外国語と日本人、そしてアメリカ人
いっぱい勉強する日本人

最近は小学生から英語を勉強させようという議論があり、既に試験的に実施されている学校もあるようです。
私の年代、いやごく最近まで英語は中学校に入学して始めるというのが普通で、何の疑問もありませんでした。むしろ英語の勉強を始める事で中学生になったのだ、と小学生と大きく一線を引いたような記憶があります。

こうやって中学の3年間英語を勉強して、次ぎに高校で3年間、合計6年間は大体の日本人が英語を勉強します。
更に大学で1ー4年間を勉強する人も結構多いわけで、何と10年近く外国語、この場合英語に限定しますが、を勉強します。そうです。英語は少なくとも6年間みっちりとやらなくてはならない、「お勉強。」なのです。

これに比べてアメリカの生徒、学生はどうかと言うと州によって違うみたいですが大体2年間程度高校でやるだけで、どうも必須ではないようです。
そうです。外国語はアメリカ人の学生にとっては選択科目で、日本の高校生に例えると、芸術で「習字」をやるか、それとも「美術」をやるか、いえやらなくてもいい科目なのです。
私の職場のアメリカ人

私の職場には約70人のアメリカ人がおりますが、英語以外の文字を読んだり、書いたりできるのはおりません。だた2名だけ日本語の読み書き、簡単な会話ができるのがおり、これは会社が日系企業という事で、日本語のクラスを提供しているためで、かなり勉強したからです。

時々外国語の話になるのですが、いろいろと聞いてみるとスペイン語を2年間勉強したとか、ドイツ語を勉強したとか大体何かの外国語を勉強した「経験」は持っているのですが、その実用性は殆どありません。


私の会社には南米とかからも文書がFAXとかで送られてきますが、一度スペイン語のFAXが来て誰かこれを読めるかと周りのアメリカ人に尋ねたところ誰もいなくて、ある社員のカミサンができるというので、その社員に頼んだ事がありました。
まあ、重要な件でもなさそうだし、時間も急がなかったのですが、内容だけは確認したかったのです。翌日彼はバツの悪そうな顔をして会社にやってきて「やっぱりわからなかった。」と言ってきました。
後で英語で同様の内容の文書が届いたのですが、内容はごく平易な質問状でした。

このような外国語ができる人が極端に少ない理由はズバリ、「アメリカ人は外国語を覚える必要はない。」という国のカタイ方針があるためです。オハイオの高校の卒業検定試験も、
1.英語の読み方
2.英語の書き方
3.社会科(アメリカの政治、歴史)
4.数学
の4教科で、確か2002年からこれらに理科が追加される事になっています。外国語が検定試験に追加されるという話は聞いておりません。
国家として、外国語の修得を重視しない、つまりその必要性がないのがアメリカです。

日本の場合はどうかというと、多分ちょっとした会社なり組織でしたら何か英語の文書が回ってきたら辞書を見ながらでも読むことができると思います。
ところが日本でも、例えばドイツ語だとか、中国語とかになるとアメリカと同様の状態だと思います。つまり日本の場合、「外国語=英語」なのです。
英語がうまくしゃべれないのは、知恵遅れ?人間じゃない?

ト先ず、はっきり言って一般的なアメリカ人は英語ができない人、この場合は外国人の事ですが、これをなぜ英語ができないか理解できないのが普通です。

何故かというと理由は簡単。自分が外国語を覚えようとして勉強なりの経験がないから、英語は他の国の人にとって外国語であり、それが何を意味するかわからないのです。

「何でこいつ話ができないのだろう、変なヤツ。」

英語ができないとは考えずに「話ができない」と考えます。次に、
「わかった。こいつきっと教育を受けていないか、知恵遅れかどっちかだ。」

更に最後にくるのは、
「よくわからないヤツだ。とにかく無視しておけ。何か言いたければオレにわかるように言え!」

で終わります。
ですから一般的なアメリカ人は相手がたどたどしい英語を仮にしゃべったとしても、相手のレベルに合わせてゆっくりとしゃべるとかの事はしません。
これも彼らが外国語を習って、母国語以外でコミニケーションをした経験がないからです。

