日本に行ったオハイオ人達は、、、
オハイオから日本に会社の用事で出張をするときは、2回に1回はアメリカ人を連れて行きます。アメリカ人を連れて、いっしょに会議に出て一緒に食事をして1週間、長いときは2週間に及ぶこともあります。

連れていくアメリカ人の特徴は、先ず都会を知らない、外国には行ったことのない、中にはオハイオから他の州に殆ど出たことのない、という連中が多く、日本に行くことによっていろいろな体験をすることになります。
日系企業に勤めているとはいえ、所詮その会社はアメリカにあり彼等、彼女等にとってやはり日本への出張は大変な冒険(?)なのです。

日本に行った「オハイオ人達」の反応は、、、、、、、。
先ず最初に

コロンバスを出て日本のホテルに着くのが翌日の大体夕方の6時から7時。
お食事の時間です。日本に慣れていないオハイオ人の場合は、私はチェーン店の居酒屋に連れて行きます。
これらのチェーン店の居酒屋は、メニューに食べ物のきれいな写真があり、値段もわかり易く書いてあるからです。
写真を見ながら説明をして、リコメンド。

アメリカのレストランで写真入のメニューを置いている店は全くと言っていい程見かけません。ですから我々がアメリカのレストランにいった場合、最初のうちは注文に非常に戸惑うのが普通です。

「何で、アメリカのレストランには写真がないのだい?」
「注文をしてから、何が出てくるのか楽しみじゃないか。そう思わないかい?」

これがオハイオ人の返事でした。アメリカのレストランに写真がないのは、写真を載せると、出てきた料理と違った場合、客に文句をつけられるのが主な理由、それと一般的に何でも「文字」で表現をする習慣がある事の2つだと思います。

半工業製品のように、毎回どんな客が注文しても同じものが出せる店、たとえばマクドナルド、ここには写真が貼ってあります。

このようにして日本のチェーン店の居酒屋に連れて行って、オハイオ人に無難な、チキンのから揚げとか、ポテト何とかとかを注文して、私は刺身とか、漬物とか、イカの塩辛とかを頼みます。
そこで反応を見るのです。たとえば私の注文をしたものをちょっとずつ食べさせるのです。

「このイカの丸焼きどうだい?」
「この漬物どうだい?」
「このサルの脳味噌どうだい? あ、間違い。これはウニ。」

初日の居酒屋チェーン店での反応で、連れてきたオハイオ人の食事に対する順応性が把握できます。ここでチキンのから揚げとポテト以外には一切手を付けないオハイオ人の場合、その後の日本での食生活は悲惨な結果になります。
あるオハイオ人のケース

朝はホテルのレストランでパンとコーヒーと牛乳。昼は会社の食堂で、さて何を食べるのか見ていたら、カバンからクラッカーの袋を取り出して、これをコーラを飲みながらポリポリ。

仕事を終えた後は仲間と一杯やりながらの食事、この時も今度はカバンからリンゴを取り出して、これをガリガリ。こんな調子の日が3日も続いたので、そうだ!やっぱりアメリカ人は肉を食わさなきゃ、という訳ですき焼き屋へ。

すき焼きの薄く切った肉を不思議そうに眺めて、鍋の中へ。うん、やっぱりオレの考えは正しかった。こいつらは獣だから肉を食わせなきゃダメなんだ。適当に煮えた肉をハシでつまんで口へ。
「どうだ、うまいだろう?」

ところが肉を口に入れた途端、砂でも噛んだような顔になり、肉を丸呑み。
醤油味がダメなのです。
ここから2時間、彼は肉はおろか、一切の食べ物を口にすることなく、じっと席に座って我々がワイワイやるのを眺めているだけでした。

こうなったら仕方がない。最後の手段。翌日はマクドナルドへ。
店に入った途端、彼の表情が変わりました。あの油で揚げたポテトの匂い、なつかしい味なのです。トレイに乗ったアメリカよりも確実に一回りは小さいビックマック。

彼はこれを口に運びます。この時の彼の事は一生忘れません。
彼は目が血走っておりました。そしてあっと言う間にビックマックを食べてしまった彼の目は今度はうっとりした、まるで麻薬中毒患者が麻薬を打った後のような表情になったのです。(麻薬患者を実際に見たことはありませんが。)

