02−11−22 オハイオ人のお買い物
19日からD君と一緒に連日の会議。
会議の内容は範囲が広く、D君は半分以上はついていけない様子でした。事前のスケジュール調整に少し不安はあったものの、そこはさすが日本です。割とスムーズにやる事ができました。

どの会議でもアメリカ人はD君一人なので、通訳をつけてもらい、私は全部日本語。本当に日本語っていいですね。
ストレスが溜まりません。
行った先はできたばかりの新しい部門ですが、知った人ばかり。事務所を歩いているとあちこちから声がかかり、つい話し込んでしまいます。

会議でいろいろとやり取りする以外に、日本に行った時は極力多くの人と雑談をして、本音の部分の情報を収集するのが私のやり方です。
D君はきっとSHINは雑談が多い男だと思っているに違いありません。

これにプラス、アフターファイブの情報交換が非常に大切なのです。
このやり方についてアメリカ人は、ナゼ本音の話が会議とかの中でできないのだ、と真剣な顔で怒る連中が多いのですが、これは仕方がない。

昨日もあるエライ人からアフターファイブ・ミーティングに誘われました。
幹事役のSさんが、「どこがいいですか?」、と聞いてきます。私は躊躇なく、「純日本風でお願いします。」と答えると、
Sさんは、「彼は大丈夫かなー。」、とちょっと心配顔。

「日本まで来て、ナイフとフォークで飯を食う気はありません。食うか食わないかは彼の自由です」
私は思わず気合を入れて返事をしてしまいました。アーア。

「そうですね。何とかなるでしょう。」、Sさんも私の意見に異論はなしでした。
でも何とかなりませんでした、この日は。
連れて行ってくれたのは、かなり老舗の日本料理屋。出てくるものは純日本料理で、盛りも非常に凝ったものばかり。
日本料理はいわゆる、「目で食べる。」、という心がないと価値がわからないものです。

D君に、「目で食べる。」、なんて一生理解できない世界でしょう。それに品数がものすごく多く、次から次にいろいろな料理が運ばれてくるのですが、これにはD君も目をパチクリ。
「SHIN、何でこんなに小さな皿で一杯出てくるの?」、小さな声で彼は私に聞いてきます。

これを説明しながらですから、最後には面倒になってしまいました。
彼は全ての料理をハシで突付いたり、ひっくり返したり、挙句の果ては食べれないと思うと、横の大皿にバサッと捨てます。見事なアワビの焼き物なんかでも、ガリと口に入れたらあとは食べないで、ポーンと捨てます。

彼の作法はこれを作った板前が見たら、包丁持って怒り出すのは間違いなかったでしょう。
「こんな甘い酒は好きではない。」という事で日本酒もダメで、もっぱらビールをあおっておりました。

彼にとってはこのようなフォーマルな日本料理は初めての経験で、今までの日本出張では朝はホテルの食事、昼は会社の食堂でトンカツとかそのようなもの、夜はマクドナルドとか、ホテルのレストランで食べるというのがパターンだったそうで、刺身も今回が初めての経験だったそうです。

彼は口に入れる前には、必ずその材料を聞いておりました。
後で彼に聞いたところ、「何から作ってあるのか、よく聞かないと不安。でも材料を聞くとそのイメージが頭の中にできて、食べるのが難しくなってしまう。」、との事でした。

結局、オハイオ人が入った夜の1回目の会議は全く会議にならず、適当なおしゃべりに終始してしまいお開き。ホテルに帰った私は、D君が部屋に入るのを確認して再び外へ。先程のメンバーと再度合流して2回目の会議に入りました。

社交ベタ、アメリカナンバーワン信奉者、田舎者、態度デカイ、そして保守的なD君にとって、この日の夕食は屈辱的かつ辛いものだったかも知れません。
でもみんな気を使っているのだぜ、D君。
今日は明日はアメリカに帰るという、金曜日。
「SHIN、ベイブレード知っているか?これを日本で買いたい。それにポケモンカードも。」
ベイブレード?何や?それ。ポケモンカードは知ってるけど。

今回の出張はもう一人、日本人のSさんが同行しており、聞いて見ました。
「ベーゴマですよ。今日本でもアメリカでも大人気です。知りませんか?」

せっかくアメリカから来たのだから、お土産を買いたいのはわかります。が、私の不得意科目のおもちゃのようで、結局トイザラスに行って買うのがいいでしょうとSさん。

トイザラスってあのアメリカの店の?確かにコロンバスにもでっかいトイザラスがあります。でも私は入った事がありません。

何でオレは日本まで来て、アメリカ人をアメリカ系の店に連れていかなくちゃいけないのだ!しかもどこにあるのか良く知らないのに。
「アメリカでも売っているけれど、店に並ぶとあっという間になくなって、買うことができない。それで息子に頼まれたのです。」 彼には7歳になる息子がいるのです。

今日の会議にはたまたま以前メキシコにいたIさんが顔を出しており、Iさんにこの事を相談したところIさんは得意分野とのこと、一緒に行ってもらう事にしました。

「SHINさんはこんな領域のお手伝い、買い物は全くムリでしょうね。」
相変わらずはっきり言われてしまいました。

会議を終えて、会社からタクシーを飛ばしてトイザラスに直行。見覚えのある看板があります。
店の中に入るとIさんは慣れたもの、直ぐに売り場を見つけてくれました。
「フーン、これがベイブレードなるものか。」

いろんな種類があってD君とIさんはあれこれ相談しながら、結局10個ほどを買い込みました。
D君は大満足。残念ながらポケモンカードは売っておりませんでした。

この日のD君は、今回の出張で一番の満足そうな嬉しそうな顔を見せてくれました。
アメリカに住んでいて、一回も入ったことのないトザイラスでのお買い物の付き合い、何か妙な気がしないでもありませんでした。

私の買い物は空港で本を4冊とタバコを1カートン、忙しい5日間の日本出張でした。
inserted by FC2 system