02−09−07 アマチュア無線とインターネット
私は中学生の頃(何年前の事だろう!!)ラジオ作りに熱中し、アマチュア無線の免許をとりました。
当時は4月と10月の年に2回しか試験がなく、しかも私が住んでいたところからは名古屋まで平日に試験を受ける必要がありました。

親に内緒で、学校の先生にだけは休みを届けて名古屋駅に着いた田舎の中学生。
駅ですぐに警察官に質問されてしまいました。制服の警官と若い女性、今考えると婦人警官だったと思います。
「どこの学校に行ってるの?」
「はい、三重県津の、、、、。」
もうダメです。完璧に家出少年と間違えられてしまいました。

「イエ、名古屋にはアマチュア無線の試験を受けにきました。」
なかなか信用してくれません。私は最後に受験票をその2人に見せて、やっと釈放。
学生服を着て、母親の作ってくれたお弁当を風呂敷包みに入れて、名古屋駅の近鉄ホームをうろうろしていた私。

35年以上昔の話です。
オハイオに来た私はアメリカのアマチュア無線の試験を受験してFCC(連邦電気通信委員会、日本の郵政省)の免許を取得しました。
家の敷地は広いし、大きなアンテナを建てて日本と交信ができたらと思っていたのです。
タダの平凡な住宅地なのですが、、、、、
ところが、アメリカの住宅地では簡単にアマチュア無線のアンテナを建てる事ができないのです。

美観を損なうような建物等は立ててはいけない、家のペンキの色はこのようない色にすること、車を長期間路上駐車してはいけない、庭には恒久的な物置などの小屋もダメ、衛星放送受信のパラボラアンテナもダメ、etc、etc。

私が住んでいる地域は安全の問題もあるので、環境は悪くはありませんが、まあ普通の住宅地です。
確かにどの家もよく手入れされており、外観は整っています。

せっかくアメリカのアマチュア無線の免許まで取ったのですが、電波で日本との交信の夢はかなえる事ができません。

そんな訳で日本から持ってきた無線機は、NHKの日本語国際放送を聞く、タダの高級ラジオになっております。受信だけなら部屋の中を這わせた、ビニール線をアンテナにしても十分に聞こえるのです。
最近日本から送ってきた雑誌をパラパラと見ていた時、「インターネットでアマチュア無線ができる。」という記事を見つけたのです。
インターネットを電話代わりにするというのが流行っているのは以前から知っておりましたが、この記事を見た私は早速実験してみる事にしました。

プログラムをあるサイトからダウンロードして、インストールが完了するまでに10分。
アイコンをクリックしてすると雑誌と同じ画面が出てきたので、そのとおり操作をすると世界中のアマチュア無線家のコールサインが出てきました。
日本のコールサインも見えます。ウーン。

コールサインはアメリカなのですが、日本語をしゃべっている人がいたので、早速マイクに向かってしゃべってみました。
私のPCは以前に、1ドルで買ってきたマイクがサウンドカードに接続してあるので、何も新しいものを買う必要はないのです。早速応答がありました。びっくりするような明瞭な声がスピーカーから聞こえてきます。

相手の方は何とTBSのロスアンゼルス支局のニュースプロデューサをやってみえるKさんという方。初めてインターネットによるおしゃべりです。顔は雑誌の何ページを見て下さいと言われるので、そのページを開いたらこの前太平洋をヨットで横断した堀江さんがSFに入港した写真があり、そこに写ってみえました。

今度は日本のアマチュア無線家とインタネットによるおしゃべり。今度は和歌山に住む僧侶のHさん。この時ばかりは本当にびっくりしました。
Hさんはコロンバスで一番古いOという日本レストランのオーナーのお兄さん。私がコロンバスに住んでいるというメッセージを見て、呼んでくれたのです。

無料のソフトをインターネットからダウンロードし、そのソフトを使っての世界中の人とのおしゃべり。
今は電話で自分が話をしたい人とはどこでもいつでも繋がります。でも不特定な人とこうやってインターネットを使って話せるというのは、理屈では理解できても、自分がやってみて、改めて便利というか、世の中のテクノロジーの発達を実感した1日でした。
アマチュア無線は「電波」という公共のものを使うので、どこの国でも基本的には国家試験に合格する事が必要です。
そしてかなり高価な無線機と、大きなアンテナがないと外国との交信はできません。
それがインターネットではPCが1台あれば、試験を受けて免許を得ることなく、外国の人と話ができるのです。

インターネットアマチュア無線は、アマチュア無線とは言うものの、実は本質的には全く異なるものだと思っております。

私がアマチュア無線をはじめた頃は、学生という事もあってお金がありませんでした。
ですから無線機は大半が手作りで、いろいろな部品をあちこちからかき集めて、無線機を作りました。

インターネットではそのような事をする必要がありません。
ソフトをインストールして、1ドルか2ドルのマイクを買ってくればそれで終わりです。しかももっとも大きな違いは「免許がいらない。」という」点です。

インターネットアマチュア無線は本質的に電波を使ったアマチュア無線とは全く違う。インターネットアマチュア無線を始めて数日後には強く感じました。

学校の勉強の合間に難しい問題の丸暗記をして、国家試験に合格した後は両親におねだりをしてお金を出してもらい、無線機を作ってやっとの思いで10km先の友人と無線で交信できたときの嬉しさ。
その後も、日夜工夫を重ねて初めて外国に自分の電波が飛んで行った時の感激。

PCのスピーカーから聞こえる世界中の人の声を聞きながら、家出少年と間違えられて、アマチュア無線の国家試験の受験に行った35年以上前の出来事を思い出してしまいました。
inserted by FC2 system