15−11−19 私の原点
私の趣味の一つは短波放送などを聞くことです。
短波放送に興味を持ったのはどういうきっかけだったか、それは遙か昔の小学生の頃に父に買ってもらった"子供の科学"、という雑誌だったと思います。

短波放送を聞くためには短波受信機が必要です。

つまり放送を聞きたいと思ったら、短波受信機の入手というかなり高いハードルを越えなくてはなりませんでした。

私は無謀にも、しかし実際に短波受信機を作り、それを小学校6年生の冬休みに自分のものにしました。

その時作ったのはオートダイン式という真空管3本の受信機でした。

オートダイン受信機というのは非常に簡単な回路で高性能である、と雑誌には書かれていました。

そうやって作った受信機、ダイアルを廻すと短波放送とかアマチュア無線の電波がたくさん(その時はそう思いました)受信できました。

世界中と自分が小さな受信機1台でつながったような錯覚に陥ったのを覚えています。

北京放送、モスクワ放送、それにVOA(アメリカのボイス・オブ・アメリカ)などの日本語放送。

短波放送はこれら日本語放送より何語かわからない外国語放送の方が多く、そして聞いた事もないエキゾチックな音楽もいろいろと聞こえました。

このように私を短波放送の世界に導いてくれた真空管3本のオートダイン受信機でした。

この原点になるオートダイン受信機、「いつかもう一度作ってみたい、、、」、ずっと心の中で暖めていたのですが、今年とうとうこれを実現しました。

50数年ぶりに作ったのは全く同じものではありません。
しかし形式としては"オートダイン方式"で、今回は実用性を考慮して6本の真空管による少しだけ高級な構成にしました。

シャシー・パネルの加工も昔と同じく全部自分でやりました。見た目もまあまあのものになりました。
50数年前に作った受信機では弱い電波の放送とかアマチュア無線はイヤホーンから微かに聞こえる程度で、聞くのに大変苦労をしたのを鮮明に覚えているのですが、今回再現したものは全く違う聞こえ方に仕上がりました。
想像以上の性能です。オートダインは高性能である、ウソではありませんでした。

回路は自分で納得のいくように設計しました。アルミのシャーシーへの部品のレイアウトなども注意深くやりました。
部品も最良品を集めて使いました。

部品で一番古いものはダイアルで、恐らく1930年(昭和5年)前後製、真空管は全て私が生まれる前、太平洋戦争終戦前後(1945年)に作られたものです。

主要部品はアメリカ製ですが細かい部品は最近(と言っても20年くらい前)日本で作られたものを使いました。

これを眺めていると遙か50数年前の自分を思い出します。

オートダイン受信機が使われたのは実際の業務用国際通信の世界では1935年(昭和10年)頃までです。
アマチュア無線の世界でも1955年(昭和30年)頃までだと思います。

私が製作した頃は雑紙などに ”短波受信機の入門用”、という事で頻繁に紹介されており、"簡単な構成"つまり安く作れる、というのがその大きな理由でした。

今回50年ぶりに製作をしてわかったのは"オートダイン受信機は技術的には入門用ではない"、という事でした。
回路は簡単ですが、調整は大変難しいのです。

出来栄えは今回のものとは全然違いますが小学校6年生でよくもまあこういうものを作ったものだと思いました。
このオートダイン受信機、CQ出版社から出ている季刊誌"QEX"という雑誌のNo−17(2015..12)にその製作記事を掲載してもらいました。

表題は"ハム入門50年前の思い出深い製作を再現"、"1−V−2 オートダイン受信機" で6ページの構成になっています。

QEXはメジャーな雑紙ではないのですがちょっと大きめの書店では売られており、やはり自分の作った受信機の製作記事が全国の書店に並んでいるのだと思うとワクワクします。

雑誌への掲載を勧めてくれたのはCQ出版社に太いコネクションを持つ現在は東京に住んでいるKKさんでした。

彼は高校の1年後輩で同じ趣味の仲間でもありました。
KKさんによると最初は私の受信機の写真を表紙にしよう、というアイデアもあったそうなのですがナゼかボツになりました。

その代わりと言っては何ですが、今度は同じ出版社から出ている"CQハムラジオ"という月刊紙の新年号に、2ページの見開きカラーページで別の私の作品が紹介される事になりました。

中味は以前にレストア・製作した古い短波受信機(1942〜3年頃の製造)の写真と解説です。
最近そういうジャンルが一部で流行っているので一例として載せてもらえる事になりました。

この月刊紙はQEXの何倍もの発行部数があり、どういう反応があるか大いに期待です。

短波受信機の製作を初めて50有余年、小学生の時に作った短波受信機のルーツと同じものを製作・再現、それを雑誌に紹介できる機会が出来たというのはやはりウレシイものです。
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