08−04−18 骨が折れます
今の私の会社の製品は殆どが北米向けですが、少しだけ外国に輸出をしています。その輸出先の一つであるサウジアラビアからある情報が入り、ここに出向かなくてはならなくなりました。

さてサウジアラビアってどんな国なのか?世界一の原油産出国、イスラム教の国、911事件の犯人の半分以上がサウジアラビア人、行く事になっているジェッダはメッカの近く、男は白い衣装(トーブ)、女は黒い衣装(アバーヤ)で顔を隠している、サッカーの国、イスラム教を厳格に守っている国でかなり残虐な刑罰がある国、それからエーッと、、、、、殆ど何も知らない事に気が付きます。

具体的な行き先はサウジアラビア以外にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイにも行く事になりました。ここには中近東を統括する駐在員事務所があり、そこの駐在員の中にはTさんとIDさんという親しい知り合いが2名がおります。出張のメンバーは日本人3名、それにTさんというオハイオ人も行く事になりました。
このオハイオ人のTさん、出張について安全面でいろいろと過剰反応(少なくとも私から見た場合)をして、最後まで私を悩ませてくれました。

サウジアラビアに行くためには先ずビザを取得しなくてはなりません。ビザの取得にはサウジアラビアの取引先からのインビテーションレターをもらう必要があります。
これのためにはパスポートのコピーをドバイのITさんに送って、それを更にサウジアラビアの取引先に依頼状を添えて送り、取引先からはレターを我々に送ってもらうと同時に、ワシントンDCにあるサウジアラビア大使館にも送ってもらうという手続きをとります。

レターが着く間を利用して4名はビザ申請のややこしい書類の作成をし、レターがサウジアラビアから着き次第ビザ取得代行会社に直ちに送れるように準備をします。アメリカからの外国出張でビザの申請はブラジル以来ですが、サウジアラビアはかなり面倒です。

問題はオハイオ人のTさん、彼が集めた社内・社外のいろいろなところからの情報によると、サウジアラビアは非常に危険で行くのは好ましくない国であるというのです。
ワシントンDCにある海外セキュリティーに関するコンサル会社の情報では、余程の事がない限り渡航はすべきではないという事のようなのです。

そしてもし行くならボディーガードと専用の運転手をつける、というのが対応策であるという提案なのです。オハイオ人のTさんはこれをすっかり信じ込んでしまいました。
ある面では単細胞動物を絵で描いたようなTさん、朝から、「ボディーガードが必要だと言っている、サウジアラビアは危険すぎる、、、」、とそればかりです。

私はUAE駐在のITさんにこの点を聞いてみました。ITさんはドバイに駐在になって2年、1ヶ月に1回以上はサウジアラビアに行っておりいろいろと事情には通じている訳で、彼によるとジェッダはビジネスで来る限り全く問題なし、という返事です。
ボディーガードが必要であると言っているのはセキュリティーをビジネスとしている会社が言っている訳で、その会社としては少しでも不安がある場合ビジネスチャンスですから何かを薦めるのは当然で、私はハナから胡散臭いと思っていたのですが、この話しは出発の最後まで尾を引きました。

これに加えて他のオハイオ人達は、まるでジェッダの街中は機関銃の弾が飛び交っているような話をするものですから余計に話がややこしくなってしまいました。
オハイオ人達はアメリカがイラクで戦争を仕掛けているニュースを毎日見ているので、ジェッダもそれと似たような状態だと思っているようで、決して冗談で言っているのではなさそうです。

しばらくするとドバイも危険だと言う話になってきました。こうなると冗談では済まされなくなってしまいました。
これもTAさんに電話で話すと、「危険の度合いから言えば、アメリカの方がずっと危険ですよね〜。」、という意見。
イヤー、無知もここまで来るともう滑稽としか言いようがなくなってしまいました。

出張の3名の日本人のうちの1名は実はある部品を作っている取引先の方で、この会社でも万が一の事を考えてオハイオ人ではなく、出張者は日本人のTAさんに決めたという事でしたから危険ゼロとは言えないのはわかりますが、Tさんはあまりにも騒ぎすぎます。

