うのですが。
お産の風俗

この時代は座産という方法がとられたそうで、産婆さんが赤子を沐浴させております。

赤子はうつぶせにして沐浴させ、産婦は7日間布団によりかかって座っていなくてはならなかったそうで、健康を損なうことが多かったとありました。

この町人の家も復元されたもので、これ以外に職人の家とかもありました。
千両箱

以外と細長い箱でした。ここでは千両箱を持ち上げてみることができました。私もやってみましたが1つは持てますが2つはちょっときついかな、という重さでした。

ちなみに1両は今の価値で15万円くらいとの事。従ってこれ一個で1.5億円!

一箱欲しい!
越後屋

後の三越、でしたっけ。
このミニチュアも素晴らしい出来上がりです。店内の様子も細かく作られておりました。
全長で3m以上ある大きな(?)ミニチュアです。

店の裏庭で、丁稚が番頭かなにかにしかられているところまで作ってあるのには笑ってしまいました。

この横には店の中で使われていた算盤とか、机とか、様々なものが展示されておりました。
助六の舞台

歌舞伎にはあまり興味がないので良く覚えておりませんが、この世界は今も江戸時代もあまり変わらないのではないかと思います。

しかし昔の舞台って、どのようにして照明をしたのでしょうか。恐らく今から考えると、うんと薄暗かったのではないかと思います。

何故かガイジンはこの手のものが好きなようで、何人かがこの前に群がっておりました。
からくり人形

これはもうただ驚くより他ありません。

このコーナーにはかなり詳しい説明と部品とかの紹介がありましたが、間違いなく既に精密技術の基本の世界が完成していたと言えそうです。

これは人形が矢を1本ずつ引いて、右の的に当てていくというもので動力はゼンマイです。(右下)
江戸から東京へ

明治初期の江戸城の写真です。
荒れ放題で、明治天皇が住む前の事だそうです。

ここから先、明治、大正、昭和の展示物はもう何を見ても、今の生活につながっているような物が多く、これはこれで大変興味深いものがあります。
シンガーミシン

手前の黒いのはポータブルミシン。

もうここまで来ると今のミシンと変わりません。私も子供の頃、近所のどこかの家で見た事があるような気もするし、母親が使っていたのも何かこんな格好をしておりました。

明治以降の展示、説明も大変充実しており、今まで見た事のない統計資料も豊富でした。

でもこの博物館、喫煙所がありません。これがタマに傷。
円タク

1円でどこでも連れていってくれたという事で円タク。フォードの車でした。

後ろに見えるのは、明治、大正、太平洋戦争中の家が復元してありました。
大正の家、なんて言うのはもう私が小学生時代の昭和30年後半の頃の家と何も変わらず、何だか妙に懐かしくなってしまいました。
オーイ、と呼べば小学生の時の友人が出てきそうな雰囲気です。
昭和初期のサラリーマン7つ道具

帽子、懐中時計、ライター、名刺入れ、私が持っているものと何も変わりません。メガネは私はいりませんけど。

ビヤホールで飲んでいる写真もありましたが、ツマミも同じようなものでした。
昔のサラリーマンも、何かと理由を付けて外で酒を飲むのは今と変わりはないようでした。

但し、ホステスさんは着物にエプロンをしておりました。これ、今やれは流行るかも。
戦時中の家

窓に紙テープが張ってあるのが、特徴です。時計の横には防空頭巾。母親に良く話を聞かされましたっけ。

ここに立ち止まっている人はやはり年輩の方が多かったように思います。

でも茶ダンスがやけに立派で、ちょっと釣り合いが取れていないようにも感じましたが。
B29の落とした爆弾と機関銃

やはり東京にとっての戦争は東京大空襲でしょう。そのコーナーがかなりの面積を占めておりました。

昭和20年以降のコーナーは、闇市では何を売っていたかとか、どんな服を着ていたとかのコーナーでした。

アメリカが食料援助してくれた中にチョコレートとかガムの展示もありましたが、今でも全く同じデザイン、会社のものがアメリカのスーパーで売っております。

へー、こんな昔からあったのか。
東京大空襲の説明ビデオ

ここでは車椅子に乗った80才くらいの老人と、多分奥さんだと思うのですが説明ビデオをずっと長い間見ておりました。

この空襲と何か関係のある方なのでしょう。
時々この車椅子の老人が、画面を指さして奥さんに説明をしているのが印象的でした。
東芝の電気釜

あれっ、どこかで見た電気釜。

そうです私が子供の頃家で使っていたのと全く同じ電気釜が展示してありました。

私が小学生の低学年の頃ですから、昭和35年頃かそれ以前だと思います。
確か高校生の頃まで母親が使っていたような記憶があります。
博物館1階のロビー横

ここは結構広い博物館で、ゆっくり見て歩けば常設展示場だけで4ー5時間はかかると思います。

ロビーには広い休憩所もあり、ずいぶん贅沢に作られた博物館であるという印象を受けました。
お土産

何か記念にとギフトショップに入ってみました。

相変わらず、土産物屋というのはどこも似たり寄ったり。でも一つだけ東京らしい物を見つけました。江戸花切子のビールグラス。

1個1800円は少し高いかなと思いましたが、アヤメと水仙をそれぞれ1個。
気に入っております。
博物館は少しずつ展示の内容を変えているそうなので、又行くのもいいかなという感じです。
各展示物にはかなり詳しい説明がついていますが、ボランティアーの説明員を頼むといいかも知れません。私も途中でどこかのグループに混じって説明員の話を聞きながら回りました。

とにかく出張先で半日をのんびり過ごすにはいい場所です。但し、団体の中学生とかがいなければ。
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