日本まで来て、何でオレは晩飯にマクドナルドを食わなきゃいけないんだ!! 今度は私の方の目が釣り上がってしまいました。
地下鉄

日本での移動は、急ぎの場合はタクシー、普段は電車、地下鉄と徒歩になります。問題になるのは朝のラッシュに乗らならければならない時です。
あるオハイオ人は地下鉄に乗るなり、急に怒り出しました。

「オレの肩にあの男の肩が触れたのに、あいつは謝ろうともしない!!」

そのうちに益々混み出します。どうも彼の持っているカバンが大きくて、周りの日本人の乗客にとっては非常にじゃまなのです。彼のカバンは厚さが15cmもある、アメリカでは普通のカバンなのですが、日本で通勤に使うには大きすぎるカバン。

カバンを身体にグイグイ押し付けら、彼も真っ赤になってカバンを押し返しております。周囲の日本人を見ると、全く迷惑そうな顔をしておりますが、相手がガイジンでは文句を言う人もおりません。
その日は夕方まで彼は不機嫌でした。
「日本人って、何であんなに無礼なのダ。」

翌日も、翌々日も運の悪いことに港区の本社へ。つまり毎朝、超満員の地下鉄通勤を余儀なくされた彼は、やっと誰もが「ガマン」をして乗っている事に気が付きました。
最後の日は他の人のじゃまにならないように、身体をくねらせる技術もマスターしてしまいました。

彼の場合は順応性のあるオハイオ人の方かも知れません。でもオハイオ人達が持ち歩く大きなカバンにはいつも閉口してしまいます。
服装について

オハイオ人達の服装はラフです。ラフというよりも、私に言わせるとだらしない、ヨレヨレの服を平気でどこでも着て歩きます。
私もオハイオ生活が長くなって、段々服装がラフになってきましたが、それでも日本に出張をして会社に行く時は一応ネクタイを締めてスーツを着ます。
日本に着いた翌日、ホテルのロビーで待ち合わせて、イザ出勤。

「アレ?なんや?その格好は?」

かなり洗いざらしたポロシャツに、ヨレヨレのズボン。靴は運動靴、俗にいうスニーカー。背中には登山に使うようなリュックサック、この中には書類が入っているようです。

この場合は女性でしたが、電車に乗ると
「SHIN、今日着ている背広は日本出張のために買ったの?」
と小さな声で聞いてきました。
そうか、彼女は私の背広姿を見たことがない、つまり持っていなかったと勘違いしている様子です。

このオハイオ人、日本人の同性が何を着ているのか気になるらしくて、きょろきょろ他人の服装を見ておりました。帰りの飛行機の中で、この時の話になり、彼女曰く、
「ちょっと恥ずかしかった。今度日本に行くときは、SHINのように新しい服と靴を買ってから行こう。」

まだ彼女は私の背広をアメリカで新しく買ったものと勘違いをしておりました。
さらに食い物の話

ある日の夕方、会議が終わって会食へ。日本の上司が連れていってくれたのは結構な料亭。同行しているのはインド系アメリカ人の女性。

やがて生き造りがテーブルの上に運ばれてきました。見事な鯛と伊勢海老の生き造りで、鯛はまだ口をピクピクと動かせております。私はおもむろに、お猪口の酒を鯛の口に少し注いでやりました。鯛は背骨までも動かせて苦しそうにピクピク。
うん、こりゃ新鮮な鯛だわい。もう観念せい。

これを見ていたこの女性
「オー、ノー、SHIN、止めて!」

ちょっとふざけすぎたかな?まあいいや。これを食べるもよし、食べないならオレがその分、頂くよ。
私はその後、連れて行ってくれたその上司と話しに夢中になり、彼女の事を忘れておりましたが、ふと彼女の方を見ると鯛の頭をひっくり返して、箸でつついているではありませんか。
そして結構うまそうに、その刺身を口に運んでいるのでした。

オハイオ人にも生き造りの味がわかったかな?
でもやっぱり女は残酷やナ。鯛の脳味噌、箸で引っかきまわすなんて。
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