お医者さん、助けて
歯が痛い!

知らない土地、しかも外国で生活するとなると、真っ先に気になるのが、病気になった時こ事です。言葉は通じないし、治療の方法も違うし、という事で私も大いに心配しておりました。

頭の回転が時々停止する意外に、私は歯がそんなに丈夫ではない、という持病(?)を持っておりましたので、渡米の前に半年以上をかけて歯の治療を済ませておりました。まあ、これで手入れさえしておけば3年くらい持つかな?と思っていたところ、4カ月目に治療した歯が痛みだしたのです。

まだ、単身赴任の時で、2カ月後には日本に一時帰国するし、日本に帰った時にでも治療しようと考えておりましたが、痛みは日増しに大きくなって、とうとう我慢ができない状態になってしまい、アメリカの歯医者に行く事にしました。

あれこれ聞かれたら、何て答えたらいいのだろう?普段使わない、歯医者に行った時の言葉を即席で覚え、職場のアメリカ人に電話で予約をしてもらい、大いに緊張して歯医者に行きました。
歯の治療

受け付けの方法は日本と同じで、保険に入っている事を確認して、問診票を渡されます。
びっしりと英語で(当たり前か)書いてあり、やっぱり言葉がわかりません。

質問はアレルギーと診断された事があるか、とか血圧は異常と診断された事はあるか、とか答えは大体「NO」に決まっている質問だろうと思い、全部「NO]に印を付けて受け付けに出したら、「あなた、男性ですよね?」なんて聞かれてしまいました。
どうも男には関係のない部分も答えてしまったみたいでした。

診察室は個室で、例の診察台も殆ど同じです。レントゲンを撮って、診察台に座っていると190cmはありそうな、海坊主みたいな大男が入ってきて、名前を名乗り、先ず握手。この海坊主がドクターでした。

あれこれ質問してくるのですが、やはり言葉がわからない。ドクターも困ってしまい、部屋を出て行ったと思うと、分厚い本を持って再び入ってきました。持ってきたのは、歯科の専門書で、絵や写真が入っておりこれで説明を始めました。

神経を取って、差し歯をするとの事。ありゃー、こりゃ大工事だな。
まず今の歯を今日は抜いて、仮の歯をかぶせます、という。麻酔注射を打つがが全然痛くない。あれよあれよという間に、ポンと抜いて何やらガリガリやって、待つこと45分。
抜いた歯と同じような応急の歯を持ってきて、それを差し込んで今日はおしまい。全部で2期間の治療でした。

そうです。アメリカの歯医者は一回の治療がものすごく長いのです。それに日本では、治療の間に水で口をすすぎますが、これがありません。全部吸引器で口の中のものを吸い出します。やっぱり、これはすっきりしません。

帰りに受け付けで、次回の予約をする時に、何やら費用の事をしきりに言ってきます。よく聞くと、差し歯をどのような種類のものでやりますか?と聞いております。これもよくわからないので一番高いのを頼んでおきました。

こんな具合で、クリーニング(歯垢取り)を含めて4回の通院で終わりました。合計の治療時間5時間くらい。
患者に痛みを感じさせない事に異常に気を使っている事、1回の治療時間が長く、何回も通院しなくても良い事など、日本の歯科に比べて通院が苦痛ではない印象を受けました。
保険について

アメリカの医療保険は、全て個人が加入しなければなりません。ですから、保険の種類によっては、受けられない治療とか、限度額が低かったりすると、膨大な個人負担が発生する事になります。
アメリカでは何千万人の無保険の人がおり、まともな治療を受けられないでいるとの事です。

大きな会社は入社すると、会社が個人に対して保険に加入し、社員はその保険で治療を受けるのですが、アメリカ人は会社に入る時に、給料のみではなく、どんな保険を会社が準備してくれるかも
会社選びの要素になっているそうです。

アメリカの医療費は非常に高額で、盲腸の手術でも日本円で50万円も100万円も費用がかかり、保険に入っていない人は、大変な負担になるようです。
救急車で(救急車も有料です)病院に運ばれてた人が、先ず最初にその病院で聞かれる事が「保険に入っているか?」という話を聞いた事があり、「入っていない」と答えると治療を拒否するそうです。

あるアメリカ人が言っておりました。

「アメリカでは、金のないヤツは息もするな。」

アメリカと比べて、日本の健康保険制度は何と素晴らしいか、改めて感じさせられます。
それと、その病院が保険会社に何の治療でいくら請求があった、というのはきちんと毎月明細が送られてきます。私の場合、歯科の治療は限度額があるので、これは重要な情報です。

