03−03−21 身近な戦争の影響
今日は職場の送別会の後、カナダに住んで30年という日本人Fさん少し話をする機会がありました。
もちろん今の会社とは何の関係もない人です。

いろいろと話す中で、1年半前の911のテロの話になり、Fさんは2日後に日本に行く計画を立てており、全部のフライトがキャンセルになったため、結局は5日後の9月17日にやっとフライトが取れて日本に行く事ができたとおっしゃっておりました。

実はその時、Fさんが日本に行ったのは、実は20年ぶりだったのです。その前に日本に行ったのが82年だったそうです。20年ぶりの日本!さっそくその時の印象を少し聞いてみました。

「日本人の表情が以前に比べて、みんな穏やかになっておりました。これには本当に感じ入りました。」
これを真っ先に言われたのです。
私はこれを聞いて、その日寝る前に自分の20年前を思い出しながらいろいろと考えてみました。
80年頃と言えば、日本は非常に豊かになってから随分と経っている時期です。どうしてだろう?

Fさんは穏やかになったという表現をされたのですが、実は緊張感が日本人全体からなくなってしまったのではないか?ハングリー精神がなくなってしまったせいではないか?豊かで、平和で、何でも手に入る。戦争で命の危険もない。
これが何十年も続けば、人間の顔はボケーッとしてくる。

「家がもうメチャクチャに増えた。」
これを2番目に言われました。でも人口ってそんなに増えていないはず。これはどういうことでしょうか?私は核家族が増えたということです。今まで2世代、ひょっとしたら3世代が同居していたのが、バラバラに住めば家の数が増えますからね。

「とにかく贅沢。食べ物も粗末にする。みんないい車に乗っている。服装もいい。」
Fさんの言われた20年ぶりの日本の感想を聞いて、私ではわからない、そして気の付かない変化を改めて教えられました。

そして最後にFさんは、
「私は日本に帰る事はないと思います。私だけが30年前と変わらない生活をして、取り残されてしまったような気がしています。」

「カナダでは日本製品があふれています。私はこれを見て、誇りに思います。SHINさんも日本のためにがんばって下さい。」

とおっしゃいました。

日本のために、、、、なんと久し振りに聞く言葉でしょう。私は忘れていた何かをふと思い出したような気になりました。
アメリカとイギリスがイラクに軍事行動を開始して今日で3日目。
日常生活に大きな変化が出たかと言うと、我々外国人にとってはまだ大きくは感じません。私の職場からは昨年の秋、1名が予備役の招集に応じて陸軍に行っております。

3日前の攻撃開始の翌日には、総務担当の副社長から全社員宛てに戦争開始についてのメッセージが送られてきました。確か次のような内容だったと思います。

・国土安全局(The Office of Homeland Security)の警戒レベルはオレンジになっている。
・引き続き、出張については制限を続ける。
・CNNのニュースによる戦況をカフェテリア(食堂)と休憩所の社内テレビで伝える。
・会社は戦況が従業員と会社にどのような影響を与えるか、監視をしている。
・軍務に服している従業員、家族のメンバーに対して思いやりを持っている。


これと同時に今度は社内E−MAILの使用に関する注意・メッセージ、更に世界中の国で、どの国がどのような安全状態にあるかを示す地図とかも、全従業員に配布されました。
日本からは各地域に出張している日本人の連絡先確認をするようにとか、いろいろな指示が回ってきました。

昨日もカナダの現地法人のからの出張が急に取りやめになり会議がキャンセルになってしまいました。カナダ人は今、アメリカに入国するのを嫌がっているという事を聞きました。
短期的にはこのような人の移動に関しての制限が大きく出る、そして次には輸入原材料、製品の流れが検査の強化等で遅れて、経済活動に支障が出るのではないかと思われます。
戦争の影響が具体的にどのような影響を与えるのか、それ程大きくは感じられませんがテレビとかラジオはずっと戦争の番組、中継ばかりです。
前線司令部からの中継とか、空母の乗組員からの中継とか、出征している兵隊の家族の声とか、よく聞き取れませんが(言葉のせいです)そのような番組をずっとやっています。

それとやはりアメリカ人が一番恐れているのはアメリカ国内で起こされる可能性のあるテロです。
会社でアメリカ人にそっと聞いてみてもみんなこれを心配している様子でした。
オハイオは非常に保守的な土地柄のせいもあり、反戦デモなどは今のところありません。

会社のアメリカ人も戦争に関心を寄せているものの、仕事・生活は全くいつもと同じようです。
特に来週からその次の週にかけて、職場では驚くほど多くのアメリカ人社員が1週間の休みを交代で取ります。
なぜかというと子ども達が春休みで、家族旅行をするためなのです。

行き先を聞いてみるとフロリダとか、サウスカロライナとかまで車で行って、キャビンでゆったりと家族で過ごすのが定番のようです。
隣のSさんも2人の娘さんを連れて、今週からワシントンDCへ行かれました。
確かに20万人以上の兵隊をイラクまで送っているアメリカ。そして爆弾を落としまくって、イラクを攻撃しているアメリカ。
でも何となく、「遠い国でやっている戦争。」、という事でここオハイオまでは実感として伝わってはきません。

考えてみるとアメリカにとっての戦争は、全て外国での出来事なのです。
アメリカは自分の国土が戦場になった事のない、殆ど唯一の国です。ですからヨーロッパのように戦争が始まったら、街角から敵の戦車が出てきたとか、爆弾が頭の上に落ちてきたとかの経験のない国なのです。

アメリカにとっての戦争とは、どこかに行って人を殺してそして凱旋して帰ってくる、と思っているのではないでしょうか。
ところがテロ攻撃はこのパターンではなくなりました。アメリカ本土が攻撃目標なのですから。
アメリカ政府は言います。
「テロは新しい形の世界に対する挑戦だ!」

ナニ?爆弾落として、市民を殺したりするのとどこが違うの?自国の一般市民が標的になった戦争は、アメリカだけが経験してないだけじゃないの?
つい最近こんなジョークが日本のある方から送られて来ました。

イラクの新聞記者がコリン・パウエルに近寄り、非難するような口調で尋ねた。
「アメリカの若者のたったの13%しかイラクの場所を知らないというじゃありませんか!それは本当なんですか。」
彼は立ち止まり、そしておもむろに言った。
「ええ、本当です。でもね、あなた方には不幸な事に、その13%というのは全員海兵隊なんです。」

とにかく今のところオハイオ、そして私の日常生活は大きな変化はありません。
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