12−12−22 最近読んだ本

今週は群馬県前橋市にある取引先のS社まで出張。
私は群馬県は今までナゼか数えるほどしか行った事がありません。前橋と高崎がごっちゃになったり、位置関係がどうなっているのか、そもそも今回の目的地である前橋とか伊勢崎にどうやって行くのかさえよく知りませんでした。

出発したのは木曜日の朝、東海道新幹線で東京まで行き、ここで上越新幹線に乗って50分本庄早稲田という周りに何もないただ駅だけがあるという駅で降りて、S社のMさんの車で45分、前橋市にある工場に行きました。
まず会社概要などの説明を受け、その後ここで生産ラインを見せて頂きました。

生産ラインは思ったより自動化が進んでおり、効率の高い生産をやっている印象を受けました。
その後5時半まである改善に関する会議を行い、この日は本庄市のホテルに一泊。

翌日は伊勢崎市にある工場まで行き、同じように生産工程の確認と打ち合わせを行い、予定より少し早く1時前に全部のスケジュールを終える事ができました。

この日は同行したNさんは三重まで帰り、H君は同じ学校の入社同期の友人に会うとかで宇都宮、私は東京で1泊という訳で、大宮でそれぞれ別れました。

最近東京での定宿にしている目白のホテルに着いたのが5時前、栃木県小山市から来てくれたHK君と駅でドッキング、近くの寿司屋に入って久し振りに近況とか昔話に花が咲きました。

HK君が今日はどこに行ったの?と聞くので群馬県伊勢崎の部品会社と答えたら、それだったら私が小山に行った方がよかったという事で、今回の会合場所を東京に決めたのは間違いだった事が判明。
これも自分の行くところの地理を確かめないで行ったバツ、HK君ご足労を申し訳なかった。

HK君はまだ会社員として仕事を続けており、仕事はPCとネットを使って自宅でできるようで週に1回程度東京にある本社に出勤をすればよいとの事でした。
HK君は誠実な性格でいろいろと教えられる事も多く、風貌は昔と変わらず(ただ歳を重ねただけ)、そして理論派でもあります。腹を割って話ができる数少ない友人の一人でもあります。

彼は関東で私は関西ですが、これからもこうやって時々会って一杯酌み交わす仲でいきたいものです。(ナゼか私のこういう友人は殆どが関東に住んでいる)
でもこの日はちょっと飲み過ぎたかな、、、反省、、、。

読書のペースは何とか保っています。世の中の動きについての本を何冊か読んでみましたが、その中で印象に残った2冊と吉村昭ファン必読の1冊を紹介です。

1. これから20年、三極化する衰退日本人 中野雅至(扶桑社新書) ★★★★

ここ20年日本では何が起きてきたのか、そして20年先にはどうなるのか、実にわかりやすく書かれている。日本は"格差社会"→"衰退社会"→"カオス社会"の道を辿ると筆者は言う。

日本は何故"衰退"の道を歩んでいるのか、筆者は学生の勉強に例え、その学生の偏差値が上がらないのはその学生の努力の少なさより、他の学生がそれ以上に努力をするからだ、という理屈で説明している。
経済的な衰退は何をもたらすか、最も恐ろしい目に遭うのは中途半端な勝ち組の金持ちであると説く。

衰退社会をはかる物差し(人材の劣化、人口減少、大衆の横暴、モラル道徳の崩壊)、日本人の弱点なども鋭く突く。このままでは日本社会は想像もできない破滅を迎える事になるが、どうすればいいのか、その答えも最後の章で書かれている。

それと日本人は既得権者に対してはものすごいパッシングをする。消費税10%の前に国会議員を減らせ、というあの考え方である。
国会議員をゼロにしても消費税0.1%分にも相当しないのであるが、日本国民は国会議員を減らさないと消費税10%上げを納得できない。なぜこういう発想に至るか、これも見事に分析している。

久し振りに私にとって衝撃の一冊である。

2.迫りくる日中冷戦の時代 中西輝政(PHP新書) ★★★☆☆

「将来は大中華圏の時代が到来します」、「日本は中国の属国として生きていけばいいのです」、「それが日本が幸福かつ安全に生きる道です」
これを言ったのは驚くなかれ、2010年6月から最近まで中国大使であった丹羽宇一郎という民間出身の人物である。

筆者はこれをこの大使が口にした言葉は実は多くの日本人が心のどこかに抱く「見通し」、「恐怖」であるかも知れないと言い、更にこれを積極的に感じている人は"日本のエリート層に結構多い"とも言う。

これをそれとはなしに私の周りにいる40代、50代の人に聞いてみたら、同じようなニュアンスの答えが返ってきた。
彼等は筆者が言うエリートではない、普通のサラリーマンである。

注目すべきは4つの呪縛についてである。"中国文明幻想"の呪縛、"自虐史観"による呪縛、"中国市場"という呪縛、"中国は大国"という呪縛、実に「目からウロコ」、の内容である。

中国で日本に関する事件・問題があると、「それは彼等の内部事情によるもので、悪意のあるものではない」、というコメントが必ずどこからか出てくる不思議な現象についてもメスを入れている。

日本と中国の関係はどういう歴史を辿って、日本はどういう失敗を繰り返してきたか、そしてこれからどうすべきか、鋭く解説している。この本は日中関係とは何か、非常にわかりやすく整理されている。

3.ひとり旅 吉村昭(文春文庫) ★★★☆☆

私は小説はナゼかあまり読まないが、例外がある。それはこの作家の書いた歴史小説である。吉村昭の歴史小説は基本的に事実を書き綴ったもので、いわゆる"小説=作り話"ではないのが特徴である。

であるから吉村昭はテーマを決めると実に綿密な取材・調査を行なう。その取材・調査のために日本全国どこにでも出掛けて資料を集め、人と会う。そして取材・調査旅行は基本的にひとりで行い、この本はその記録の一部である。

例えば生麦事件を書くに当たっての調査であるが、その緻密さにはただ驚くばかりである。当時の村の家々の地図・写真・記録文書など可能な限りを入手、イギリス人リチャードソンがどこで斬られて、どこまで逃げてどこでトドメを刺されたかまで調べている。

また薩摩藩士の奈良原喜左右衛門が"斬り下げた"と残っている記録に対し、馬に乗ったリチャードソンを徒侍が"斬り上げた"のではなく、"斬り下げる事が可能"であったかまで調査・検証をやっている。

吉村昭は、「史実とはそのままドラマなのです。ですから史実を忠実に書くと小説になるのです」、と語り、忠実に史実を書くことが出来ない環境になったと思うと、そのテーマについて書くのを止めている。

この本は吉村昭がその史実を調査するために日本全国に旅をした記録・随筆である。歴史に興味のある私を夢中にさせる一冊である。

吉村昭は他に多くの随筆も書いており、内容が重複するところもあるが全部飽きることなく読める。
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