02−07−07 オハイオの職人さん
オハイオに来て丸6年が過ぎ、7月で7年目に入りました。早いもので、今の家に住んで6年目に突入。
フロントヤード(前庭)の木も見違えるように大きくなり、今では2階の屋根よりも高くなってしまいました。5年前は今の半分の高さもなかったのに。

この家を買う前の持ち主は約4年ほど住んでいましたから、既に築9年の家。やはりあちこち痛んできます。

幸いにまだ致命的な破損とかはないのですが、あちこちのペンキが痛んで、剥げてきているのが2年ほど前から気になっておりました。

家の外壁の木の部分、屋根の横、玄関が大分痛んでおりました。
はしごを買って自分で塗るというのも一つの方法ではありますが、何日掛かるかちょっと見当もつかないし、2階の部分は結構危険そう。

やはり
専門の塗装職人に頼んだ方がよさそう。
そこで、会社のアメリカ人に紹介をしてもらう事にしました。
私が相談したDさんはちょっと考えた後、「じゃ、KENを紹介しましょう。彼は非常にいい仕事をするという評判ですから、間違いないと思います。」
KENというのはDさんの家の近くのアメリカ人で、
本職はコロンバスの消防署勤務。

消防署は24時間勤務すると3日の休みで、これを1サイクルにして4サイクルすると1週間の休みがあるそうで、
かなり時間の余裕のある職場。彼はこの時間を利用して、同時に小さな塗装会社を経営しているのです。

さっそく電話を掛けて見積もりをしてもらう事にしました。
さっそく彼は家にやってきて、外観をぐるっと見て
その場で見積書を置いていきました。595ドル。ウーン、約7万円か。
私はこの時点では、これが安いのか高いのか、よくわからず
会社に行ってやはりDさんに聞いてみました。

「595ドル、そんなもんじゃないですか。」
というDさんの返事でしたので、KENに今回のペンキ塗りを頼む事にしました。

KENに電話をすると、
「次の土曜日に色合わせに行きたいのだが、いいですか?」
という事だったので、OKの返事を出し、土曜日の朝10時に来てもらう事にしました。

私の日本の家は23年前に建てたのですが、自分で住んでいたのは8年だけ、残りの15年は借家にしてあり、自分で職人を頼んで家の修理とかを経験した事がありません。
でもこの辺の手順は同じでしょ?
電話のあった週の土曜日にKENはやってきました。
KENは誠実そうな感じのいい黒人で、私にわかりやすい英語を話してくれました。色を決めるサンプルのプレートを持ってきて、これでどうだ、いやこっちかな、という具合で非常に慎重に色を合わせていきました。

作業は翌週の水曜日、4人で1日でやると言います。時間は朝の7時半から。
私は会社に行くので、カミさんがこの4人の職人の相手をしなければなりません。チップをいくらにするのか、そもそもこのような職人にチップを払う習慣があるのか、これもDさんに聞きました。

Dさんの話では
「595ドルの中に費用は入っているのだから、必要ありません。」

でも日本では職人を頼んだ時は、10時、3時の休憩とお昼のお茶とお菓子の準備、それに大体がタバコ代という事で別封筒でお金を渡すのが習慣なのは私も知っております。

そんな訳で、カミさんには冷たい飲み物と、一応1人10ドルのチップの準備だけはしてもらうように頼んでおきました。

ペンキ塗りの当日はやはり4人が朝の7時頃に来て、午後の3時半頃までみっちりと仕事をして行ったそうです。
午前の休憩もなし、午後の休憩もなし、昼食は30分程度で、フロントヤードの木の下で、持参のお弁当をさっと食べておしまい。カミさんは何度か冷たい飲み物を勧めたそうですが、全て断って仕事を続けたそうです。

仕事が終わった時に、チップの10ドルを全員に渡そうとしたら、これも断ったそうです。職人達がKENの顔色を伺っていたので、カミさんはKENに受け取ってくれと頼んだところ、KENが首を縦に振ったので、みんなは受け取ったと言っておりました。

そして帰るときに、KENは余ったペンキの缶を、
「これは今度自分で塗るときに使えるから、置いていきます。」

と言って帰って行ったそうです。つまりペンキは595ドルの中に含まれており、これの持ち主は私達である、という事なのでしょう。
仕事に来た4人はKENを含めて全て黒人ばかり。
2階の部分は日本のように足場を作ることなく、全てはしごに登って作業をしていきました。ラジオを持ってきてこれをガンガン鳴らしながら、黙々とやって行ったそうです。

職人の1人はかなりの年配者で、この人ははしごを使わないで、低いところ、若いのがはしごに登って高いところ、それぞれ分担が決まっていたそうです。高いところから、ペンキが垂れて、下を汚してはまずいので、汚れて困るところには、ちゃんとビニールのカバーを掛けて作業をするので、どこも汚れておりませんでした。

これで595ドル、つまり7万円はいかにも安い気がしたので、日本にいる友人に「日本でやれば幾らくらいかかる?」と聞いてみました。
同じような事をやった3人の友人から答えがありましたが、50万円から200万円!!!!!
隣の家の奥さんも、「こちらに来る前に日本の家をやったら、100万円かかりました。」
という返事。

この違いは何から来るのか、いろいろとあると思いますが次の理由だと思います。

・作業をするのに足場を組まない。日本では実に大げさな足場を組みます。足場を組むと言うことは、終わったらこれを解体しなくてはなりません。KENの場合、全てはしごでやっていきました。そう言えば、オハイオではペンキ塗りで足場を組んでいるのは見た事がありません。

・休憩が少ない。日本の場合、職人は10時の休憩、3時の休憩、それぞれ確実に30分以上は休みます。また昼食は絶対に1時間は休みます。実働は6時間以下だと思います。これに比べてKENの場合、実働8時間で密度が濃く、4人でさっとやってしまった。

・人件費が安い。多分KEN以外の、この日の日当は1時間10ドル程度だと思います。それにペンキとかの材料費も日本に比べて、良質なものが半額くらいの感じです。
実は私の家のバックヤード(裏庭)は高さ2mくらいの塀で囲ってあり、これのペンキ塗りもしなくてはならなかったのです。
長さは「コの字型」になっており、60m。これの両面と、更にデッキ(テラス)、これは12畳以上はあります。

KENが見積もりに来た時に、
「フェンスとデッキのペンキ塗りはいいのか?」
とサジェスチョンをもらいましたが、私はこれは自分でやるからイイ、と答えたのです。


実はこの答えにはいささか、後悔をしております。延べ25時間以上の時間と、100リッター以上のペンキを使っているのですが、また30%ほど残っております。
暑いし、慣れない作業で、非常に効率が悪い。

途中でギブアップして、KENに頼もうと思ったのですが、既にペンキを購入済みで、意地になって自分で始めたのが間違いでした。
塀もテラスもイザ作業を始めてみると、その大変な事、想像を越しております。

塀とテラスは全て木製で、ペンキというよりも顔料の入った油と言った方がふさわしい塗料で、これを木に沁みこませるように塗っていくのです。テラスの複雑な部分はハケで塗り、塀の部分はポンプ式のスプレータンクを買ってきました。

時間と手間と費用を考えると、KENに頼んでおけばよかったと反省しております。オハイオも真夏の屋外のペンキ塗りは、想像を越える重労働なのです。
さて残りの30%、いつやるかな?外は暑いしい、、、、。
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