14−07−29 お国柄

中国の食品メーカーから輸入しているファーストフード用の鶏肉製品に期限切れの肉などが使われていたという事で話題になっています。
いろいろな事実がわかってきてそれをマスコミもセンセーショナルに報道していますが、私はそんなに驚きません。

今回の事件については、「ま、そんなもんだろうな〜」、という感想です。
報道ではどうしたら食の安全を確保できるか、と盛んに言っていますが、今回のような事は中国では普通にある事なので、今更何を、、、という感じです。

注目すべきは、そもそも中国のメディアが工場に1ヶ月間も潜入して、管理の杜撰さを取材した結果この事実がわかった、という点がおかしいのですがここには日本のマスコミは全く触れません。

この中国の会社(上海福喜食品有限公司)は世界中で事業を展開しているアメリカのOSIグループという会社が100%出資で上海に作った現地法人です。
つまり問題の会社はアメリカの会社、、、という事は中国のアメリカ叩きの一環なのか、という見方もできそうです。

こういうレベルの品質管理は中国では一般的で普通な中で、なぜアメリカ企業が狙われたのか、という疑問がどうしても残ります。

中国では、「OSIは中国以外の工場ではきちんとルールを守っているのに中国だけがナゼこういう状態なのか。中国人にこういうものを食わせていいのか!」、とかいう仰天報道が盛んに行われているそうです。(中国のマスコミは完全な共産党の一機関です)

私は食品業界ではありませんでしたが世界中の自動車関連の部品工場、自動車工場を見てきましたが、国によって品質管理の考え方というかポリシーが大きく違い、実に興味深いものがありました。

難しい話はともかく、今回の出来事をサンプルにして私なりにアメリカ・日本・中国だったらどうなるか、というのを適当にジョークとしてシュミレーションしてみました。

<アメリカの場合>

1日にどれだけの肉が床に落ちるか観察して、それを入れるバケツの大きさと捨てる頻度、誰がどこに捨てるか等をきちんと決めます。
そして捨てた分量と捨てた時間などの記録をとるようにします。なかなかシステマティックです。

では実際の工場の中ではどうなっているか。

工程では作業員は落ちた肉は拾いません。
ナゼなら毎日の生産が終わった後は掃除係が落ちた肉を集めて外のゴミ箱に捨てるので、自分がいちいち拾う必要はないと考えます。

床に落ちた肉の再利用は行われませんが、一定量の肉が常に廃棄されて製品化されません。
記録は廃棄された肉はゼロ、となっていますが。

<日本の場合>

床に落ちた肉は拾って再利用しない、このルールを決めると現場の人がどんなバケツを準備してどんな記録をとればいいのか、あれこれ工夫をします。
正規従業員・非正規従業員の区別なく一様に熱心です。作業は毎日適切に自主的に行われます。

しばらくするとQCサークルで落ちた肉を捨てる作業についてみんなが検討を始め、この仕事自体が全く無駄な作業である事に気がつきます。
そこで「肉が床に落ちないようにする」対策を行い、落ちた肉を処分する作業そのものがなくなってしまいます。

生産ライン上での肉のロスはなくなり、そして肉を捨てる作業自体もなくなって工場の効率に大きく寄与します。

<中国の場合>

床に落ちた肉は拾って再利用しない、このルールの意味・目的自体が品質管理スタッフも作業員も理解ができません。

落ちた肉は少々汚れていますが、それくらいの汚れた食品は普段の生活の中でも食べているし、そもそも生産している肉は自分が食べる訳ではないので、頭からそんなルールは無視です。

加工して出荷してしまえばそんな事、何の意味があるのだとバカにさえします。

工場長は床に落ちた肉を捨てるのは歩留まり・コストに影響を与えるので、捨てるなと言います。
ですから廃棄用のバケツも何も準備されません。

でも時々どこかからの指示で「やれ」、と言われるので監査の時だけやっているフリをして、書類は品質スタッフがねつ造するので問題にはなりません。

鶏肉加工ライン上における"床に落ちた肉の廃棄処分指示"に対するアメリカ、日本、中国の加工ラインでの対応の違いを、30秒で中学生にもわかるように、かつ半分ジョークとして説明するとこうなります。

最近あちこちで"モノつくり"、について話題になっています。匠の技とか子供にモノ作りの楽しさを教えようとか、いろいろあります。これはこれで大変いい事だと思っています。

私は"モノつくり"の中の車と車関連の生産工場の現場を間接的に指導したりしてきましたが、品質管理は結局は"人の質"に尽きる、というのが結論です。
(設計が悪くて、生産工場で最高の品質管理をやっても不良品になってしまう、というのは別の話です)

ですから現場の品質管理は"人の問題"ですから品質管理のスタッフがやるのではなく、人事部が行うのがベストだと思っています。

それと今回の中国の鶏肉の問題、これを輸入しているある会社の社長が、「裏切られた」、と言ったそうです。

私に言わせればこの人は彼らに何を期待して、何を信頼していたのか、実に甘いな〜と思いました。
こんな事は今も起きているしこれからも起きる、というのがわかっていないのですね、この人は。

こういう会社が彼の国から食品を輸入して我々はそれを口にする、我々はどうやって身を守ればいいのでしょうか。

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