14−06−28 懐かしい音

私の今の住まいはマンションで10階に住んでいます。目の前の障子を開けると1.5Kmほど先は伊勢湾で津、松坂、伊勢、鳥羽、それに知多半島が見えます。
1時間ごとに津から中部国際空港を往復する高速艇が見えます。日によってはたくさんの漁船も見えます。

机の前に座ったままでは見えないのですが、立って窓の左側を見ると伊良子水道を出入りする多くの巨大船も見えます。四日市港、名古屋港に入出港する船です。

机の前に座ってPCの画面から目を離して前を見るとそういう風景が広がっており、これはなかなか気に入っています。このマンションを買った理由の3分の1はこれかも知れません。

私は本を読むときも自分の部屋で机の前に座って読みます。以前はソファーに寝転がったりして読むこともありましたが、今は殆どありません。読書の時は静かにして読むことにしています。

でもPCに向かっている時は何かBGMが欲しくなる時があります。

そういう時はiTunesで音楽を聴いてきました。インターネットラジオを聞くこともあります。
サイマルラジオも面白く、気に入った放送局も幾つかあります。

PCはスピーカが外付してあり、何とか音楽を聴けるレベルの音質を確保しています。
でもiTunesにしてもサイマルラジオにしても何かしっくりとしません。ナゼだろう、、、。

PCに接続したスピーカーから出てくる音は何か冷たいのです。

私にとっての音楽とかニュースの原点はラジオです。

そしてそのラジオは真空管でできていなくてはならず、受信するのは中波の放送です。
私は幼稚園に行く頃の歳に毎日ラジオ放送を聞いていた記憶があります。木製きれいなケースに入った東芝のラジオでした。

そのラジオの前に椅子を持ってきて、ラジオに顔を近づけて一生懸命に聞いてた記憶があります。

何を聞いていたのか記憶から推測するとNHK第二放送で、当時は主として午前中は小学生とか中学生向けの教育放送をやっていたのでした。

今のような語学講座を主とした番組ではありませんでした。
小学校ではラジオの番組で授業をやった事が何回かありました。

私はそういう番組を意味もあまり理解せずに聞いていたのだと思います。
そしていろいろな音楽が番組の間に流れていました。

"ガボット"、という曲名とリズムは今でも覚えていますから、5才前後の記憶というのはすごいな〜、と思います。
この"ガボット"は実に"ゴセックのガボット"でした。

そんな事を思い出していたら半世紀以上前に聞いたあのラジオの音を再現してみたくなりました。

よ〜し、あの真空管が紅く点る暖かいラジオを作ろう!!

私が小さかった頃にスピーカーに顔をくっつけて聞いたラジオは"5球スーパー"と呼ばれるものでST管というナスの形をした大きな真空管が5本使われていたものでした。

いろいろと検討をした結果この5球スーパ・ラジオではなく、もう一世代前のストレート・タイプと呼ばれるラジオを作る事にしました。

ストレート・ラジオというのは昭和初期〜昭和20年代前半くらいに一般的な家庭で使われていたラジオで、真空管が3本〜4本のシンプルな構成です。

製作するに当たり足りない部品が幾つかありましたのでインターネット通販とオークションで買い集めました。もちろん70年も80年も前の部品を集めたのではなく、同じ機能の新しい部品です。

新しいと言っても40年くらい前に作られた部品が殆どです。真空管は持っていたものを使いましたが刻印を見ると1950年製造になっていました。

製作はシャーシーとかの加工に1日半、配線はゆっくりやって1日半で終わりました。配線間違いがないかチェックして、いよいよ電源スイッチ・オンです。。

パイロットランプが点り、真空管のヒーターがほんのりとオレンジ色に変わっていきます。この瞬間が一番緊張します。ヒューズも飛ばないし、煙も上がりません。
シャーシーの中に顔を近づけ変な臭いがしないかもチェックします。これって結構重要なのです。

ボリュームを上げてダイアルを回します。ミニコンポ用のスピーカーから放送がガツンと聞こえてきました。
一安心です。
簡単なラジオですが調整をする部分が何カ所かあるのでこれをやって完成です。

一応各部の電圧とかの測定をやって記録をとっておきます。

こういうラジオは内部の作動条件がおかしくてもそれなりに音が出たりする場合があるのでこれを確認するのと、故障した場合で修理をするときの参考にするためです。

出来上がったラジオの外観は無線機の雰囲気で、昔のラジオとは面構えが違いますがこれは私の趣味です。

私のところからは名古屋の放送局からの電波を受信しますが、NHK第一放送、NHK第2放送、中部日本放送、東海ラジオの4局が入ります。

ラジオの番組はトーク番組、ニュースなどの他にナツメロとか1950〜60年代のアメリカンポップス等が割と多く、退屈はしません。

肝心の音質は中波の放送とは思えないいい音がします。柔らかい、落ち着いた、伸びのいい音と言いますか、実に真空管ラジオ!という音がします。
東海ラジオが他の放送局の音に比べて僅かに低音域の伸びがいいとか、そいう微妙なところまでわかります。

何よりも昭和初期の頃に使われたラジオと同じ回路で何十年も前の部品を使ったラジオで放送を聞いている、という時代をワープした不思議な気持ちにさせてくれます。
そしてスイッチを入れてしばらくすると真空管ラジオ独特の焼けた微かな臭いがしてきます。

このラジオは私の机の上に置かれ、一番身近な存在になりました。。

inserted by FC2 system