病院から、この前の何々の治療費は保険会社から支払いを拒否された、よってあなたに請求をする、なんてとんでもない金額の請求が来る事があります。この場合、先ず100%病院のミスです。
保険会社からは、この病院からこんな請求があったが、請求内容のここがおかしいから支払いの拒否をした、というレーターが私宛にくるのです。

この前も、保険会社から支払い拒否の通知が来て、理由は診察したドクターの名前が書いてないとなっており、そのコピーが添付されておりました。
病院からは私宛に、これだけ払え、と2回もレターがきて、2回目には払わないと、これだけのペナルティーを要求するなんて書いてありました。

私は頭にきたので、保険会社の支払い拒否の理由書のコピーを付けて、不備の理由のところに赤丸をつけ、「保険会社に請求しろ。オレに請求するな」と書いて送り返してやりました。

アメリカではどんな事でも黙っていると、すぐに個人宛に責任を振ってくる社会なので、要注意です。
定期健康診断

我々企業の駐在社員も基本的に1年に1回の定期健康診断があります。
やり方は日本と大体同じですが、やはりいくつかの違いがあります。
先ず大きく違うのは、直腸の検査。

ドクターが指にサックをかぶせて、ぐりっと指をまわしてやるそうです。
そうです、というのは私はいつもこの検査を拒否しているからです。ある同僚の駐在員は拒否仕切れなくて、無理矢理やられたと言って、悔しがっておりました。

それと胃の透視検査は日本よりずっと簡単です。これは健康診断をする病院にもよると思いますが、基本的にアメリカ人は日本人に比べて胃腸関係の病気が圧倒的に少ないからではないか、という話を日本の友人のドクターから聞きました。
アメリカの胃の検査で不具合が見つかった時は、殆ど手遅れじ、ゃないかとも言っておりました。

アメリカの死因のトップは循環器系の病気で、特に心臓病だそうです。
従って、循環器系の検査、治療はかなり進んでいるが、消化器系は日本の方が、ずっと進んでいるそうです。
はっきり言って、日本人の感覚でアメリカ人を見ると70%くらいは肥満で、10%くらいは超肥満という感じです。あれじゃ、心臓への負担はすごいだろうなー。
心臓病の多いのは何となく、納得できます。
ホームドクター

アメリカではホームドクターと言われるお医者様がいて、住居を構えるとこのドクターに登録をします。過去にどんな病歴があって、どんな治療をしたとか、子どもであればいつ何の予防注射をしたとか、個人の健康、病歴を管理すると同時に何か病気になった時は、先ずこのドクターのところに行くのが普通です。

ホームドクターは診療、治療をしてくれるのですが、専門医の診断が必要と判断した場合は、その専門医とコンタクトをとってくれ、患者は専門医の診察を受けます。
ですからホームドクターはそれぞれの専門医とネットワークを持っており、気軽に訪れる事ができます。わが家もあるホームドクターがおりますが、気軽には行っておりません。今のところは。

一度、娘が湿疹になり、連れて行ったところ、そのホームドクターがいなくて、直ぐに専門医が出てきました。
よせばいいのに、
「この子は、小さいときアレルギー気味で、日本で大分医者に通ったのですが、まだアレルギーが残っていると思う。」
なんて言ったものですから、そのドクター、私をぐっと睨んで、
「アレルギーの場合もっと、皮膚が茶色になるのです。これは赤味があるから、、、、」
と素人は黙っとれ、と言わんばかりにまくしたてられました。スンマセン。

またこちらの医者はクスリを出してくれません。処方箋をもらい、それを薬局に持って行くと、その薬局がクスリをくれます。
何だか最初は面倒な気がしましたが、もう慣れてしまいました。私が行く薬局は大きなスーパーの中にあって、何人もの人がおりますが、いつも憂鬱なのは、ここの人達はみんなえらい早口な事。

一杯説明してくれるのですが、半分もわかりません。今度から薬局変えよっと。
24時間体制

他の地域は良くわかりませんが、私の住んでいる地域には、24時間診察を受け付けてくれる病院がいくつもあります。またこれらの病院は当然、土日も診察をしてくれます。

この点は、日本より格段に便利ですが、費用も格段に高いそうです。つまり、お金を払える人にはきっちりとサービスする体制が整えられており、お金を払えない人はそのサービスを受ける事ができない、という極めて合理的(?)なシステムになっております。

アメリカで生活して感じるのは、徹底的な個人主義です。ものの考え方は当然、このような医療も個人の責任において受ける社会です。
アメリカは国とか、他人に頼っては生きていけない社会で、自分の力で何とかする、というのが基本です。
そしてその個人の力とは多くの場合、お金を指すことが多いのです。
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