11−12−18 客船と軍艦
飛鳥Uという世界一周航海で有名な客船があります。ここ10年くらいで客船によるクルーズが一般的になり、オハイオにいたときにも駐在社員の何人かの人は、休みを利用してのカリブ海クルーズ等に行っておりました。
私も行きたかったのですがとうとう機会を逃して帰国してしまいました。(費用は私でも行くことができる、リーゾナブルなものでした。)

飛鳥Uによるクルーズの世界一周は無理にしても、大いに興味がありました。
先日カミさんがこの飛鳥Uの見学会が名古屋港であるというのをWEBで見つけたので、さっそく申し込みをしてこの日に行ってきました。

名古屋港までは鈴鹿から電車を利用して1時間半ほどで行けます。
地下鉄の名古屋港を降りて外に出ると、500mくらい先に巨大な飛鳥Uが岸壁に接岸している姿が見えます。

おお!、あれが飛鳥Uか〜!、としばし感激です。

ポートビルの1階で今回の見学会の受付があるので、ここでチェックイン、ビジターのIDカードをもらいます。
見学会の募集定員は100名で、88名の応募があったと係りの女性が言っていました。
見学会は11:00〜14:30の3時間半で説明会、船内見学、それにフルコースの食事がつく会費1万円の有料見学会です。

時間になったので案内の女性に引率されてゾロゾロと船体中央のタラップから船内に入ります。
船内に一歩はいるとそこは高級ホテルのイメージです。
ここで再度、おお!と感激です。

まずシアターに入り船の概要から始まって、各種クルーズの説明が行われますが、やはり中心は世界一周クルーズに重点が置かれます。
説明はまずみんなが一般的に持つ疑問に対する説明があります。クルーズに対する質問で最初に持つものは?

それはドレスコード(服装)です。
つまりカジュアル、インフォーマル、フォーマルについての説明です。やはりフォーマルドレスは4泊5日以上の航海では必要です。

でも世界一周約100日の航海でもフォーマルコードの日は7日間程度のようで、思ったより少ない日数です。

それ以外は手持ちのスーツ何着かでいけそうです。な〜んて、もう既に乗る気になっている自分に気が付いて、苦笑です。

そして最大の関心事項(少なくとも我々には)である費用の説明があります。
3等船室(Kステートとかいうそうです)で、ひとり390万円、これは早い段階での申し込みの場合で、そうでない場合はもっと高くなります。

デッキ付になると560万円以上、そして最上級クラスのロイヤルスイートになると2500万円になり、私には全く関係のない世界になってしまいます。

100日間で390万円、つまり1日当たり約4万円、寝床付、食事つき(船に乗ると最低4食になってしまいます)、いろいろな設備利用し放題、それに20箇所以上に寄航する、という運賃込み、、、安いのか、高いのか、などという計算を頭の中でグルグルとやってしまいます。
ちょっと情けない習性であります。
船内は5デッキから12デッキまでが乗客が利用できるデッキで、つまり建物で言うところの8階分に相当し、この中の4つのデッキが約400の船室に割り当てられておりますのでパブリックスペースは4階分になります。

説明は6デッキのシアターで行われ、この後いよいよ船内見学です。先ず客室から、しかもロイヤルスイートというとんでもない客室からです。
これにはぶったまげました。広さは90u近くで、1年前に買った我が屋(マンション)より広く、ベッドルーム以外にリビングルーム、来客用のトイレまであります。

これを見学したあと次々と下のクラスの部屋を見学、最後はKステートと呼ばれる部屋に行くのかと思ったらFステートまでしか見せてくれません。

FとKは同じ部屋なのですが、Kは窓の半分が救命ボートで塞がれているのです。
Fステートの印象はシティーホテル以下、ビジネスホテル以上というイメージで、広さは約19u(11畳くらい)です。

案内の女性によると部屋での生活を重視する人は広い部屋(当然うんと高くなる)、部屋は寝るだけでとにかく船内のあちこちの施設を利用して楽しむ人はエコノミーな部屋でも十分とのことでした。

確かに船内にはいくつものレストラン、談話スペース、和室から、囲碁・麻雀ルーム、手芸などをする部屋、図書館、フィットネスルーム、映画館など船旅を楽しむためのいろいろな工夫が凝らされています。
毎日ショーとかも行われ退屈するという事はなさそうです。