私もいろいろと調べてみましたがサウジアラビア政府自体は親米で全く問題はないのですが、反政府勢力がアメリカを敵対していること、サウジアラビアはユダヤ人国家であるイスラエルは国として認めていない事、ところがイスラエルとアメリカは関係が深い事等、何だかややこしい世界です。

日本に対しては、日本はサウジアラビアとは一度も対立した事がない、皇室も何度も訪れており非常に友好的な事がわかりました。
しかしオハイオ人は何でここまで騒ぐのか、「SHIN、サウジアラビアに行くんだって?」、と言って機関銃を撃つマネをするのには閉口しました。

月曜日にウジアラビアに荷物を送ろうと社内の担当部署に聞いたところ、詳細なインボイス(送ろうとする各々の物がどこで作られたのかの証明を含む)の他に公証人の証明書、アメリカ商工会議所の証明書、サウジアラビア商務省の許可証が必要で代行機関を使って書類作成だけで10日必要と言われてギブアップ。

取引先のTAさんもサウジアラビアに送る荷物があったので、送り方について問い合わせをしたところ、「UPSで送れましたよ。日本に物を送るのと同じでした。」、という返事。私の会社では会社の物を海外に送るのにUPSを使うことを許可していなため、結局時間が足りず送る事ができませんでした。

これについてもUAEのTAさんに聞いたところ、やはりアメリカから直接の物の発送には過去にも問題があり、その時は一旦日本に物を送って日本からサウジアラビアに送る、という方法をとったと言っていました。

サウジアラビアの取引先からのインビテーションレターはPDFでEメールで送られてきましたが、ビザ申請には原紙が必要との事。予め言ってくれよなー、って感じでしたがこれも到着を待つしか方法はありません。
日本のあるところからはいつ頃サウジアラビアに行けるのか、と頻繁に問い合わせががありビザの手続きに2週間以上掛かるので待って欲しいと言ったところ、「じゃ日本に来てビザを取ったらどうですか。3〜4日で発行されますよ。」、というアドバイスなのか嫌味なのか、こんな連絡も入ったりしました。

この間にどのようなフライトルートでサウジアラビアに行くのかいろいろと検討をして、結局これが決まってチケットが発行されたのは出発の3日前でした。
往きはコロンバス⇒シカゴ⇒ロンドン⇒ジェッダ、帰りはジェッダ⇒ドバイ(1泊)⇒アトランタ⇒コロンバスというルートになりました。帰りのドバイ⇒アトランタのフライトは15時間で、これは私が経験する一番長いフライト時間です。

出発は19日(土)の夕方の6時、この週は通常の業務もいろいろと立て込んでおり、日本とのテレビ会議とか、日本からの出張者もいたりしてバタバタしていましたが、ちょっと崩していた体調も何とか回復をして準備万端とまではいきませんが準備すべき事は大体やったかな〜という感じで金曜日を迎えました。

オハイオ人のTさんは観念したのか、さすがにボディーガードの話はしなくなりましたが金曜日の夕方に聞いたのは、「ある部門のXXという社員の兄貴が政府関係の仕事をしていて戦車をサウジアラビアに売っている。そして1年に1回メンテナンスでサウジアラビアに行っている。そこではいつも多額のリベートを要求されるそうだ。サウジってそんな国なんだ。」

私はもう勝手にせい!!、という感じで聞いていました。これもUAEのTAさんに一応事情を聞いてきたところ、「そんな事は何も心配は要りません。そのテの話は政府間の中ではあるかも知れませんが。」、という返事でした。
やはり中近東は普通のアメリカ人にとっては非常に危険なところ、よくはわかりませんが我々が耳に入りにくいいろいろな情報が彼らの中では渦巻いているのは事実のようです。

アメリカはイラクで戦争をしており、これのニュースは毎日ひっきりなしに流れています。彼等にとっての中東のイメージはやはりこれらのニュース報道の世界なのでしょう。Tさんの反応も仕方ない事かも知れません。
ちなみにアメリカ軍15万人が参加して戦争をしているイラク、ある調査結果によるとアメリカ人で正確にその位置が指せるのは8%だそうです。
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