05−06−21 オハイオの新聞 
今日の昼食、食堂にちょっと早く行ったので他の日本人駐在社員はまだ誰もおりませんでしたので、一人で食事です。空いているテーブルを探し、椅子に座ると横に読みかけの新聞が置いてあります。
何の気なしに目をやると Almanac という欄が目に入ってきました。

新聞はその辺の村単位で発行されているコテコテのローカル誌ではない Columbus Dispatch というまあ、中くらいのローカル誌。コテコテのローカル誌になると、どこどこの猫がいっぺんにネズミを5匹捕まえたとか、日本人がどこどこの通りでスピード違反で捕まったとか、どこどこの夫婦が結婚50年を迎えたとか、そんな記事で埋め尽くされています。(これ、本当です。)

新聞のAlmanacですから何年の今日はどんな出来事があった、という事が1900年頃から1990年頃まで7つか8つ書いてありました。その中で1945年6月21日というのがあり、ぱっと目に入ったのが Okinawa という文字。読んでみると次のような事が書いてありました。

第2次世界大戦の沖縄戦において、アメリカ兵が日本軍司令官のLt.General Mitsuru Ushijima(牛島満・陸軍中将)の自決した死体を見つけた日。Okinawaではアメリカ兵は17000人以上が戦死、アメリカの圧倒的勝利に終わった。

そうか、今日で沖縄戦が終結してから60年が経っているのか、、、、私はアメリカの新聞でそれを知りました。
私はアメリカの新聞がアメリカの勝利をこのような形で今でも掲載している事にちょっと驚きました。沖縄戦の司令官の名前が牛島満という陸軍中将であった、という事をどれくらいの日本人が知っているでしょうか。

沖縄、、、実は生前の父がよく口にしていた話があり、私の中では沖縄はちょっとした意味があるのです。
父は沖縄戦が始まる直前の昭和20年2月、沖縄防衛のために沖縄に行く陸軍部隊の隊員でした。そして輸送船に乗るために大阪だったかの港で待機をしてる時だったそうです。

ところが何かの変更で父の部隊は丸ごと、予定していた輸送船に乗らずに他の部隊がその輸送船に乗ってしまい、次の輸送船を待つことになったのです。
そして父は結局、次の輸送船に乗ることなく、そのまま終戦を本土で迎えました。輸送船が来る前に、アメリカ軍の沖縄攻撃が始まり、行くことができなくなってしまったのです。

もし父が当初計画どおりの輸送船で沖縄に行っていれば、先ず間違いなく戦死したはずです。(日本軍の90%は戦死)でも運命のいたずらで生き残ってしまいました。
父が沖縄に行っていれば非常に高い確率で、私はこの世に存在しない事になります。

ですから沖縄という言葉を聞くと、父の話を思い出し、そして自分のこの世における存在という事に繋げて考えてしまいます。人の運命、人の存在とは何か、不思議です。父はこの話をする時は、いつも複雑な顔をしていました。
輸送船に乗る序列の変更の理由は、その後随分調べたようで、大体の事は知っている様子でしたが、話してはくれませんでした。

沖縄では日本軍の将兵・沖縄県民、併せて20万人の尊い命がなくなっています。アメリカの新聞には敵であった日本人の戦死者の数は伝えていません。伝えたとしても、それは戦果ですから、アメリカ人にとっては多ければ多いほど良い数になります。

イラクでは既に、アメリカ兵が1800人以上戦死しており、時々軍の首脳が議会とか国民から攻められていますが、「我々はその10倍以上のイラク兵、ゲリラ、その他を始末している。」、というのがその答えです。

アメリカも犠牲を出しているが、それを大きく上回る戦果を出している。従って作戦上のミスはない、という言い方です。
軍の回答としては、極めて普通の言い方だと思います。

テレビを見ても、新聞を見ても(これはたまにしか見ませんが)、日本の事が記事になっているのは殆ど見掛けません。ではアメリカ人、オハイオ人は日本という国に対してどういうイメージを持っているのか。
随分前ですがある会社のアメリカ人に聞いたの事があります。

「私はこの会社で働いているから、日本人とも付き合いがあるし、日本にも行った事があるから日本はよく知っていると思います。でも普通のアメリカ人は日本はどこにある国か、よく知らないと思います。
昔戦争でアメリカと戦った国、優秀な工業製品を作る国、くらいのイメージだと思いますが、、。」

という返事が返ってきました。自分がオハイオに住んでみても、一般的なレベルとしてはこんなものだと思います。
本屋に行って(こちらの本屋ってデカイです。)ぐるっと見渡して、JAPANという文字が表紙についている本を探すのはものすごく簡単です。

戦争の本が置いてあるコーナーに行けば何冊も直ぐに見つける事ができます。それ以外では先ず容易に見つけることはできません。全くない、という感じです。
やっぱり日本はオハイオ人(アメリカ人)にとっては物理的、精神的に遠い国なのです。

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