日本人は大抵の場合、英語を「お勉強。」で覚えてきたので、言葉や文章の細かい事にこだわり、どうしても口数が少なくなります。これも彼らを増長させる原因になっております。

いつも感心するのは同じ東洋人でも、韓国人、中国人は全然違います。ちょっとでもバカにされたり無視をされると、どんなに英語が下手でも大きな声と、表情と、態度で相手に食ってかかります。
えらい下手な英語でガンガンやってるな、と思うと大抵は中国人か韓国人で、日本人がこのような事をやっているのはまだ見たことがありません。
日本語は下等言語!?英語のハンディキャップ

以上は大体の普通の人の話。
次は日本語の持つ表現の曖昧さ、つまり間接的表現とか日本人がYES/NOをはっきり言わない事を知っている、ちょっと日本人と付き合いのある連中とか、少しノウハウ本を読む連中の場合。

25年以上私の会社の現地法人で働いて、日本人の事をかなり知っていると思われるアメリカ人に、
「日本語は混乱を起こす言葉である。人と人とのコミニケーションに向かないのではないか。早く日本人も英語を国語にした方がよい。」
と言われた事があります。

彼はその現地法人ではアメリカ人としてはトップに近い存在であります。その彼がそのような事を言ったのには驚きました。同じ意味の事をかなり身近なやはりそれなりの地位のあるアメリカ人から聞いた事があります。

また日本人が持つハンディキャップをうまく利用する連中も結構おります。
我々が下手な英語で意見を言うと、「お前の言うことはわからない。」で答え、自分の考えをそれこそ機関銃のような早さでまくしたてて、プイと横を向く連中です。
このタイプのアメリカ人が私の職場にも2人おり、正直言って手を焼いております。

一人は日本に3年程住んだことがあり、日本人の欠点を知り尽くしているアメリカ人です。つまり、相手の目をガッと見据えて手を振り上げて、まくしたてれば、大抵の日本人はグッと黙ってしまう事を知っているのです。
これはアメリカ人だけではなく、大半の国と人種の共通しており、いわゆる日本人の弱点ではないかと思っております。

「日本人には遠慮はいらない。まずまくしたてればイイ。それで黙ればこっちの勝ち。反論してくればさらにまくしたてる。勝つまでまくしたてる。」

「言葉のハンディキャップ」を利用するアメリカ人は以外と多い感じがします。特にフツーのアメリカ人ではない、ちょっと聞きかじりの知識を持っている連中に多い印象を受けます。
本当に言葉だけの問題か

自分の話す言葉が通じない世界を経験する事の少ないアメリカ人が、何かの機会に外国へ行くとなかなか面白い現象を見ることができます。アメリカ人とブラジルに行ったとき、或いはメキシコに行った時、信じられないくらいにおとなしくなってしまいます。
こっちは元々不完全な英語で毎日を生活していますから、少々言葉が通じないからと言ってあまりショックは受けません。

アメリカに来てアメリカ人と仕事をして改めて感じるのは、英語という言葉のハンディキャップと共に、コミニケーションのスタイルが日本人とアメリカ人では全く異なる点です。
それは何かと言うと、自分の意見の後に必ず「BECAUSE:何故なら、、」を付ける、そして疑問には必ず「WHY:なぜ?」で聞き返すのが彼らのコミニケーションスタイル、これが極端に少ないのが日本人のコミニケーションスタイルである、という点です。

「礼の件はあまりうまく行かないかも知れない。」
「そうだよな、予算もないし。」
「でも何とか成功させたいよな。」
「、、、、」

典型的な日本人ビジネスマン同士の会話。

「食事の前には手を洗いましょう」
「ハーイ。」
「登校、下校の時は6年生の班長さんの言う事を聞きましょう。」
「ハーイ。」

典型的な小学校の先生のお話。

これに「BECAUSE」と「WHY」を付けるとどうなるか?かなりねちっこい会話になりますが、アメリカ人の会話を聞いていると「BECAUSE」と「WHY」を延々とやっているのです。

この「BECAUSE」と「WHY」で積み上げる会話のパターン、つまり思考のパターンの訓練こそが、英語という言葉の「お勉強」と同時に必要な気がしてなりません。
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