07−07−27 本当に助けてくれるのかなー
新潟中越沖地震が起きてから約2週間、11名の方が亡くなり、未だに相当な数の人が避難所で不便な生活をしているという報道が続いています。
この地震では火災が起きなかった事、人口密集地域ではなかった事等が幸いして、阪神大震災のような壊滅的な被害が出なかった事がせめてもの救いであったと思います。

日本人で地震を経験した事のない人は恐らく皆無でしょうが、ここオハイオでは地震を経験した人が恐らく皆無です。オハイオに地震はありません。オハイオは地震のない場所なのです。

でも私の会社のオハイオ人の中には日本出張中に、地震を経験したというのが何人かおります。その時の様子をその経験者は、「床が揺れ、このまま建物が壊れたらどうしよう、もう何も考える事ができなかった。」、と言っていました。
新潟中越沖地震では地震の当日から自衛隊、警察、消防等が直ちに出動して救出活動、非難誘導を行い、被災者の支援も割とスムーズに行われております。救援活動に関して十分でないと言う人がいるようですが、被災地域が限定されている事もあって、非常に素早く行われている印象があります。

アメリカでこのような天災としては、ハリケーン(日本で言うところの台風)による被害、トルネード(竜巻)による被害があります。
特に2年前のハリケーン・カトリーナによるニューオリンズの被害は全米でも大きなニュースになりました。ニューオリンズの場合、被害があってその後に何が起きたかと言うと、治安の悪化でした。
当時のニュースは無人になった商店に対する略奪、これを取材するニュースキャスターに対する暴行が報道されていました。

これに対して州知事は何をしたかと言うと、イラクから帰ったばかりの州兵の部隊を出動させ、治安維持に必要であれば容赦なく射殺する、というコメントを出しました。
市長は警察に暴徒を取り締まるように指示を出したのですが、「これは我々警察の仕事ではない。軍の仕事だ。」、と警察は言い、治安維持を行う事を拒否したのでした。
つまり警官では取り締まりができないくらい、治安が悪化していたのでした。

無人になったスーパーマーケットに押し入って食料とか電化製品を堂々と略奪をする市民の横に警官が立って、「ケンカしないよう、正しく物をかっぱらっていくように。」、指示を出している姿に私は腰を抜かしました。これは生命を維持するための行為で、略奪には相当しないという解釈だったようです。

そして水害に荒らされた無人の町中を、銃を構えた完全武装の多くの兵士が不法者を探す姿は実に印象的でした。これらの様子は先進国ではなく、どこかの発展途上国のように私の目には映りました。
このような行動とは反対に、被害の規模は全く違いますが、新潟の人たちは何と秩序正しい行動をしているのか、目を見張ってしまいます。
水をもらうために給水車に列を作る人、避難所で静かにおにぎりを食べる人、壊れた家の整理を黙々とやる人、救援活動をする人より、銃を持った兵士の姿しか見えないニューオリンズとは対照的です。

ニューオリンズの被害では1月経っても2月経っても、州政府は何人の人が亡くなったのか発表をせず、報道もされませんでした。正確な人数がわからなかったからなのか、それとも政治的な意図からなのか理由は不明です。
そして救援、復旧作業の遅さは異常で、ブッシュ政権が槍玉に上がってしまう程でした。

10年以上前の阪神大震災の時、世界中の国々は日本政府の無能さと、非人道的な態度と、住民の秩序正しさに驚いたそうです。
アメリカは震災の直後、アメリカ海軍第7艦隊司令官の独断で、東南アジアを含む極東全地域から動員可能な軍医・看護兵併せて何百人、そしてヘリコプターをかき集めて、それらを戦闘機を降ろした航空母艦に乗せ、神戸の沖に停泊、病院を開設する用意がある事を時の政府に提案したそうです。

ところが村山首相はこれを断ったのでした。もしこの時にアメリカの援助を受け入れていればもっとたくさんの方が助かったのは間違いないと思います。
自衛隊への災害派遣要請も遅れに遅れ、阪神大震災は半分は人災であったというのが大体の意見のようです。
新潟中越沖地震は限定された地域だった事もあり、救援も速やかにできた訳ですが、もしニューオリンズと同じような広範囲での大災害とか、阪神大震災のような人口密集地域で大災害が起きた時でも、今回の新潟の人達が見せた秩序正しい行動を今の日本人はとる事ができるのでしょうか。
それともニューオリンズのように略奪・暴行が渦巻き、治安が悪化するのでしょうか。

これについて我々日本人は少々自信がなくなっている、というのが今の本音のような気がします。新潟のケースでは住民の繋がりもある程度濃く、お互いに助け合う雰囲気があるようですが、都会で社会的混乱が起きた時何が起きるのでしょうか。
倫理観の全く違う外国人も異常に増えており、予測のつかない行動に出るかも知れない、これも不安材料です。

それと救援活動はきちんと組織化されているのか、阪神大震災の教訓は十分に生かされているのか、それもよくわかりません。
私もいずれは日本のどこかに帰るのですが、非常事態の時に日本という国はきちんと私達を守ってくれるのだろうか、何となく不安なのは私だけでしょうか?

ハリケーン・カトリーナによるニューオリンズの被害と救援、阪神大震災の被害と救援、そしてテレビから流れる新潟中越沖地震のニュースを見ながらそんな事を考えていました。
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