11−10−08 再び舞鶴へ
今週は舞鶴の取引先に出張がありました。この会社は3月にも行っており、その時はもう近々にここには来る事はないだろうな〜、と思っていたのですがその後いろいろあって再訪問になってしまいました。
舞鶴までは鈴鹿から列車で約3時間30分、地図上の直線距離はたった140kmですが、東京に行くより時間がかかります。
鈴鹿から名古屋まで近鉄、名古屋から京都までは新幹線、京都からは山陰本線に乗り、綾部というところで舞鶴線に入り終点の東舞鶴に向かいます。

京都駅から東舞鶴駅までの車窓は実にのどかな、これぞ日本の風景と言うべき美しい眺めが続きます。
列車は山間をかなりうねって走り、左右には美しい山々が見え、小さな町が現れては消え、現れては遠ざかります。

線路際から見える家は大きな古い家が目立ち、それぞれ小ぎれいにしてあります。
庭には野菜とかが栽培されており、農作業用具が見える家も見えます。

物置小屋の横には軽乗用車とか軽トラックが2〜3台置いてあります。
一見つつましく生活をしているように見えますが、実は余裕を持ってゆったりと生活している家々であることがわかります。

列車が止まる駅の町には大きな病院とか、スパーの建物も見えます。
京都からの列車は特急で、指定席の車両は20〜25%くらいの乗車率で座席に座っていると他の乗客の姿は視界に入りません。

ピーナッツを食べながらペットボトルのお茶を飲んで、夕日に映えるこんな風景を見ながら京都から1時間40分ちょっとで東舞鶴に到着します。
私は3月に来た時から、この列車からの風景が大いに気に入っています。

駅を降りて改札に向かうと取引先の方が迎えに来てくれています。この人たちの顔を見ると、憂鬱な仕事が頭の中に浮かんできます。
ここで美しかった風景とはおさらば、私はグイと現実に引き戻されるのであります。
翌朝はちょっと寝不足かな?という程度で爽やかな目覚めです。ホテルは舞鶴湾から100mも離れていないところにあり、部屋は6階の海側ですから眺めは抜群です。
あまりお腹は空いていないのですが、朝食を食べに1回ロビー横のレストランに行きます。アメリカでいうところの”バッフェ”、日本でいうところの”バイキング”又は”食い放題”という形式の朝食です。

大きなテーブル席の方を見ると海上自衛隊の士官が同じように食事をしています。年令は30代後半でしょうか、階級は3等海佐です。
舞鶴はかつての要塞・軍港、今は海上自衛隊の基地が点在しているところでもあります。私は一人で食べるのも面白くないので、この自衛官の斜め前に座り、声をかけてみました。
この人の任務は経理補給関係とのこと、つまり護衛艦に乗って荒海の中を艦橋で指揮をとるとかいう職務ではなく、ズバリ小泉信吉。

勤務地は横須賀で舞鶴には出張で来ているとの事。東北の大地震・津波の時は大掛かりな補給管制業務に従事して貴重な経験を積んだこと、などを話してくれました。
きちんとした態度はもちろんの事、非常に感じのいい人で、つい自分の会社の同年齢の社員と比較してしまいました。

この日は取引先の工場で午後4時前までみっちりと会議をやりました。
製品は製造ノウハウの塊なので、我々には細かいところに入るとよくわかりません。ただそういう製品であっても工業製品の製造というのは、考え方において基本的なところでの共通点が多くあります。

我々もいろいろなケースで経験を積んでいると自負しており、グレーな回答には大いに突っ込みを入れました。取引先もわざとグレーにしている訳ではないのはよくわかるのですが、お互いに課題の整理をする事によってある程度の方向性を出すことができました。

帰りの列車も京都まではガラガラでしたが、京都から名古屋までの夕方の新幹線は指定席はおろか自由席も座ることができず、立ったままでした。やっぱり疲れました。
先日、「自動車産業を襲う円高」という題名のNHKの報道番組を見ました。
日本での生産はコスト的に成り立たないので海外(この場合中国)進出する会社、金型の製作を中国でやりそれを輸入してコストを下げて国内で生産を続けようとしている会社、最後の事例では自動車部品から環境関連の製品の開発・製造に変換しようとしている会社などの紹介がありました。

海外への進出は日本国内の空洞化で失業者が出る、金型の海外発注はノウハウの蓄積ができなくなる、自動車関連部品から他製品への変換はどこでもできるものではない、などの大きなディメリットがあります。
しかしいつものとおり、ナゼかこういう部分にはあまり触れないという姿勢の報道でした。

ゲストで出演していた伊藤洋一(住信基礎研究所)という人は、日本の産業構造の変換を唱え、その事例でアップルのような製造部門を持たない(ハードウエアーは全部外国での外注生産)頭脳集団の産業に切り替えるべきとか、東レのように繊維から新素材のような領域に切り替えていくべきだとか主張していました。

製造業の本質を理解していないアホに近い意見だな〜、と思いました。また製造業の持つ技術というものを全く理解していない、特に製造業の持つ巨大な労働人口吸収力を理解していない人だな〜と思いました。

番組の中で愛知県一宮市だったかの部品会社の社長さんが、「私はここで工場を続けたい、この土地で物を作り続けたい、そしてここで工場を大きくしたい、でも限界になってきました。もう日本を出るしか生きる道はありません」、と言っていたのが印象に残りました。

500人の工場があるという事は、500人の人が働いているというだけではありません。また工場があるとその部品・製品を輸送する物流などに関連する多くの人が必要になります。
また工場の食堂には近所のパートのおばさんが働き、そしてトイレの掃除とか作業服の洗濯とか多くの人が働いているのです。
工場というのは実に様々な多くの人が働いているのです。

工場が海外移転したり縮小すると、こいう仕事もなくなるという簡単な事も知らないとしか思えない評論家先生、専門家先生達が多いような気がしてならないのですが。
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