13−04−12 グローバルな人材
今週は3週間ぶりに栃木に出張。この季節の特徴として近鉄、JR、新幹線のホーム等でスーツ姿の若者の集団をあちこちで見掛ける事です。
この日も近鉄白子駅で1グループ、新幹線名古屋駅のホームでは2〜3グループを見つける事ができました。

彼等はこの4月に学校を卒業して就職をした若者で、入社研修で本社とか支社などの研修会場を移動中のようでワイワイと楽しそうにやっている者、深刻な顔をしている者、不安そうな顔をしている者、実に様々です。
みんな一様に大きなツーツケースを持っており、みんな一様に黒っぽいスーツを着ており、みんなネクタイの結び目が大きいのが特徴でく、中には子どもの握り拳くらいに大きく結んでいる者もいます。

会社によって研修の期間はまちまちなのでしょうが、早いところでは1〜2週間でそれぞれの職場に配属されて、実質的な社会人としてのスタートを切るところもあるようです。

仕事に慣れて、一人前になるにはやはり長い年月がかかります。半年や1年でバリバリと一人前に仕事がこなせてやり甲斐を感じる、等というのは日本ではまず例外と思って差し支えありません。
あったとしたら、それはそういう仕事であるというだけの話です。

大いにガンバレよ、と彼等・彼女らに声援を送りたくなりました。

私の会社でも今年の定期採用は600人弱、それに昨年1年間の中途採用100人ちょっとを加えた700人の入社式が鈴鹿の工場で行われ1週間の集合教育のあと工場実習・営業実習などに各地に散っていきました。

2週間目からは工場内では実習生というワッペンを付けた作業着姿の新入社員を食堂で見掛けるようになりました。
みんな工場の現場実習、つまり2交代の組み立てなどの現場の作業を約半年間やって、その後更に営業実習に移り、約1年後に正式な配属先が決まるという長い実習期間を経験する事になります。

オハイオの会社でも技術系の社員として採用した者にこの日本のシステムを新入社員にやりましたが非常に不評で、「実習」という名の現場での作業経験は結局はなくなってしまいました。
理由はいろいろとあったのですが、一番大きなものは技術系の仕事をするのに、生産ラインで1分単位の組み立て作業をやるのは無意がない、というものでした。

アメリカでは仕事に就くというのは購買の仕事をする、総務の仕事をする、研究開発の仕事をする、エンジニアリングの仕事をする、という何をするかが採用の時点で決まっている、というより採用する側は職種を指定して条件を提示して採用試験を行う、という方法です。

日本のように定期的に(毎年4月に)技術系か事務系くらいの大雑把な分類で、一括して採用して入社後適正を見ながら職種別に配属をする、というようなやり方はやりません。
この方法は日本以外の、世界中の国における会社が人を採用する時の一般的なやりかたです。

ですから”どこの会社にいるか”、より、”どんな仕事をするか”、が重要になります。

日本では仕事を尋ねるのに、「どこにお勤めですか」、という聞き方をして、「ABC工業に勤めています」、とか、「市役所に勤めています」、とかいう答え方をします。
日本以外では、「どんな仕事していますか?」、という尋ね方で、「工場で品質管理の仕事をしています」、とか、「消防士です」、という答え方をし、その後に、「どこの会社で?」、とか、「「どこの市で?」、とかい質問が続く場合がある、という程度です。

駅で見掛けた若者達に、「どんな仕事をするのですか」、という質問をしたとすると、「まだ何をするか決まっていません」、という答えが返ってくる者が大半だと思います。

私は”どんな仕事をするかわからないが、先ず会社に入る”、という日本のシステムをカナダのトロントのホテルのバーで会ったカナダ人に説明をした事がありますが、1時間くらい掛かった記憶があります。

先日自民党から教育改革案なるものが発表され、その内容は”英語教育の改革”、”理科教育の強化”、”IT教育の強化”、だそうです。
目的は阿部政権の経済再生を支える”グローバルな人材”、を作る事だそうです。

デフレ不況は日本人の英語とかITスキルが低かったから回復できなかったのか? 私はそんな事が理由ではなかったと思います。
グローバルな人材とは英語やITができる人なのか?違うと思います。

そもそも英語やITを身につけていないと仕事がやっていけない、などという人は一般的に100人の中で何人いるのでしょうか。100人の普通の中学生の中で将来英語・ITができないと困る、という生徒は何人いるのでしょうか。

「外国に旅行に行ったら、やはり英語ができないと国際人として恥ずかしいという事を実感した、、、」、とかいう人がいます。
その理由を聞くと困ったのはグループツアーで行ったニューヨークの自由行動で、マクドナルドに入った時にコーヒーを頼んだらコーラが出てきた、という経験から「英語は大事だ!」、などというレベルの話があります

旅先で”コーヒーとコーラ”の違いで困らないために、国家が小学生の時から英会話を教えなくてはならないというのでしょうか。

IT教育の強化とはどうもIT技術教育の強化らしいのですが、IT技術に長けた人間は日本に既に一杯いるのですが、ああいう連中が増えればグローバルな人材の層が厚くなるのか? 私は自信を持って、ノー、です。
中学生の時からにインターネットの使い方を教えたらグローバルに通用する人材に育つのか? 違います!

英語教育については、小学生の子どもに” What's up? ”とか教えて何になるのか、と思っています。
それよりもきちんと日本語を教える、本を読ませる、基本的な生活習慣を身につけさせる、こっちの方が大事だと思っています

グローバルで通用する人とはやはり人間性だと思っています。自分の国をよく知り、外国をよく知り、歴史とか科学をきちんと知り、礼儀作法をきちんと身につけた”日本人である事”、がやはりグローバルで通用する人だと思います。

何かを強化すれば、何かが犠牲になります。英語やITなんて後でどうにでもなると思っています。
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