08−01−26 食い物の恨みは恐ろしい?
先週は連日かなり気温が下がり−15〜17℃という日が続きました。この気温で雪が数センチ積もると、典型的なオハイオの冬というイメージになります。−10℃以下の夜になると何となく暖炉に火を灯したくなります。
そんな訳で先週の水曜日に、この冬初めて薪を燃やしてみました。

薪と言ってもオイルを染み込ませた人工の薪燃料で、本物ではありません。本物の薪は秋の終わり頃になると農家の人でしょうか、トラックに積んで売りに来ます。

暖炉をよく使う家ではこれを買ってガレージの壁一杯に積み上げておくのです。我が家では暖炉は実用品ではなく、「飾り」の一種なので人工薪燃料で十分です。

先週は腰痛で会社を1日休んでしまいました。ここ数年、腰痛の周期が短くなってきているのが少し気になります。
以前ドクターのところに行ったのですが、大した治療方法がある訳ではなく、結局は減量と腹筋、背筋を鍛えるのが一番という事でこれに精を出しています。

話しはガラリと変わって今日は会社のカフェテリアの事です。
私の会社はオハイオの中央部、数十キロの範囲に工場・事務所が分散しています。関連会社を入れると全部で1万6000人くらいの社員がいると思います。それぞれの工場、事務にはカフェテリアがあって朝昼食から交代制勤務社員の夜食まで、食事ができるようになっており、全部で11カ所あります。

社員は勤務場所の一番近いところのカフェテリアで食事をします。私は1年ほど前からデスクを2カ所持っておりそこを車で行き来しておりますが、Nという場所の方のカフェテリアには極力行かないことにしています。理由は「マズイ、量が少ない、愛想が悪い。」の3拍子がほぼ完璧に揃っているからです。

私は12年間オハイオで生活をしています。ですからオハイオ人のサービスに対する考え方、行動は大体分かっているつもりです。愛想とか気配りとか、そういう事はハナから期待などこれぽっちもしていません。
が、ここのカフェテリアはその中でも最先端を行っています。

腹を空かせて並ぶ私達。食べ物を皿に盛るオバサンは鮫のような目つきで、先ず最初に私達をグイと睨みます。アレとコレと、、、と注文をすると、これ以上できないというくらいにのろまな動作と態度で、食べ物を皿に放り込みます。
そして横を向いて皿をポンと台の上に投げます。この時に皿から食べ物がこぼれる事があります。

そして何よりも重要な盛り具合いは、エーッというくらいに少ないのです。もう、イジワルしているとしか思えないくらいに少ないのです!悲しくなるくらい少ないのです!
ですから余計に何か一品か二品を取ってトレーに乗せないとお腹が一杯になりません。

カフェテリアですから最後に精算をしてお金を払いますが、同じような物を食べても値段が大きく違う事はしょっちゅうです。レジを打ち間違えているのです。
ここのカフェテリアは信じられない事に、個別のメニューの値段はレジのオバサンしかわからない仕組みになっているので、文句を付ける事ができません。(一つ一つ値段を聞けば教えてくれるでしょうが。)

レジを済ませた私達は暗澹たる気持ちで、席に着きます。肝心の味ですが、おいしいとか、おいしくないという基準での評価は意味がないのでやりません。評価は食べ物を口に入れた時に、「怒りがこみ上げてくるか、そうでないか。」という評価をするだけです。

このようなヒドイ状況について職場のオハイオ人に聞いてみました。「確かに量は少ないですね。でもこのオフィスの周りにはここしかないから仕方ありませんね。」、という返事でした。
ここのカフェテリアを私よりも長く利用している日本人駐在員にも聞いてみました。「イヤー、確かにそうですが、以前より大分よくなったのですよ、これでも。」、という返事でした。

私はふと昔映画で見たNYかどこかの刑務所を思い出しました。囚人達が食堂で並んでいる姿です。太った巨大な食堂の係(これは男だった)が囚人の持つトレーに食べ物を投げるように入れて行き、囚人達はそれを黙って受け取って席について黙々と食べる。

