03−01−28 効率の悪い博物館運営
一時帰国休暇も今日で終わり、明日はアメリカに帰る日です。

会社での用事も午前中で片付き、午後は時間がぽっかり空いてしまいました。
さて、何をするか?夕方には東京にいる同郷の友人に会う予定があるし、そんなに時間があるわけではありません。ホテルに戻ってボーッと過ごすのはもったいない。

今回は東京のブラリ散歩をしていないので、どこかに出掛けようと思いましたがあまり時間がない。

そこで思いついたのが千代田区にある昭和館という小さな博物館です。
自分が生まれた前後の日本は一体どうのような状態だったのか、このような事に私は非常に興味があるのです。

でもどうやって行けばいいのか、場所がうろ覚えで確か日本武道館の近くだったかな?とにかく千代田区。まあ散歩がてらに東京駅からブラブラと歩いてみる事にしました。
武道館まで歩いてきたのですが、やっぱりわかりません。
この辺はお巡りさんがうようよいる地域なので、適当なお巡りさんを選んで道順を聞きました。何と地下鉄の九段下のほんの側、皇居外苑の一部でした。
どこの階にも誰もおりません
でも私は東京駅から歩いてきた事に反省はありません。皇居付近はブラブラ歩いても飽きないところで、私は東京で大好きなところの2番目なのです。
一風変わった7階建ての建物で、そんなに大きくはありません。中に入ると客は誰もおりません。

受付らしいところに職員とおぼしき女性が数人いるだけです。
きょろきょろしていると若い女性が来て、「見学ですか?」、と聞くので300円のチケットを買ってエレベーターに乗って7階まで。

7階に着いても誰もおりません。
また窓口があってここにも女性が座っております。ここでチケットを見せて中に入ります。全く人の気配なし。いったいここはどうなっているの?どうも非常に人気のない博物館の一つのようです。

昭和館は、「昭和10年頃から昭和30年頃までの日本国民の労苦に関する歴史的資料の保存、陳列を目的として、後世代にその労苦を知る機会を提供する」、とパンフレットに書かれています。

運営は厚生労働省の委託により財団法人日本遺族会が行っているとも書いてあります。

7階から順番に見学をして行きましたが、7階と6階の常設陳列室はそんなに広くはなく、各階じっくり見ても20分で見終わります。

それぞれの年代ごとに当時の生活の様子が陳列されていますが、アレ?これらはどこかで見た事がある。

そう、墨田区にある東京江戸博物館の陳列の内容ににそっくりなのです。
それに上野公園の不忍池の横にある下町風俗資料館とも内容的にはほぼ同じ。

それぞれ陳列の時代の範囲はすこしずつ違い、例えば昭和館は昭和10年から30年に対し、東京江戸博物館は明治から昭和40年代後半まで、下町風俗資料館も明治から昭和30年くらいまです。
しかし、内容は庶民の生活を中心としたもので大体同じなのです。
昭和館を見学して思ったのは、もしこの3つの博物館(資料館)が一箇所にあって、それぞれ持っている資料も重複が整理されていれば、もっと充実したものになるのではないか?という事でした。
一番気になったのはこれらの3つの博物館(資料館)が、それぞれ距離にして全部10km以内にあるという点でした。

アメリカもあちこちに無数の博物館があって、例えばオハイオでもクリーブランドとコロンバスに美術館とか、科学技術を見せる博物館があります。
でもこれは250km以上離れており、日本で言えば東京と浜松くらいの距離があります。
ですからそれぞれの博物館はお互いに展示品を定期的に貸し出しをして、遠くまで出掛けなくてもいいように運営もされているのです。

アメリカにもプライベート(個人)で何か珍しいものを見せてお金をとるという施設は一杯ありますが、この東京にある3つは全部行政が何らかの形で絡んでいる施設で、いわば公の施設。
何で一つにできないの?
平日とは言え、昭和館の7階と6階で会った見学者はたった2名!!

見学を2時間くらいで済ませた私は再びブラブラと東京駅まで歩きながら、こんな事を考えておりました。
ちょっと単純かな?
アメリカでは同じような博物館・資料館が、10km以内に3つも作られるというのはどう考えてもあり得ないと思います。
昭和館の見学を終えた私はもう一度同じ道を戻って東京駅まで。
切符を買っているとおばあさんが寄ってきて、「新小岩まで幾らですか。」、と聞いてきました。見ると、かなり目の不自由な方の様子。

160円の切符を買ってあげました。するとおばあさんは、
「新小岩までは総武線で行くのはわかっているのですが、どちらの方向でしょうか?」

まだ友人に会うまでは時間は十分にあります。私はおばあさんの手を引いて、総武線のホームまで案内をする事にしました。
東京駅の総武線は、長いエレベーターを4つも乗り継いで、地下ホームの一番下にあります。私も10年ぶり以上の事で少し間違えながらやっと着きました。

ホームで発車時間を確認、おばあさんに教えてホームのドア−の位置に立たせ、「駅は四つ目ですよ。間違いのないように降りて下さい。」、と念を押しておきました。

おばあさんはしきりに、「ここまで来てもらって、、、何かお礼を、、。」、と何回も言ってくれました。
私はこの身なりのきちんとした75歳くらいのおばあさんと、先程の昭和館で見学したかつての厳しかった、労苦の多かった時代とダブらせておりました。
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