これらをあちこち飛び回っていたら、部屋は寝るだけのところになってしまうというのもわからない訳ではありません。
もちろん液体燃料注入所(カウンター・バー)もあります。でも液体燃料は日本レストラン(寿司もある)と同じく、別料金になっているとの事でした。

そうか〜、調子に乗って毎日寿司食って、液体燃料を注入しまくっていると、下船の時にとんでもない請求書を届けられるのか〜、とまたまた既に乗る気になっている自分に苦笑でありました。

船内旅行を1時間近くやった後はメインダイニングルームでフルコースの食事。
そうです、会費1万円の見学会の大半はこの食事代なのです。一応前菜、スープ、真鯛のグリル、牛フィレ、ワイン、デザート等が次々と出てきました。

午後2時半、食事を終えて本日の見学会はお開きとなりました。見学会に来ていた人は私より少し上の年代の夫婦及び女性同士の仲間で来ているという人達でした。

私達にとってはこの船で世界一周100日間は夢の旅になるのですが、この中の何組かの人達はきっと乗船をされるのでしょう。

正直なところ5泊6日程度の国内クルーズ、又は東南アジア方面に出掛ける10日程度のクルーズだったら何とか私達レベルでも行けない事はないな〜、、、頑張って無駄遣い止めて2年か3年計画でやってみるか〜、、、。

そんな気にさせた見学会でありました。
飛鳥Uが横付けされている岸壁と地下鉄・名古屋港駅の間には通称「南極観測船"ふじ"」、が係留されており、見学ができるようになっていましたので、これも見学をしてきました。
"ふじ"は1965年から1983年まで18年間も日本と南極を往復した船です。

テレビ、新聞などのマスコミはほとんどが南極観測船”ふじ”などと言っていますが、”ふじ”自体は南極観測をするための船ではなく、南極観測を支援する船なのです。従って定員に観測隊員は含まれておりません。

”ふじ”は確か、「砕氷艦"ふじ"」、というのが正式な呼び名で、国際的には立派な日本国海軍の軍艦なです。

軍艦ですから”ふじ”は大砲は積んでいませんが、拳銃・小銃・機関銃などの、ささやかな武器も搭載しています。

また、「南極観測船"ふじ"」ではなく、「砕氷艦”ふじ”」、なので、指揮官は”船長”ではなく”艦長”、乗組員は全員将兵(海上自衛官)なのです。

”ふじ”の見学料は300円、艦内をぐるっと回ってブリッジにあがる事もできました。
後部のヘリコプター格納庫はちょっとした展示がされており、当時の雪上車とか昭和基地で使われた機材などが放置(とても展示とは言えない感じでした)してありました。

艦内の士官室、科員居住区、観測隊員室、その他医務室、食堂など全てが質素で鉄板むきだし、やはり軍艦の香りが伝わってくるものでした。

私は南極と言うと明治末期に南極探検を行った白瀬矗の事を思い出します。この人は子どもの頃親戚の叔父に北極の話を聞き、「将来そういうところを探検をしたいのですが、どうすればいいのですか。」、と聞いたそうです。

白瀬矗の質問にその叔父は、「それには今日から暖かいお茶を飲まなくても生きていけるようにならなくてはならん。」、と言ったそうです。

そして白瀬矗はそれ以降一生、暖かい湯茶を口にせず、寒くても暖を極端に制限した生活を守り通したそうです。何と純粋で意志の強い人だったのか。

これ私はこれは中学生の頃に本で読み、「南極観測=白瀬矗=この逸話」、というかたちで、ずっと強い印象で残っているのです。

その後の南極探検、それに続くいろいろな不幸な出来事はあったものの、この人の苗字は日本にとって初代から4隻目の砕氷艦に"しらせ"という艦名で使われています。

名古屋港の隅にひっそりと身を横たえる”ふじ”、たった30分ほどの見学でしたが、飛鳥Uとはまったく別なロマンのようなものを感じたのは、やはり南極観測という冒険を手伝った船だったからでしょうか。

この日は日本最大の豪華客船”飛鳥”と、偶然に30年前にその任務を終了した老兵”ふじ”の実に対照的な2隻の船を見学することができました。

尚、 飛鳥U見学での最大の驚きは、飛鳥Uに通算1000泊以上乗っている人が既に20名、2000泊に達している人が1名いるといのを聞いた事でした。
恐らく飛鳥を自分の家代わりに近いかたちで使っている人なのでしょうが、一体どういう人達なのでしょうか。

他人事ながら、大いに興味あり、です、、、。
inserted by FC2 system