私の会社のここのカフェテリアの風景を白黒のフィルムに撮影して、そしてこのNYだかの刑務所の食事風景のフィルムの後に映したとしても、何の違和感もなく見れると思います。

これに比べて、別な場所のカフェテリアのあるオジサン(日本人流で言うとオジイサンに近い感じの年令に見えますが)は全然違います。このオジサンはこのカフェテリアの中の4つあるうちのひとつのステーションを担当しており、愛想も良く動作は日本人顔負けのスピードで、鮫の目をしたオバサンのように食べ物をお皿に投げる事は決してしません。

このステーションはカレーとか、チキンカツとかを出すステーションでもありますので、このオジサンと日本人駐在員は頻繁に顔を合わす事になります。
オジサンは私の事を「ミスター、SHIN」、と呼びます。ファーストネームにミスターを付けるのはちょっと変かも知れませんが、私は構いません。
そんなにニコニコする訳ではありませんが、キビキビとやってくれますので非常に好感が持てます。

このオジサンが他の係の人達と決定的に違うのは盛りが良い点です。日本流で言うと「大盛りX2」くらいに相当します。鮫の目つきのオバサンの3倍近くの盛りの時もあります。ですから日本人駐在員は、「もう少し、少なくして下さい。」、と言わなくてはなりません。

そういうリクエストが多かったせいでしょうか、かなり前からこのオジサンは我々に対して、「これくらいでいいですか」、と量を聞いて来くるようになりました。これらのサービス精神が私は気に入っているのですが、このオジサンはオハイオにおいては殆どエイリアンに近い存在だと思います。

またこのオジサンは以前、赤カブに包丁を入れてきれいな花を作り、ステーションの前に並べていました。「これは貴方が作ったのですか?」、と聞いたら、「そうです。」、と自慢そうにしていました。
もう一つ面白いのは、このオジサンが時々使っているオバサンとかアンチャンのアシスタントの動きが、このオジサンに似ている事です。
やっぱり弟子は師匠に似てくるのですね。

私の会社には約2年をメドに海外の事業所で研修・訓練を行う、海外トレーニーという制度があり一般の駐在員とは少し違った立場で勤務している人達がいます。(実際の日常の業務は駐在員と全く同じ事をやるのですが。)
今のオハイオにもこの制度で何名かの日本がおり、私の職場にもN君という29才の社員がいます。

N君は2年の勤務を間もなく終え日本に帰国をするのですが、2年間の勤務を振り返っての報告の事前確認を先日行いました。本番の報告は翌日という事だったので、中身そのものを大きく変えるという指摘はしませんでした。
報告は米人のS上席副社長に行うという事だったので、逆にその場でその米人のS上席副社長に質問をしてはどうかというアドバイスをしました。

アドバイスした質問の内容とは、「アメリカ人はスポーツではチームプレーを十分に発揮できているのに、どうして仕事ではチームプレーができないのか?」、というものでした。
N君の報告の内容を聞いていると、彼が2年間で大きく疑問を持った点がチームワークとリーダーシップという事のようだったので、答えをそれなりのアメリカ人から引き出せればと思い、このアドバイスをしたのです。

実はこの質問は非常に奥行きの深い質問で、確か中根千枝女史の本にも出てきたと記憶しており、これだけで1冊の本が書ける内容で、そんなに簡単に答えの出せる質問ではないのです。
その後、N君からはこの質問を報告の最後にやったというメールが入っていました。S上席副社長はN君の突然の質問にかなり慌てたようで、当然の事ながらN君が納得できるような返事はできなかったようです。

簡単に答えが見つからないような事に関しては、報告の場で報告者から評価者に質問するのが良い場合がある、というのは今の会社に入る前にあるエライ人から教えてもらった事です。
でもこれをやると怒るバカも時々いますから要注意ですけど、、、、。

inserted by FC2 system